トロイトータル

コアモジュールプロト トロイトータル

本作でメインメカニックを務めるSRCのトロイトータルは、バンダイが映画公開時に販売したデラックスメカニック玩具『コアモジュールプロト トロイトータル』を用意して、撮影に使用した。

トロイトータルは、本作に登場する科学調査サークル・SRCの万能航空機。
その存在意義も、決して戦闘機ではないため、防御能力こそ高いものの、ミサイルや光線等の、いわゆる兵器的なお約束的武装は一切搭載されていない。
同時並行制作となった『ウルトラマンコスモス』テレビ版でも少し登場するが、そこで8年の歳月を経て結成された、テレビ版でムサシが所属する防衛組織TEAM EYESが使用する戦闘機・テックサンダーのコアモジュールシステムの、原型ともいえるシステムを搭載している。
そこで、メカニックシステムの変節と系譜で、映画版とテレビ版の8年の経過を、描写しようとする意図もあったのだろうと推察される。

バンダイ コアモジュールプロト トロイトータル パッケージ

劇場版作品内では主に「SRC作戦ACT.1」「トロイ作戦ACT.2」と称して、呑龍相手にボクシングや冷凍噴射を、バルタン星人相手に子守唄演奏を、縦横無尽にやってのけた印象が強く、再現特撮する側としてみても、そこが注目だったが、商品はしっかりと機体下部から伸縮するマニュピレーターの先に、超大型グローブ・ドデカローブと、超大型ドデカスピーカーを換装可能。
そしてまた、機体本体は母船となるトロイA(別名「エアマザー」)と、コアモジュールとなるトロイB(別名「ベイビーコア」)とで、分離合体が可能な商品構造になっていてプレイバリューは高い。

トロイトータル 分離状態

しかし、現代の作品の現代の玩具であるのだから(正確には20年以上は前ではあるが)、劇中のブロップミニチュアに似ていて、ギミックも再現しているのは当たり前であろう。
むしろ今回は(演出の都合というのもあって)エアマザーのマニュピレーターの、可動範囲が予想以上に狭いことには、逆に驚かされた。
折りたたみ収納ギミックゆえにそのマニュピレーターは、関節部分から内側へ向けてはには(しかも二重関節で)可動するものの、縦軸の、肘の折れ曲がりで言えば、手前方向には一切曲がれないのだ。つまり、肘の二重関節と拳部のアタッチメント用ジョイント以外の可動部っぽい作りは、全部ダミーなのだ

ドデカグローブを装着したエアマザー

これでは、劇中で印象深かった、ボクシングファイティングポーズも決まらず格好がつかない。
加えて、作品映像中ではトロイBでもあるベイビーコアにも、ボクシンググローブとスピーカーのマニュピレーターが装備されているのだが、こちらは全く玩具では再現されていなかったことも悔やまれる。

ドデカスピーカーを装着したエアマザー

確かに飯島敏宏監督ならではの個性が反映された、トロイトータルの、それらマニュピレーターを駆使して展開される、愉快でファンタジックなギミックは、良く言えば既存や流行のメカ演出に囚われれない、自由奔放な発想の賜物ではあるし、CG技術の自在性を巧みに取り入れた、映像的なマジックを活かしたアイディアでもあるが、悪く言えば、いわゆる合体・変形メカにあるべき合理性が全くないギミックでもあり、それを玩具で完全再現しようというのは、未だに『ゲッターロボ』(1974年)の完全合体変形玩具が、不可能であるのと同じくらいに無理があって、また痛快であるともいえたのだ。

エアマザー底面。フルアクションしそうなマニュピレーターがあるが

だからこそ、そこへある種の理解を示すのであれば、ボクシンググローブとスピーカーは、もちろん差し替え式で構わないので(差し替えにしなければ不可能である)そのままで、後はせめて、マニュピレーターの可動性と、ベビーコアのオプションパーツを、もうちょっと充実させて欲しかったといのは、これは本音として苦言を呈さねばならないだろう。
何よりトロイトータルは、この劇場用映画一作だけのメカであるともいえるわけで、そこでの唯一に近い商品化が、ギミックに漏れがあるというのはこれはいただけない。

ドデカグローブ装着状態の底面

かつてポピー時代のポピニカや超合金では、劇中に出てこないギミックまで搭載された『スペースコブラ』(1982年)のタートル号や、『光速電神アルベガス』(1983年)のニュースーパーアベガや、『星雲仮面マシンマン』(1984年)のマシンドルフィン等を発売して、子どものツボを刺激し続けていたバンダイの商品だけに、惜しいとしか言いようがない。
(蛇足だが、マニュピレーターの「ノーマルハンド」も、これも全く指が可動しない、腕先に付けておくだけの、ただの「拳の形をした塊」が付属しているだけの代物ではあるが、こちらはむしろ劇中には登場していないということもあってか、ここは気にならない)

商品のブリスターパック状態

逆に、必要性があったかさえもあやしい、コアモジュールシステムの分離変形合体は、こちらのはギミックは完璧に仕上げられている。
この映画版は、テレビ版のプレも兼ねるという様々な商的必要性があったために、テレビ版『ウルトラマンコスモス』における主人公チームが乗り込む戦闘機の、玩具的プレイバリューを広げる要素の核になるべき、コアモジュールシステムを、この前日譚になる映画版でもしっかり布石を置きたかった意気込みは充分に感じられる。
(メカニカル的な売り要素を「そこ」に絞り込んだからこそ、この商品はその冠を「コアモジュールプロト」というネーミングで飾り、連携性をアピールしているのだ)
それゆえか、そのコアモジュールシステムのメカシステムの再現は完璧だが、逆に、分離合体する意義や意味が見出せず、分離させてみても玩具的に面白さがない上に、そもそも本編での演出的に、メカが分離する必然性がどこにもなかったという、不条理で肩透かしな印象ももたらしてしまうメカ玩具になってしまっている。

トロイトータル合体状態

いにしえの『帰ってきたウルトラマン』(1971年)のMATジャイロを思わせる仕様の、ローターの角度の調整のしやすさや、フィン回転の軽さは、さすがバンダイの設計で、基本的に現代的玩具ゆえに、全体はABS樹脂製で合金は使われていない。
突き出したアンテナや差し替え部分には、安全性を優先してか、PVC製の軟質部品も多く使われているが、全体的な成型色や塗装等は、チープさを一切感じさせない仕上がりになっている。
イマドキの玩具だからか、この機体の所属する組織が戦闘チームではないからか、ミサイル発射等、往年のウルトラ戦闘機玩具では定番だったギミックは一切ないが、逆にこの、トロイトータル号にはしっくり似合う仕様になっている。
今回はこの傑作玩具を、説明書の指示通りにシールを貼って、後は軽く墨入れだけをして、撮影に使用した。

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