一方、怪獣・特撮面から今回の一大娯楽編を読み解いてみよう。

まずはこの時期、高野宏一監督他、円谷の特撮スタッフが、ウルトラマンと怪獣の対決や、怪獣の環境という舞台を、どう変化させて描くかに、腐心して、アイディアを練っていたことがわかる。

もちろん本編監督諸氏や文芸陣などの、アイディアもそこにはあったのだろうが、とにかくこの時期の、特撮舞台設定の豊富さには驚かされる。

ウルトラマンとえばすぐに、「ビル街のど真ん中で暴れる怪獣を相手に戦う」イメージが強いが、それは、特撮セットのパーマネント・ルーティン化が進んだ、第二期ウルトラ中期以降の話であって、この時期はむしろ、怪獣やウルトラマンの活躍の場そのものに、変化をつけようという試行錯誤が行われていたことは、想像するに難くない。

具体的にいうなら『地上破壊工作』の都心ど真ん中や、『地底への挑戦』の地中特撮。『海底科学基地』の海中特撮シーンや、『果てしなき逆襲』の大火災特撮演出。そして本話や『まぼろしの雪山』における、雪原・雪天候特撮への挑戦だった。

それらはどれもこれも、技術的な試金石となって、その後のウルトラシリーズでも、多様な表現や舞台を生み出す経験値になるのだが、これらの話が、文芸スタッフのドラマテーマなどよりも、まずは演出陣・特撮サイドの、「今度はこんな特撮をやってみたい。こんな特撮で怪獣を暴れさせてみよう」という、特殊技術や子ども向け娯楽への、探究心や表現欲求がまずかくありきで、エピソードがそこに被せられる形で成立していることは、間違いないのではあるまいか。

特に雪山特撮エピソードは、その後昭和ウルトラでは冬定番の特撮へ確立していくことになる。

それはカラー化間もないテレビ映像世界が、雪山をカラーで見せる技術を修練した機会でもあるし、ウルトラシリーズのヒーローが、必ず持ち合わせる「赤」という色が、雪景色の特撮セットで非常に栄えることを発見できた撮影でもあったといえるだろう。

次に、その雪景色セットで三つ巴の死闘を展開した、本話の三大怪獣へ話題を移してみたい。

皆さんご存知のように、本話はドラコ・ギガス・レッドキングの三匹の怪獣が登場する。

『ウルトラマン』の基本フォーマットのお約束には「何匹怪獣が登場しても、最終的にウルトラマンと戦うのは一匹だけという鉄則」がある。

これはもちろん、この番組がウルトラマンの活躍を描くことよりも、あくまでもウルトラマンは幕引き係に徹することで、怪獣の魅力や格好良さを前面に押し出すのが目的だったわけでもあるが、またその一方で、テレビサイズの画面、特撮セットでは、複数の怪獣に対するウルトラマンの戦いを、颯爽と格好良く描くことは、まだまだ難しかったというのも、あるのではないだろうか?

まずはレッドキング。

レッドキングの造形は、もちろん初代を改造した物だが、初代のレッドキングは、一度『悪魔はふたたび』でアボラスに改造されており、それをもう一度レッドキングに改造しなおしたのが、今回登場と相成った。

それはアボラスへの改造が、首から上の挿げ替えだけで済んだからでもあるが、首上だけで、全く別個の怪獣に仕立て上げた成田亨高山良策コンビの功績もさることながら、さらにそこからレッドキングを、再生再利用させてしまう手腕にも脱帽である。

アボラス改造時に一度青く塗られた全身は、今度は白銀に映える金色に塗りなおされた。

金銀のコントラストが、本話のカラーイメージを形成するのだが、それはまさに、怪獣の王者がお正月を飾るにふさわしい配色だったのではあるまいか?

再塗装されたゆえ青味の残る、黄金の躯を振るわせるレッドキングだが、その頭部は、初代の物をそのまま再利用したとも、同じ原型から複製されたとも言われているが、その目には白目が描かれ、爬虫類さが強かった初代の印象よりも、ぐっと感情的な表情を見せるようになったレッドキングは、初登場から半年で、王者の風格を湛える、キャラと演技と扱いで、ウルトラマンに向かう雪原リングに立つ。

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