――これは僕が敬愛する『機動戦士ガンダム』(1979年)の富野由悠季監督の受け売りなんですけど。『タイタニック』を取ったジェイムズ・キャメロン監督は、それまでは『ターミネーター』(1984年)『エイリアン2』(1986年)『ターミネーター2』(1991年)などの、SF の映画で世界的に有名な大ヒット監督さんになったんです。そんなSF映画を取ってる巨匠監督さんが、そのままエイリアンの3、4、5とか、ターミネーター3、4、5とかで行けば、順調に名前は売れるし、固定ファン層を喜ばせてお金も取れるわけですよ。でもあえてそこで、『タイタニック』っていう、老若男女みんなが知ってる古典的王道なラブストーリーという、一番普遍的なジャンルに行ったということは、それは監督として一番正しい選択だったじゃないか。これが何にどう繋がるかというと、山城さんに僕はすごく興味を持って良かったんだなって思ってるんです。当然さっきは、ほらプリキュア好きとか話が出たじゃないですか。それはアニメ声優さんを目指すうえでみんなやっぱり欠かせないと思うし、何が一番やりたいですかって質問で、アニメ作品が出てくるのは、それは声優さんとしてもとても正しい立ち位置なんですけれども。映画が好きで、その映画のジャンルが、SFもホラーもある中で、一番好きな映画が『タイタニック』のような、ものすごく老若男女、誰でも見れる、偏ったジャンルでも空想的ジャンルでもないっていうことで、実はこれから山城さんの声優人生って、もう20年先30年先を考えて行った時に、そのスタートラインにある原体験っていうものが、「あの日あの中にあるのは『タイタニック』だった」って言うこれは、沖縄から来た山城さんにとっては、僕はすごく奇跡的に、一番重要だし、一番いいものじゃないと思ってます。いや、今の山城さんには実感はないかもしれないけど(笑) それはどういうことかっていうと、なにか偏ったもの、もしくはちょっとオタク的なものだったりまあマニアックなものが一番だって思っちゃうのは、危険なのね。そのジャンルの中でしか生きられなくなる。だから、自分の趣味趣向のなかで「ホラーが好き」「『プリキュア』が憧れです」っていうのはすごく素敵なことなんだけど、何よりも『タイタニック』が好きっていうのは、若いあなたの年齢の映画好きとしては僕が一番素敵なことだと思っています。だってこないだだって、山城さんがタイタニックじゃない恋愛映画ってお題で『ローマの休日』(1953年)が出てきたわけですよ。
山城 はい。『ローマの休日』も大好きです。
――今度はちょっと『ローマの休日』に関して聞きたいんですが。山城さんの年齢で「『ローマの休日』が好きです」ってすごいインパクトでかくて! だって50年代ですよ! あなたの父親世代の僕が、さらに生まれる10年以上前の作品ですよ!? 出会いはやっぱりレンタルビデオとか配信とかそんな感じだったんですか?
山城 そうですね。そうだったと思います。先ほどお話ししたように、私お姉ちゃんがすごく『ローマの休日』だったりとか、キーラ・ナイトレイさんとかが大好きで、『若草物語』(1949年)とかのような、女性向けでありつつ古いような作品なので、そういう関係でおそらく『ロミオとジュリエット』も女優さんの名前(ノーマ・シアラー)忘れちゃったんですけど白黒の『ロミオとジュリエット』(1936年)があって、古い方(の映画)が私は好きなんです。なんかそういう関係で結構『ローマの休日』も、お姉ちゃんと一緒に見る機会があったんですね。それも、小学校行くか行かないかくらい時に触れているものだったので、結構小さい時からも、ずっと映画を見ている感じでした。