――富野さんから指導されたことで、一年の『重戦機エルガイム』のダバ・マイロードを演じる中で、一番心に残ってらっしゃる事ってありますか。
平松 まあ、これは、藤野貞義(『エルガイム』の音響監督)さんにも言われたんですけど「ダバを演じようとしなくていい。平松くんが一生懸命やって、役者として成長していく過程が、ダバが成長していく過程なんだ。人として成長していく過程なんだ。だから、そんなに肩ひじ張って、こうだ!とかって言って演じようとしなくていいんだ。そのままの気持ちで、素直に向き合ってくれれば、それでいいんだ」っていう風に言われました。
――やはり富野監督が目指したのは、生々しい等身大の群像青春劇なんですね。富野監督の、当時の言葉を紹介します。
特に男の人に言いたいのは、アムやレッシィの様な女の子と付き合えた男の子っていうのはかなりいろいろなことを教えてもらっただろうということです。それはキャオだってそうです。このことは少なくとも、その人の力になるだろう。現実的な男女関係や何かを見ていてもそうなんだけど、それを同じ様な人、自分の好みに合う人としか付き合わず、それ以外の人は拒否するっていう人もいるわけです。彼をそういう人と比べたら少なくとも、あれだけ長い間、アムやレッシィみたいなのとひっついた、離れた、なだめすかした、またある時はいじめられたみたいなことをあの年齢で経験した男というのはそんなにヤワな男であるわけがない。逆に女の子側から見ると、まあ、なんか、自己主張がある様な、ない様なだけれども、まァあの人偉いのよね、死ななかったのよねっていう、そういう男を見るということが、女の子の中で異性に対する価値基準をレベルアップさせるんですよね。そう、そうです。それはギャブレーだってそうです。
ラポートデラックス『重戦機エルガイム大事典』
平松 あっはっは。そうですね(笑)。
――あの当時、リアルタイムで青春ラブコメが流行ってたじゃないですか。ラブコメが流行ってる中での青春群像、ドラマとしてみた時に、『エルガイム』の、あの最後落とし方、舞台からの降り方に対して、すごくやっぱりショックを受けましたし、ハッピーエンドを期待してとまで言わなくても、あの落とし方って、すごくなんか、いろいろ残酷すぎるよなーって思ったんですけれども。でも、今の富野さんの言葉のように、あのまま、ハッピーエンドじゃないんだけど、あのままダバがクワサンを連れて去っていくラストでも、それほどなんかずり落ちてくる人生を辿るようなヤワな男にはなってないんだよな、の一年だったというようなことを思いました。
平松 そう……ですね。本当、そうだと思いますよ。だから、まだ右も左も分からないポッと出の時は、まだいろんなことを経験していくときだから、だから前半は、すごく軽く、コミカルな感じの流れがあって。その中でこう鍛えられて、成長して、そして周りが大きく動き始めたことに合わせて、お話がちょっとシリアス展開になって、そのシリアスに、こうちゃんと乗っかっていっているっていう。本当に成長過程の中にあって、その上で、あの落としどころっていうのは、ダバにとっては初志貫徹じゃないですか。妹を探すんだって言って(第一話で)田舎を出てきて、(最終回で)妹を連れて帰ったんだ。あれだけいろんな経験をした上で、初志を忘れずにいるって、やっぱすげえ男だなって印象に、僕はなりましたけどね。あとは、レッシィにくっついても、アムにくっついてもね、当時(ファンが)とんでもないことになると思ったんです(笑)。まぁこれは、落としどころとしてはいいところなのかなーって思いました。大人の考え方としては(笑)。
次回は、『重戦機エルガイム』のグラウンドデザインを担当した、永野護氏について思い出を語って頂きます!
SEE YOU AGAIN!「平松広和インタビュー・7 永野護とFSSと」
『声優・平松広和の私道 Mk-2』(Voicy)
『平松広和の私道』(YouTube)
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