ちょっと今回は、小学生時代の読書が、今の自分にどんな影響を与えているのかを考察してみたい。
それでまっさきに思い出すのは、個人的にはやっぱりMichael Ende『モモ(Momo oder Die seltsame Geschichte von den Zeit-Dieben und von dem Kind, das den Menschen die gestohlene Zeit zurückbrachte)』だろう。

『モモ』ミュハエル・エンデ


作者のMichael Endeといえば、日本では古くは、1974年に放送された『ジムボタン』の原作小説『ジム・ボタンの機関車大旅行(Jim Knopf und Lukas der Lokomotivführer)』の作者として、もしくは1984年の大ヒットファンタジー映画『ネバーエンディング・ストーリー(The Neverending Story)』の原作小説『はてしない物語(Die unendliche Geschichte)』の作者としても知られている、ドイツの社会派児童文学者である。

Michael Ende文学は、徹底したファンタジー至上主義と、リアリズムに根を張った、反資本主義的なIdeologyで構築されており、資本主義や拝金主義、商業主義をとことん嫌い、暖かい目線で奏でられる人間主義が、隅々まで張り巡らされた、とても上質な児童文学の珠玉の作品群として、世界でも名高い児童文学者であると同時に思想家でもある。
Michael Endeは、しかし反社会的な共産主義者ではなく、幼少期、芸術の道を目指した父が、ナチスドイツにとらわれたことなどが、反軍国主義、反圧制主義の基盤となり、彼の思想を築いた。
Michael Endeは随所で、自身の思想を語っている。

法的に見て、銀行券とは何なのかを私たちはまるで知らないわけです。定義は一度もされませんでした。私たちは、それが何か知らないものを、日夜使っていることになります。だからこそ、「お金」が一人歩きするのです。

『エンデの遺言』
『エンデと語る』

今日ではもはや一国の経済などというものは存在しない。今、三分節構造の核心に迫ろうとするなら、国際規模で考える必要がある。それを思うと、全世界の経済を、あれほどユニークな観点で変えていくのは、もう間に合わないという気もします。 

『エンデと語る』

非良心的な行動が褒美を受け、良心的に行動すると経済的に破滅するのが今の経済システムです。この経済システムは、それ自体が非倫理的です。私の考えでは、その原因は今日の貨幣、つまり好きなだけ増やすことができる紙幣が未だに仕事や物的価値の等価代償だとみなされている錯誤にあります。

『エンデと語る』

これだけでも、Michael Endeがどれだけ「資本主義と拝金主義が、人と人の絆を断ち切り、社会を荒廃させていくか」という問題に対して、危機感を抱いていたのかが分かるだろう。
その上で、筆者も『市川大賀のweb多事争論』で、遺志を継がせていただいている(と勝手に自負している)、日本稀代のジャーナリストであった筑紫哲也氏との『筑紫対談』の中でも、資本主義の限界論に関してこう言及していた。

共産主義と資本主義は双子のようなものだと考えています。お互いの存在を証明する、敵対する双子とでもいいましょうか。共産主義が消滅した今、資本主義は突然独りでその存在の妥当性を証明しなければならなくなりました。そしてそれが不可能なために危機が訪れるというわけです。『筑紫対論』

『筑紫対談』

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