今回の題材は『蘇える金狼』。
昭和を代表するhard-boiled作家・大藪春彦氏による、昭和を代表するhard-boiled小説。
一番代表的な映画化は、もちろん松田優作主演・村川透監督による、1979年版であろう。
本来、チャンドラーやハメットの系譜に当たるhard-boiledと、大藪hard-boiledは、完全な一致の上にあるわけではないが、表層的に雰囲気でとらえた時、多くの人はhard-boiledをして「トレンチコートに帽子を身に着け、拳銃を持ち、酒と珈琲を愛するタフガイが、悪漢相手の事件で活躍する」という、ステレオタイプの見方をしてしまうのではないか。
確かに「それ」も、hard-boiledの一つの形ではあり、ある意味で本作にも通じる部分もあるが、それはしかい、hard-boiledの概念の本質ではない。
この小説はそもそも、1964年に平和新書より刊行されたものが初出となるが、時の日本は高度経済成長時代。その直前の1962年に公開され、大ヒットを飛ばした映画に、植木等主演・古澤憲吾監督の東宝映画『ニッポン無責任時代』があった。