宗教とかには信心深くはない俺だが、実は「縁の力」という奴は、深く信じている性分である。
確かに若い頃、俺はテレビや映画の現場で働いていたし、今も物書きなんていう、ちょっと「ギョーカイ(死語)」っぽい仕事をやっているが、その仕事のコネやツテで、憧れている監督さんとか俳優さんと会わせて貰おうなんて、そこらの業界人気取りのワナビーみたいな考えは、昔からこれっぽっちももっていなかったし、それを拒絶して生きてきていた。
それでも俺は、私生活の行動範囲の中で、若い頃から心酔していたバンド・ARBのボーカルだった石橋凌と、ドラムスだったKEITHとは、映画の現場でも物書きの取材でもなく、本当に奇跡のような偶然と縁とで出会えた。
出会えた時、凌さんには握手をしてもらえたし、KEITHには抱きしめてもらえたことは、共に一生の思い出だ。
不惑を過ぎてからは、ウルトラマン評論ブログの『光の国から愛をこめて』が大ヒットしたおかげか、自分にとって、神様のような脚本家の市川森一氏や、上原正三氏と知り合えたし、山際永三監督や、安藤達己監督とも知り合えた。
そう。俺は「縁の力」を信じている。
「その本の伝説」と出合ったのは、もう35年も昔のことだろうか。
とある作品の中で、その本のことが紹介されたのであるが、その時の俺は「あぁいつかこの本を読んでみたいものだ」としか思っていなかった。
その、この本を紹介したのは『迷走王ボーダー』。
僕が一生影響を受けた、心酔した主人公・蜂須賀が、迷走していた若い頃、旅先の外国のボロ小屋で手に取り読み、感動を超えた、天啓のような感銘を受け、涙を流し、人生観の全てを変えたという設定の一冊が、この『戦後の詩 <現代>はどう表現されたか』であった。