私がこの『市川大河のweb多事争論』を始めたのは、敬愛していた故・筑紫哲也氏の逝去がきっかけであり、2008年から始めたことは、この連載とも覚書とも言えないようなコラムをまとめてくださった拙著『スマホ・SNS時代の多事争論 令和日本のゆくえ』でも言及しました。
思えばそれから干支を一回りする期間、私はこのタイトルのコラムを、場所を変えステージを変えて書き続けてきたことになります。
偉大なる先人となる筑紫氏は、日々の『筑紫哲也のNEWS23』の中で、毎日18年間、この「呼びかけ」を続けたわけですから、私などの積み上げた物など、まだまだ小石にも満たないのだと自戒もします。

と同時に、私なりの多事争論をまとめた本を上梓したと同時に、日本のみならず全世界が飲み込まれたコロナ禍の中、それでも私なりに、必死にSNSやこの『多事争論』等で、コロナ社会に対して声を上げて「呼びかけ」てきましたが、なかなかその結果は一朝一夕というわけにはいかないのも道理どころか、悪化の一途をたどっております。

自称「普通の日本人」と自らを誇る保守の方々は、新型コロナは屈強で信望厚い菅政権が絶対になんとかしてくれると疑うこともせずに妄信し、東京五輪という「決してやってはいけなかった運動会」をも許容してしまいました。
結果はもちろん、首都圏の医療は崩壊し、既にワクチンをも突破するブレイクスルー感染も出てきて、都市機能がマヒ寸前にまで陥っています。

「コロナ陽性者の増加と東京五輪にはなんの因果関係もない」
自称「普通の日本人」の皆さんはそう仰り、因果関係があるというのなら論理的に医学的に証明してみせろと、虎の屏風を前にした一休さんのような戯言を申しておりますが、東京五輪がもたらした「お祭りムード」と、それに伴う市民・国民の「五輪だけは盛り上がっていて、なぜ我々市政の娯楽やスポーツ等は規制されなければいけないのか」という「当然の反発」も作用して「緊急事態宣言下にも拘わらず、感染者数が鰻登りで増え続ける」という「約束されていた悪夢」へと突き進んだのです。

これに対して菅首相や政府関係者、そして自民党支持者達は徹底して「ワクチン接種戦略が進んでいるので感染者数は問題ではない」「集団免疫は予定通りなので、一時的な陽性者の増加に一喜一憂すべきではない」との姿勢を崩しません。
しかし、ワクチン戦略は、ブレイクスルー勃発によって半ば無効化されたどころか、日本国中あらゆる自治体でワクチン供給が追い付かず、この記事を書いてる8月18日現在で、二度のワクチンの接種を完了した人は国民全体の三割に満たないのが現状です。
その上で、ワクチンの安全性や問題に言及する人達が出て来ることは当然の社会反応であり、もう既に、我が国は欧州のいくつかの国に遅れること半年で、国家的崩壊を始めているのかもしれません。
実際、東京、埼玉、千葉、神奈川では、病床数に対して陽性者数が300から400%、500%が発生していて、もはや119になんの救助能力もないのが動かざる現状なのです。

こうなってしまったのは、我々日本人全ての責任です。
ネットでは、目立ちたがりの愚か者が「私以外全ての都民が小池百合子に投票した」等という前説を用いてご満悦ですが、そういったデマ発生器の存在はともかく、私達日本の国民の、政治に対する無関心と選択が、絶対的に間違っていたからこそ、こんにちの新型コロナによる国難が起きていることだけは間違いはないのです。

正直、疲れた私もいました。
今年に入り、こうして自分の城の公式サイトも設営していただきながら、そこで様々な(既出コンテンツが多いですが)発信を行ってきましたが、しょせん一介の雑文屋には、社会や世間にどれだけ物申しても、相手になどされず、朽ちていくしかないのかと、世を儚んでいたのも事実です。

一方で、誤解というか、現状の私をただただ追い詰めるだけの言葉の刃も向けられてきます。
「大河さんは、アーティストなんですか? クリエイターですか?」
こんな愚にも付かないどうでもいい質問ですが、雑文業の売文屋の私にはグサリときます。
「そんなカタカナ稼業ではないです。文章の世界にはプロとアマチュアしかいません。私はプロです」
そう答えると「では、プロのクリエイターですか? プロのアーティストなんですか? アマチュアのクリエイターですか? アマチュアのアーティストなんですか?」と、こう来ます。

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