一方『探偵物語』も、そのカルト的人気ゆえに、その直後にフジテレビ加山雄三持ち上げ企画として、東映セントラルが企画制作した『探偵同盟』(1981年)という、スタッフも脇キャストも、ほぼ全てスライドの(本来の意味での)スピンオフ作品が存在する。

なんだったんだ、謎の加山雄三推し

 こちらでは、成田三樹夫山西道広はちゃんと「服部警部と松本刑事」で出演している。
 もっとも、あくまで「『探偵物語』へのオマージュドラマ」という意味では、1994年に日テレが深夜ドラマで製作した、『噂の探偵QAZ』が挙げられるだろう。優作を慕ってやまなかった古尾谷雅人(そういえば『探偵物語』の最終回『ダウンタウン・ブルース(宮田雪 小池要之助)』では、まだ新人だった頃の彼が、ゲスト出演していたっけ)が主演の探偵ドラマで、ここでもやはり山西道広は「松本『警部』」で登場している。

 『探偵同盟』は上でも書いたように、この時期莫大な借金を抱えて苦しんでいた加山雄三を、なんとかしてテレビで活用しようと頑張った企画である。

 この時期、往年の映画大スターはテレビ時代に困惑しつつ、それでも石原裕次郎などは上手く戦略を立てて「太陽族」のレッテルから抜け出すことに成功したが、さりとて積極的にイメージ変換戦略を行っていなかった加山の場合、いつまで経っても『若大将』のイメージから脱却できず、それゆえ、ピンで主役を張ったドラマ企画が立て難く、疎ましがられていた。

 この80年代初頭は本当に「何があったんだ加山雄三」と、誰もが思うレベルで、各メディアや各局のドラマで、いきなり加山が(どれもこれも無理目な設定役で)登場しては、浮いたままやるせなさを残す、反復作業が続いていた。
 ちょうど70年代の終焉間際に、植木等氏が注目を浴びてリバイバルブームが起きてたので、同じ「黄金期に東宝スクリーンを背負って立った主役の片割れ」としては、なにか捲土重来を期する物を、胸の内に抱えていたのかもしれない。

 結局「カムバック加山雄三ムーブメント」は、ニーズありきのブームではなく、せいぜいが「仕掛けかくありき」でしかなかったレベルの代物でなので、その流れも、「一応これくらいはやっておいてやらないと加山本人も納得しておとなしくなっちゃくれないよね」的な「最後の切り札企画」東宝映画の『帰ってきた若大将』(1981年 監督・小谷承靖で幕を閉じるが、その合間には、東宝のアクション刑事ドラマ『大追跡』でリーダーを張るも、藤竜也や柴田恭兵や沖雅也に(あらゆる意味で)徹底的に置き去りをくらって、「ドラマの置物お飾り」レベルの存在感で終わってしまっている。
 そして『探偵同盟』と同じ1981年には、ドラマウォッチャーの中でも究極のネタにされる謎のドラマ『加山雄三のブラックジャック』が製作されている。

 このドラマ、音楽はヒカシューだし、脚本はジェームス三木だし、気合だけは入ってるが、何せタイトルを見ただけで「あの『ブラックジャック』」を「実写のドラマ」で、しかも「主役が加山雄三」かよと、全てのウィークポイントがばれてしまうという、ノーガード過ぎる企画だったため、僅か1クールで打ち切られてしまった。

本当に、必死さだけは伝わっていた、当時の加山雄三


 そういう意味ではこの『探偵同盟』は、惜しすぎる作品である。
 なんたって、黒澤満伊地智啓の、東映セントラル系ドラマにおける重鎮プロデューサーコンビが、『探偵物語』のスタッフと現場を、そのまま持ち込んでいるのだから面白くない、わけがない。
 脚本は「これぞ丸山昇一の本気」が、フルバーストで楽しめるレベル。どれくらいかっていうと、「ある意味(あくまである意味)」丸山昇一の生涯最高傑作『小学生痴漢ブルース(監督・西村潔)』の準備稿タイトルが『小学生サワリーマン』というくらいだ(意味不明)。
 その他の脚本陣は、高田純、宮田雪那須真知子らで、演出陣は、村川透がこちらもフル回転しながら(笑)脇を西村潔、小池要之助、小澤啓一で固めている(つまり監督は全部で4人)。

 一応設定としては、大学の探偵サークルを主人公にして毎回事件が回転しつつ、要所要所で、そのサークル顧問の教授役で、加山雄三が〆るという展開。
 上記した、成田&山西の「服部・松本警察コンビ」が継続登場なのに加えて、他のレギュラー陣も、竹田かほり、ナンシー・チェニー桃尻娘も『探偵物語』からのスピンオフ。
 事実上の主人公は『太陽にほえろ!』四代目新人刑事の「ボン」を演じた宮内淳
 残りの脇役は、草薙幸二郎佐藤蛾次郎樹木希林と、『探偵物語』でゲスト出演していた面子を、ざらっと揃えている印象。

次回『犯罪・刑事ドラマの50年を一気に駆け抜ける!(70年代をナメるなよ)』Part8』に続く

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事