そんな生活は、やはり因縁のタルシス・リーグによって破られた。
「彼」を危険視したタルシス・リーグによって送り込まれた刺客、サイボーグのタコのようなモーフをもつバッカスと、蛇のようなモーフを持つバグスに襲われ窮地に陥る。
しかし、そこで刺し違えそうになった三人を救った、謎の男ジェスパー。
彼こそが、ファイアウォールの指揮官であり、ジェスパーは三人を、ファイアウォールのエージェントとしてスカウトしたのだ。
ファイアウォールエージェントスカウトに、応じるも応じないも自由だが、拒否した場合は相応の措置が待っている。受任すればエージェントとして使われることになるが、これまでの罪は問われない(この辺りの発想は、日本の60年代古典警察漫画『ワイルド7』と、隊長・草波の言動に近い)。
今回、ジェスパーが三人に与えた指令は明確だ。
現在、ファイアウォールの情報網に引っかかった、謎の病原菌、エクスサージェント・ウィルス事件の捜査と原因の調査だ。エクスサージェント・ウィルスは、人にも電脳にも感染するウィルスで、感染した対象をクリーチャー化させ、最後は死に至らしめる最悪のウィルス。既にその蔓延と事態収拾不可によって、「ニュー・ムンバイの悲劇」と呼ばれる、最終兵器による殲滅掃討事案も起きた(まるでホラー映画『バタリアン(原題:The Return of the Living Dead)』(1985年)のラストだ)。
エクスサージェント・ウィルスの背景には、犯罪組織パックス・ファミリアの関与がある程度予見されている。
パックス・ファミリアは巨大な犯罪組織で、その頂点に君臨する指導者は、自身の身体のクローンコピーを無数に持つことで、組織の崩壊を不可能にさせている(この辺りは『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1979年)のマモーか、『機動戦士クロスボーンガンダム』のクラックス・ドゥガチを想起させる、この手の典型例)。
このウィルスの蔓延と浸食を、これ以上はなんとしてでも食い止めなければならない!
調べたところ、既にこのウィルスの存在と開発源について、ジャーナリストのデルファイという女性が動き始めている。
デルファイの行動如何では、デルファイという存在そのものがX-リスクになってしまうので、状況次第では始末しなければならない!
まずはデルファイの足取りを追え!
ダン、バッカス、バグスの三人は、指令に従って金星圏のオニール型コロニー「ゲルラッハ」へ向かった。
ゲルラッハは、アルゴノーツと呼ばれる、科学者の集合知のポータルとして機能していて、三人の調査の結果、そこでゲルラッハのバイオテクノロジー科学者・メンゲレ博士の存在と、デルファイがメンゲレ博士を追いかけていたことが判明した。
メンゲレ博士の遺伝子工学研究の目的は、ロストと呼ばれた、過去の太陽系大崩壊(『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)における、セカンドインパクトのような存在)後の新世界を高めるため、人工的官僚を遺伝子で作り出す、ヒトゴノーム計画にあった。
デルファイが、メンゲレ博士と接触していたことが、ダンの情報ハッキングで判明する。
メンゲレ博士と接触したデルファイはどうなったのか?
謎の女王「スパイダーローズ」の存在と、「本当のX-リスク」とはなにか!?
謎が謎を呼び、SFマインドに溢れた世界観の中を、緻密で高度な物語構造がストラクチュアされていく。
そして、この物語が終幕を迎えても、全ての謎は解けはしない。
一応オチはあるのだが、根幹的解決に至る話は一つもなく、散りばめられた全ての謎が容易く解明できる物語も一本もない。