大賀 そんな中で、いわゆる「子役が演じる、作り物の子ども」ではなく、ローティーンからハイティーンへ移行時期にある、微妙な年齢の少年や少女たちを、あるがままにクロッキーのように描いたのが、先ほども挙げた相米慎二監督の『翔んだカップル』と、大林宣彦監督の『転校生』(1982年)だったなと思うわけです。この二本の監督を、作品自体は前後するものの、自社看板映画の監督に抜擢した角川春樹って人の眼力は、すごいものがあるなと当時感心してました。
三留 大林監督の『時をかける少女』(1983年)に関しては、当時私は言いたいことはいろいろあったんですよ。なにせ私は『タイムトラベラー』(1972年にNHKで放映された「NHK少年ドラマシリーズ」の第一弾。原作は同じ筒井康隆著『時をかける少女』)世代なので、どうしても評価の軸足が「そこ」に行っちゃうのね。まず『タイムトラベラー』をテレビで観て、次に筒井康隆さんの原作を読んで、NHKの『続 タイムトラベラー』は筒井さん(原作)からは離れて作られたんだけど、それらを全部リアルタイムで観ているので、大林さんの『時をかける少女』は、後にあれは大林さんの世界だって分かるんだけれども、それまでの原作やドラマ版では毅然としていたヒロイン像が、大林さんの作品だけ「大林監督が憧れる少女」だったんだよね。これはどの大林映画にも言えるんだけどね。だから、大林宣彦版『時をかける少女』の原田知世ちゃんの芳山和子は「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」「はい」って言える姿勢のまっすぐな女の子。そこは「あ、いいな」と思ったのね。これは大林さん自身も話をしているけれども、(薬師丸)ひろ子ちゃんと(大林監督)は相性が今一つなんだよね。