今回等の、初動の各シリーズの画像枚数が多い回は、ブログ初期に制作したエピソードを、その後の蓄積やアイテムで改めて挑んだ『リベンジプロジェクト』と呼ばれた制作で、今回の『侵略者を撃て』もその一環であった。
思えば本話は、ウルトラでも屈指の有名エピソードであり、その知名度は国民的とも言える、バルタン星人が初登場する物語のわけでもあり、本話のリベンジは必須であると感じていた。
リベンジプロジェクトは、漠然とした感覚で(2000年代後半)当時は「いつかやらなくては」と思っていたが、それが今回、具体的な契機となった原因は、実は小さく様々な要因が積み重なっている。
例えばそれは、前回も書いたように『ウルトラ作戦第一号』『湖の秘密』などで必要な、湖畔セットの構築だったりした部分もあるし、他の企画で用意した東京タワーのミニチュアを有効利用する意味でも、『輝け!ウルトラ5兄弟』はやり直したかったというのもある。
それと同じレベルで「じゃあバルタンの話もやってみるか」と思ったのは、実は、筆者がブログ開始時に紙で作ったビルが、本話に登場する防衛基地だったことに、いまさらながら気がついたという、笑い話のような経緯があったからだ。
そんな物を自分で作っておきながら、なぜ自分で今の今まで気がつかなかったのか。
それはつまり、そのビルは本サイトで『光の国から愛をこめて』を紹介する一回目で登場したビルであり、それは今から考えると、本話のミニチュアセットで撮影された第一回撮影会で、セットとして使われていたビルなのだが、それが本話の防衛基地であると知ったのが、恥ずかしながら2000年代後半だったのである。
その他でも、細かいアイテムの充実などもあり、今回はリベンジに踏み切った。
前回の制作では舌足らずな印象を与えていた本話も、最近のエピソードに匹敵する枚数を得ることで
より物語の魅力が伝わりやすくなったのではないだろうか?
それでは再現特撮を解説していこう。
まずは一枚目は、まさにその防衛基地の全景からである。
この防衛基地、劇中ではミニチュアセットで描写されるものの、特にバルタン星人やウルトラマンと絡むでもなく、ただ核ミサイルを撃ち出す程度しか演出は無いのに、しっかりミニチュアが作りこまれている。
この時期の円谷の、並々ならぬ力の入れようを伺う事が出来るわけだが、このビルの紙工作は、筆者が一年半前に作ったものをとっておいたもの。
いや、物持ちが良いと、こういう僥倖もあるのだという好例かもしれない(笑)
一応写真では、窓を丹念にフォトショで光らせてある。
二枚目は科特隊基地、三枚目はポピニカビーグル5の科特隊専用車を実景に合成。
このように、ブログ発足後に入手したアイテムが過去作品にフィードバックされると、アイテム収集の苦労が報われるようで、筆者としても少し嬉しかったりする。
4枚目からは科学センター内の描写になる。
それっぽい室内の写真を用意して、バルタンやハヤタのフィギュアをそこにはめ込む。
バルタン分身は、実は是非一度やってみたかったコラージュではあるのだが、皆様の目にはどう映ったであろうか?
ハヤタが発射するスーパーガンの光線も、フォトショ描画で処理してある。
防衛基地で発射体制に入る核ミサイルはげたか。
どう見たって普通のビルなのに、その屋上からなんとも物騒な代物を撃ち出すわけだが、このミサイルは、古いSF系プラモデルで、NITTOというメーカーが60年代に発売していた「宇宙探検車 サターン」というキットに付属していたミサイル部分を流用。
2回目のバルタン分身を経て、タイムスリップグリコのヴィネットによる「バルタン巨大化」が描写されて、物語はクライマックスへ流れ込んでいく。
バルタン巨大化からは、以前の作品画像を交えながら物語は進行していく。
はげたか発射、バルタンへ命中、バルタンが分身して復活までのシークエンスは、今回のコンティニュティで、より放映作品に近づいたのではないだろうか?
バルタンの飛翔から空爆までも今回は描写。
ハイパーウルトラマンシリーズのハヤタを、黒バックで逆さに撮影して、本話独特の変身シーンを再現。
ウルトラマン登場から空中戦までも、前回の画像に追加して流れを増幅させた。
今回は、追加カットでコンビナートセットを組むことで、劇中のコンビナートシーンを再現することにもなった。
なので、ウルトラマンのスペシウム光線発射カットも新撮影。
最後はバルタンの円盤を夜空へ運び去って、劇中同様朝焼け(ホリゾントは夕焼け用)の閃光カットで宇宙人襲来劇は幕を閉じる。
バルタン星人
バルタン星人は、バンダイウルトラ怪獣シリーズを撮影に使用した。
バルタン星人は、ウルトラ怪獣の中で最も知名度が高いキャラであると、言い切っても良いだろう。
ウルトラに興味のない大人や女性でも、バルタン星人を知らない日本人はまず、いないと言ってしまっても良いのではないのだろうか?
それだけの、国民的人気キャラであるだけに、過去、マスプロから展開されたウルトラ怪獣の商品化では、必ずラインナップに入っている。
ソフビだけに目を通しても、マルサン、ブルマァクの時代から、ポピーのキングザウルスなどでも、必ずバルタンはシリーズ展開開始のラインナップに並んでいる。
今回使用したバンダイのソフビシリーズでもその例に漏れず、バルタンはシリーズ初期の1983年に一度発売されている。
バルタン星人は、その個性的かつ他面的なビジュアルからか、商品化の機会には恵まれていたものの、劇中イメージの決定版アイテムがなく、ガレージキットの世界でも、ウルトラセブンと並んでバルタンは再現度においては難敵ではあった。
だからバンダイのバルタンも、幾度か迷走を繰り返した。
まず1983年に発売されたバンダイ初版バルタンは、当時としては出色の出来ではあったものの、どうしても「それなりの出来」の域を出なかったと言わざるを得ない。
やがて1990年に、俗に「三井グリーンランド版」と呼ばれる、新規造形版が三井グリーンランド限定で販売され好評を得たが、これも決定版にはならなかった。
1994年には、シリーズ全体のリニューアル版の波を受けて、バルタンも一般流通版が再新規造形されたが、これもまた決定版とは成り得なかった。
そういった紆余曲折を経て、バルタン星人の決定版とも言える本商品が、2004年に発売された。
それが今回使用したアイテムである。
このアイテム、決定版と断言できるほどに出来は良い。プロポーション、彩色、ディティール。
どれをとっても、過去のバルタンアイテムの中でもトップランク。
加えてこれが、本来子ども向けの840円商品(2006年当時)だということがまず驚き。
筆者達の若い頃(80年代)であれば、このクオリティでこの大きさのバルタンは、数千円から1万ナンボ出して、未組立てのレジンキットを買って、苦労して作り上げるしか道はなかった。
いや、それだけの出費と組立て工程を経ても、ここまで出来は良くなかった。
つくづく良い時代になったものである。
一応撮影用に、商品製法の都合上ふさがっていた、ハサミの内側と尻甲羅の内側を、デザインナイフでカットしたが、あとは商品のまま撮影に使用している。
バルタン星人巨大化
正体を現したバルタン星人が、ハヤタとイデが見守る前で巨大化するカットは、それをそのまま、パースをつけて立体化した食玩の、タイムスリップグリコ第3弾「宇宙人ビル街に現る」を撮影に使用した。
タイムスリップグリコは、昭和の懐かしい電化製品やシチュエーションなどを、手のひらサイズで精密に立体化したミニフィギュアのシリーズ食玩で、その名の通り、江崎グリコが2003年から発売展開した商品である。
それらの多くは、昭和を象徴する自動車や電化製品などで占められていたが、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『鉄人28号』などが、昭和を代表する子ども文化の象徴として立体化された。
バンダイ以外のメジャー会社が、ウルトラを食玩で立体化するという事例自体が珍しいが、特にこのシリーズが、バンダイの怪獣名鑑と「名場面のヴィネット化」という点で、コンセプトが被っているにも関わらず、同時代に存在できたのは、それはこちらが、その造形センスにディフォルメが混じっていたからだった。
それはどうしてかを考えていくと、それはこのタイムスリップグリコという商品が、「あの頃の思い出」をメインコンセプトにしているからであって、それは、実物の自動車や家電製品などを再現する時はリアリズムに徹するが、その再現対象が、作品世界だった場合は、より当事の印象を強烈に表現するという、そういう方向性が、加味されたからなのかもしれない。
このシリーズでは、このバルタン星人巨大化シーンの他にも、電柱の上に佇むカネゴン(しかも白黒)や、ビル街で燦然と立ち上がるウルトラマン、同じくビル街で地下から現れるテレスドンや、大阪城を壊すゴモラ、夕焼けの工場街で、メトロンと切り結びあうセブンなど、初期のウルトラを代表する名場面が、程よいディフォルメでヴィネット再現されている。
このバルタン巨大化も、実際に手にとって見ると、強いパースがそこに取り入れられていて、どの角度から撮っても、意外に正解はないアイテムだったりするのだが、本話のまさに、このシーンの「瞬間」を切り取ったヴィネットとしては秀逸なので、今回はあえてこのアイテムを使ってみることにした。
ベースとなるビルは、屋上最上段しか作られていないが、アンテナや給水塔の細部まで作りこまれており、そこで登場するハヤタやイデも、漫画チックにポーズがディフォルメされてはいるが、むしろこのサイズではそのおかげで、フィギュアがちゃんと、演技をしてくれている表現に到達している。
実はこのヴィネットは、他のエピソードでも使い道があるので入手したのだが、それがどんな話で、どんなシーンなのかは、いずれそのときのお楽しみである。
今回はこの傑作ヴィネット食玩を、紙ビルセットに配置して撮影を行った。
バルタン星人円盤
ウルトラマンシリーズで、初の宇宙人侵略をテーマに扱った本話は、巨大化したバルタン星人一人を倒せば、それで終了という流れではなく、最終的には20億のバルタン同胞が眠る円盤を撃破して終幕となるのであるが、それを再現するために用意した、バルタン星人の円盤は、バンダイが80年代初頭に展開していたプラモデルブランド「The特撮Collection」の、「1/350二代目バルタン星人」に付属していた円盤を撮影に使った。
80年代初頭は、海洋堂やゼネラルプロダクツなどを筆頭にして、怪獣ガレージキットが隆盛を誇っていた時代であり、それまでは怪獣の立体物といえば、ソフトビニール人形か、ぜんまい内蔵の歩くプラモデルかと思われていた時代に、精密な造形と、固定されたポーズで再現された怪獣ガレキは、一気にホビー趣味の一角を担うジャンルに成長していた。
ならば自社も、と思ったかどうかは定かではないが、この時期バンダイも、半完成品状態の大型高額フィギュアシリーズ「リアルホビー」や、この「The特撮Collection」というプラモデルブランドで、リアル怪獣フィギュアの世界に乗り込んだのである。
しかし、まだまだマスプロメーカーの力では、意欲を込めた原型と、工場生産された商品との間にあった溝は深くて長く、そこで産み落とされた製品は、どれもこれも「気持ちは分かるけど酷い出来」ばかりであった。
バンダイのみならず、当事のインジェクションキットプラモデルは、生体的な立体を再現するには向いておらず、それは例えばロボットメカに、生体的意匠を取り入れた『聖戦士 ダンバイン』(1983年)のオーラバトラープラモデルが、総じて不評だったように、ましてや怪獣や宇宙人が、ガレキを嗜好していた層が納得する出来で作れるはずも無く、結局このシリーズは、時代のあだ花的な存在で終わってしまった。
全身を覆う棘を、全て別パーツでという意欲的な試みを持ち込んだガラモンも、その棘の数が致命的に足りず、出来上がりは山火事後の禿山のような悲惨な状態だったし、ゴジラもウルトラセブンも、皆どこか違和感をもたらすレベルに終始していた。
しかし、その中で特撮模型マニアに、実はひそかに評価されていたのが、各キットに一つずつ付いてくる、オマケプラモの存在だった。
例えば、ペギラにはセイバー戦闘機、ウルトラマンには小型ビートルと、そのチョイスも絶妙ながら、その造形は当事のミニサイズとして見る分には充分な出来。
その中で、なぜか二代目がチョイスされたバルタン星人のプラモデルに付属していたのが、今回使用した、初代バルタンの円盤だったのである。
パーツ構成は4パーツと単純ながら、そこは模型業界ではプロのバンダイの仕事。
細かいディティールまでしっかり彫り込まれて、UPにも耐えるクオリティを誇っている。
今回はこれをストレートに組み上げ、シルバーやホワイト、紺系で塗装したアイテムを使った。
ちなみにこの円盤も、実は『ウルトラマン』の他のエピソードで、この円盤そのままに、出番があったりするのである。
使い回しが利くという意味でも、入手する価値があるプラモデルであった。
科学特捜隊基地
本話からパーマネントアイテムとして演出に参加することになる、ウルトラマンを支える科学特捜隊の基地は、1995年にバンダイから発売された「ウルトラバトルゾーン・科学特捜隊基地」を撮影に使用した。
「ウルトラバトルゾーン」シリーズは、バンダイが怪獣・ウルトラソフビと連動して展開した、「怪獣ごっこの舞台としての簡易ジオラマ」玩具で、そのPart1はビニールマップとビルや橋のミニチュアで構成されていて、おまけについていたCタイプポーズ付初代マンとジラースのソフビは、当初はこの商品を購入しないと手に入らない商品だった。
今回から演出に使用する科特隊基地はそのPart2であり、こちらはもちろん(玩具アレンジが利いているとはいえ)、マスプロメーカーが立体化した科特隊基地としては、過去にもその後にも例を見ないボリュームを誇っている。
科特隊の基地立体化アイテムといえば、2004年に食玩で展開された「名鑑シリーズ ウルトラメカニクス 出動スタンバイ編」の科特隊基地が、ジェットビートル版と小型ビートル版を組み合わせることで、科特隊基地の全景を、再現していたことがすぐに思いつくが、リアリズムと手ごろさでは食玩が勝るとはいえ、ボリューム・ギミック・プレイバリューでは、圧倒的にウルトラバトルゾーン版の方が勝っているのである。
ウルトラバトルゾーン版科特隊基地は、そのサイズが、怪獣ソフビやウルトラヒーローソフビと合わせてあるだけではなく、筆者が再現特撮演出に使用しているPVC版ウルトラメカ「出撃!ウルトラメカセレクション」のアイテムとも連動しており、基地本体を開くと、そこがメカセレ各種の収納棚になっていて、失くしやすく片付けにくいメカセレを整理収容できるという、便利アイテムにもなっているのである。 その他のギミックは(手動による)アンテナ回転や、カタパルトからのメカセレアイテム発射機能程度ではあるが、昭和ウルトラの基地が、平成になってから玩具として立体化されたこと自体珍しく、そのボリュームはアップ撮影にも耐えるクオリティであり、本話から最終話までは、科特隊基地のバンクショットとして活用していく。