『光の国から愛をこめて』で毎回特撮を行っていると、必ずそこにはなにかしらの「そのエピソードならでは」のハードルが存在しているのだが、本話はもちろん、そのハードルの殆どが「水中特撮」という一点に尽きた。

筆者の再現特撮、というかウルトラシリーズにおける水中シーンといえば、本話の他には『ウルトラマン』(1966年)の『ウルトラ作戦第一号』『謎の恐竜基地』『ウルトラセブン』(1967年)『ノンマルトの使者』『ウルトラ警備隊西へ・前編』『海底基地を追え』などや、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)の『タッコング大逆襲』『呪いの骨神オクスター』などが思い起こされるが、実は筆者にとって、水中特撮は鬼門であり、難関の一つであった。

ブログ当時の『ウルトラ作戦第一号』や『タッコング大逆襲』での海底シーンは、自分でも納得がいかないレベルの特撮に終始していたし、多少なりとも経験を積んで挑んだ『ウルトラ警備隊西へ・前編』序盤の海底シーンも、思うほどに満足のいくクオリティを得られなかったと後悔している。

基本的には、夜間シーン撮影テクニックをアレンジした撮影法で撮った画像を、フォトショ処理で海中っぽく加工していくという手法に変化はないのだが、この回と『海底基地を追え』の特撮で、ようやくなんとか自己満足を得られるレベルの、海底特撮が確立したといっていいかもしれない。

上で挙げた水中特撮シーンの殆どがそうであったように、本話もそのシーンの多くは、海底探査メカによる航行シーンである。

撮影された写真の上に、波を描いたレイヤーを被せて、泡のレイヤーを配置する。

そして画面全体にちょっとだけ揺らぎを持たせる手法で、水中独特の画面感を演出してみた。

本話は、グビラがドリルで地上に出現するクライマックスまでの特撮のほとんどが、そうやって撮影・加工された水中シーンによって構成されている。

まずはいつものように、科特隊本部からビートルが発進するカットからスタートする。

そして特殊潜航艇S25号の海中進行シーン。

S25号のナンバリングは、フォトショップで全カットの数字を書き換えてある。

S25号の噴射炎は、泡や波と共にこれもフォトショップで合成。

破壊された海底パイプは、Nゲージの工場施設ストラクチュアセットの物を使用。

やがてS25号は海底基地に到着する。

海底基地をどうするか。

これもまた、本話特撮再現の大事なテーマであった。

いまさら言う事でもないが、本話の海底基地の立体物など、どこを見渡しても手に入らない。

しかしタイトルにまでなってる以上、やはりこの基地を写さないでコンテは作れない。

『故郷は地球』の代々木競技場、『ウルトラ警備隊西へ』の京都国際会館などと同じく、初期ウルトラではお約束となった「一品物特撮セット」の変則パターンだった。

仕方ない、作るしかないとあきらめて、DVDを睨み付ける日々が続く。

ゆるやかなドーム状の基地本隊は、何かから流用しなければどうしようもない。

さて、では何を流用するべきか。

悩み続けている中で、当時仲良くしていた人が不意に「これならどう?」と言って差し出してくれたのが、100円ショップで販売されている子ども用玩具のヨーヨーの片面だった。

なるほど、カーブのアールなど細かい差異を言い出したらキリがないが、パッと見で勝負するなら、充分それっぽくは見える代物である。

試しにオレンジで塗装してみて、劇中の窓代わりにアルミテープを貼ってみると、見事にそれらしく見えるようになった。

後は基地正面の「JM 21」と書かれた赤いゲートを印刷して貼っただけ。

(海底基地)

それをいわば土台に置いて、周囲にパイプやジャンクパーツを並べて、海底基地セットをなんとか構築してみせた。

そこへS25号を操演で撮影して、海底基地への到着カットを作成した。

そこへグビラ登場。

グビラはソフビを直接操演し、そこへS号へと同じ特殊効果を施している。

S号の魚雷発射を経て、グビラとS号の対激戦が始まる。

S号がグビラに撃墜されてウルトラマン登場。

グビラが地中をもぐって地上へ出るカット演出では、ドリルに回転処理を入れてみた。

地上はいつもの茶土台・青空背景・緑山、岩山セット。

追って出現するウルトラマン。宙を舞うグビラはここでも操演で表現。ウルトラマンを襲うグビラのドリルはここでも回転処理。八つ裂き光輪はフォトショのバンクカット。

ウルトラマンのチョップで折られるドリルは、ソフビのドリル部分をカットして撮影。

お約束のスペシウム光線で止めをさされたグビラの絶命で、物語は幕を閉じる。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事