――その次の『ウルトラマンタロウ』(1973年)で、特にお聞きしたいのですが。石堂淑朗氏の脚本で『ウルトラ父子 餅つき大作戦』という話があります。この話は、臼の格好をした怪獣モチロンが、月から餅を食べに地球に降りてくる、牧歌的でタロウらしい楽しい作品なのですが。なぜかその中で、怪獣モチロンが暴れている最中に、そこに登場する大人達の記憶にある、戦争中の東京大空襲の過去が、フラッシュバックされて、白黒写真の画像がインサートされる。非常にこの演出は印象的だったのですが。

『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子餅つき大作戦』脚本・石堂淑朗 監督・山際永三

山際 あれは確かホン(脚本)にはなかったと思います。

――ですよね。石堂氏の発想にあれはないですよね(笑) あれが山際監督のメンタリティから出た演出であることが非常によく解るのですが、幼児をターゲットにしたあの作品で、なぜあのような演出を挿入したのでしょうか?

『ウルトラ父子餅つき大作戦』

山際 僕も細かいことはよく覚えていないんですが(笑) ちょっと無理もあったんだけど、入れちゃったってところで。その前の『帰ってきたウルトラマン』の『この怪獣は俺が殺る』(脚本・市川森一)で、夢の島のゴミの話が出てきてね。うえずみのるって役者が、東京都のゴミが何万tで、夢の島が満杯なんだってそういう話をするんですが、あれも市川さんのホン(脚本)にはなかったんです。僕が入れちゃうんだよね。そういう、さっきから話が出ていた「教育番組的な色彩」を入れることについて、僕がいくらやっても、橋本さんは文句言わないわけですよ(笑) 市川さんも文句は言わないの。だってもう、橋本さんと僕が「ゴミ問題を描こう、入れよう」って、いくら言っても彼は書かないんですよ(笑) で、一応話は出来ちゃうから、あとの解説は僕が入れるんです。市川さんは「あぁまた始まった」みたいな反応だし、石堂さんも、僕が理屈を言って、僕や大島渚の若い頃の話なんかをすると、僕に面と向かって反対はできないわけですよ(笑) 「あぁまた山際の趣味が始まった」ってことで許されちゃう(笑) 『ウルトラマンタロウ』では、他には酒飲み怪獣が出た回があったんですけど(『怪獣ひなまつり』(脚本・阿井文瓶))、あれこそがファンタジーなんですね。あの話はメッセージ性がないから、ちょっと困ったなっていうのもあったんだけど、あれはでも、出来上がりは面白かったっていうんで、褒められたんですがね。あれはまさに、ファンタジーを意識してやりましたね。あんまりテーマ的なことは考えないで。

『帰ってきたウルトラマン』第22話『この怪獣は俺が殺る』脚本・市川森一 監督・山際永三

――山際監督の手がけた最後のウルトラでもある、『ウルトラマンレオ』(1974年)に関してなのですが、なぜ最終回(『さようならレオ!太陽への出発』(脚本・田口成光)と、その直前の回(『レオの命よ!キングの奇跡!』(脚本・石堂淑朗))だけ、いきなり登板したのでしょうか?

『ウルトラマンレオ』

山際 あれは『日本沈没』(1974年)とか、京都での時代劇とかで忙しかったのが、たまたま終わって、ウルトラ自体が終わるので、ラストは締めてくれと。そういうことだったんですね。

――監督はウルトラを4シリーズ手がけましたが、その中でやりやすかったのは、どのシリーズだったのでしょうか。

山際 やりやすかったというか、慣れたというか、スタッフともいろいろやりやすかったのは、エースからタロウの時期でしたね。ただ、今から観て作品的に面白いのは、『帰ってきたウルトラマン』が面白かったかなぁと思いますね。

ここまで山際監督の、ウルトラマンシリーズの逸話を伺ってきましたが、次回は『ジキルとハイド』(1973年)『日本沈没』(1974年)『ちびっこかあちゃん』(1983年)等、山際フィルモグラフィの多岐にわたってお話をお伺いしたいと思います。「山際永三と五社英雄と『日本沈没』と」さぁ次回もみんなで読もう!

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