誰も覚えていないのかもしれないが、確かに「そこに在った」のだ。
放送局はテレビ東京。
タイトルバックと最終回を撮ったのは、名匠・市川崑。
重森孝子、古内一成、扇澤延男、尾西兼一、田上雄等が脚本を書き、工藤栄一、蔵原惟繕、降旗康男、佐藤純彌、舛田利雄、長谷部安春、澤井信一郎、出目昌伸、村川透、和泉聖治達がメガホンを執った。
主演は役所広司・布施博。
その監督陣は、今回こうしてざざっと半世紀の日本刑事ドラマ史を追ってきたこの記事にお付き合いいただき、読んでくださった方であれば、誰もが「おぉ?」と思うはず。
むしろ、その監督の名前の列挙を見るだけで普通に「それはいつごろの作品なんだい? 並んでるお歴々のお名前の並びから察するに、70年代中盤、いや前半かな?」とも思うであろう。
しかし、この、究極の70年代刑事ドラマ監督オールスター作品は、その番組のタイトルは『刑事追う!』(1995年)であった。
この記事を、ここまでお付き合いいただけた方の中でも、このドラマを既に知っておられた方は、どれだけいらっしゃるだろうか?
そう、この『刑事追う!』は90年代の作品であり、むしろ、『エヴァ』や『踊る』と同期のドラマなのである。
監督のラインナップからすると意外と思われるかもしれないし、むしろ逆に、それが当たり前だと思われるかもしれないが、テレビ東京で、90年代の月曜日夜9時に毎週放映されていたこのドラマは、まったく視聴率がとれず、3クール放映だった予定が25話に短縮されて、ひっそり打ち切られて、誰も知らないままテレビの歴史の影に消えていったのである。
「『あの時代の刑事ドラマ』を、そのまま現代に持ち込んだときの現実と結果」は、実は『相棒』ではなく、この『刑事追う!』の方が、証明していたのかもしれない。