『ヤサぐれ』シリーズの安藤昇

――なるほど! いわば安藤監督は円谷から見た時には、キャリア組みたいな感じだったんですね(笑)

安藤 まぁそれは40年経ってはじめて知ったんだけど(笑) そんときは当たり前だと思ってもらってたんだけど(笑)

――自分が思うのは、例えばセブン当事の円谷スタッフ陣を見返してみたとき、安藤監督はチーフ助監督として、円谷にとって親会社に当たるTBSから出向してきた、飯島敏宏監督や実相寺昭雄監督の班に、優先的に組み入れられていたわけです。円谷にしてみれば、親会社からの出向監督はVIP待遇だったわけで、そんなVIPをお迎えするに当たっては、必ず円谷側からのチーフとして安藤監督が選ばれていた。そんなスタッフ配置を見るだけでも、当時の円谷がどれだけ安藤監督の力量を高評価していたか。今伺った給料の話から見てみても、それが伺えるのですが。それはやはり、当事のテレビ界が潜在的に抱いていた、本編(映画)コンプレックスというのが根底にあったからではないでしょうか?

『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より

安藤 現にね、セブンは2本撮りでローテーションなんだけど、野長瀬三摩地は二回目、1本しか撮ってないでしょ?(註・第23話『明日を捜せ』) その時ね、野長瀬三摩地がなんかの作品と(スケジュールが)ダブってて、途中でいなくなるかもしれねぇっていうことになって、それで僕が呼ばれて『もし俺が途中で向こうに呼ばれて行かなきゃいけなくなったら、安ちゃんなら安心だから、後撮ってくれ』って言われて。その時からね『安ちゃんなら撮れるんじゃないか』って話が出てたらしいのね。

――円谷プロは、特撮技術に特化したプロダクションだっただけに、映画畑出身の安藤監督が、とても頼もしく思われていたのですね。

安藤 僕に言わせればさ、まぁ僕は円谷育ちじゃないから言えちゃうけど、要するに、本編(ドラマ)があって、必然性があって特撮があるべきなんだよ。ところが特撮ってお金がかかりすぎるからさ。一回撮っちゃうと特撮部分は、おいそれと切れない(カットできない)っていう、悩ましい部分があるわけですよ。そうすると、そういう中でどういうバランスを取るの?という話なわけで、僕はウルトラセブンが出てくると『あぁもう僕の出番は終わったな』と。僕にとっちゃ特撮部分なんていうのは、本当に極端な言い方をするとどうでもいいし、そんな、あーでもないこーでもないって、中野稔とかさぁ(笑) うるさいよ!(爆笑)ってぇ話だよねぇ。いいんだよどっちでもそんなの!っていうね(笑) でも、それはやっぱり円谷にいると言えないわけだよ。

――もうなんていうか(笑) 安藤監督の話を伺っていてあらためて思うのは、本当にストレートで、すがすがしいなぁと(笑) 例えば現代では、当事セブンやウルトラマンに関わっていた方々が、昔を美化して思い出を語ることが、業務になっている方もおられるわけで。

安藤 うん、僕はだってその籠の中にいませんから(笑) そういうことをしてる人達は、皆そこから出られないんですよ。

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