前回は「出渕裕ロングインタビュー14 出渕裕とネトウヨ跋扈とミリオタサヨクと」

――例えば、アニメの分野でもメカデザイナーや演出をやってる方で、ミリタリーマニアの人は多いと思います。出渕さんもまたミリタリーマニアでありながら、今のようなご意見を持ってらっしゃる。だからミリタリーマニアという人達を尊敬も出来ていたんです。

出渕 僕はマニア、って言う感じじゃないですけどね。親しくしている良いミリタリー好きな方も、「僕等ミリタリー好きも、だから右ってわけじゃないんですけどねぇ」ってよく言うんですよ。そういうミリタリー好きの人は多いです。どちらかっていうと「これはこれ」「それはそれ」っていう。どうもその辺勘違いして、そういうの(ミリタリー)を好きな人はそういう(右傾思想)のだっていう、中にはそういう人もいるだろうけど、一括にイコールでそう捉えられるのは悲しいというか、そういう偏見を持たれると困ってしまうというか。

出渕氏近影。 下北沢ヴォルール・ドゥ・フルールにて

――思うんですが、『ガールズ&パンツァー』でもいいですし『艦隊これくしょん』でもいいんですけど。よく萌えアニメを語る時に、「萌えアニメそのものがキモイのではない。萌えアニメオタクがキモイんだ」っていう名言があるんですけど、その「萌え」と「ミリタリー」が、相乗効果を上げて、そういったコンテンツというか作品で一緒くたにされているのが、今のオタク市場なのかなと。僕が若いころ、渋谷にアルバンという軍曹品専門アンティークショップがあったんですが、僕のバイト先の目の前だったんです。

出渕 それって名言なの?なんか気に入らないものを揶揄してる感じで、ちょっと名言には感じられませんけどねえ。アルバンは覚えてますよ。渋谷の大盛堂の地下にあった店ね。僕もよく行きました。

――そこで、毎日大人のミリオタの人たちが集まってる。でもみんな普通の服装をしている。そんな中にたまに、若いミリオタが全身旧日本軍の装備とかで店にやってきて「〇〇二等兵! 只今参りました!」とかやっちゃうんですよ。でも、それを見て、当時のミリオタの大人の人たちは叱ったんです。「お前は馬鹿か! 街にはまだ、戦時中の辛い記憶を持っている人や、戦争の傷跡を抱いて生きているお年寄りもいるんだぞ。我々の趣味は、そういった人たちを傷つける目的ではない! 軍曹品は、あくまでイベントで着るべきで、日常で身に付ける物ではない!」と。僕はそれを聴いて、まるで『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年 監督:宮崎駿のラストの「なんて気持ちの良い男たちだろう」みたいに感動して(笑)

出渕 そういうのに近い、困った例は今でもありますね。最近なんですが、「ホフブロイハウス」っていう、ドイツのミュンヘンにあるビアホールが日本に進出してきて、大好きなんですけど。そこに、ナチスドイツの軍装着て来る人が、たまにいたりするわけですよ。そこってやっぱり、ドイツ人の人達もいるわけですよ。ちょっと待てってオマエラ! 

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