『ウルトラセブン』で、メインライターの金城哲夫氏が抱えていた、数々のジレンマや「戦争構図」に対する葛藤などは、これまでのセブン評論感想などでも書いてきたが、本話においては、娯楽志向の強い明快なバトル編であるにも関わらず、まだ他作家によって切り崩されていないはずのそれらが、溢れるようにこぼれて噴出してしまっているのであるが、それに関しての記述は後編の評論感想に譲るとして、今回は本話を中心にした様々な雑記を書き連ねてみたい。
まずはキングジョーについて。
このロボットについては先ほど「ペダン星人のスーパーロボット」という記述の仕方をしたが、実は本話放映時には、キングジョーという名前はついていなかった。
脚本上では「ペダン星人のスーパーロボット」という呼ばれ方しかしておらず、「キングジョー」という名前は、玩具会社のマルザン(旧マルサン)が、このロボットをソフビ人形として商品化する際に、円谷プロに打診したときに付けられた名前なのである。
一説によると、キングジョーという名前の語感は、金城哲夫氏の「キンジョウ」からとられたと言われているが真偽は定かではない。
また、キングジョーは日本のアニメ・特撮に登場した、初めての「合体ロボット」である可能性が高い。
「複数の飛行メカが変形して合体して、人型の巨大ロボットになる」という設定は、後の『ゲッターロボ』(1974年)を先取りしているが(テレビ版『ゲッターロボ』メインライターは上原正三氏)、当初、キングジョーのアイディアとして考えられていた「無数の部品が群れを成して飛んできてそれらが集まってロボットになる」もまた、『ゲッターロボ』の原作版で、百鬼帝国の百鬼獣の一体に存在しているのも、面白い一致ではなかろうか。
没になったアイディア自体は、おそらく手塚治虫の漫画『魔神ガロン』(1959年)辺りが、イメージの源流だろうと思われるが、これは特撮では表現しきれないと判断されて、放映作品にあるような、4機のUFOによる合体ロボットとなった。
4機のUFOが次々と変形・合体していってロボットになっていく特撮は、これはもちろん、『ウルトラセブン』でウルトラホーク1号の、合体シーンなどを撮っていた技術の蓄積が成せた技である。
次にウルトラセブンについて。
ウルトラセブンのスーツの中に入っていたアクターは上西弘次氏。
俳優としては、東宝のクレージーキャッツ映画『ホラ吹き太閤記』(1964年)で、織田家の武将役でスクリーンデビュー。セブンまではその後も同じクレージー映画の『無責任清水港』(1966年)などで、バイプレイヤーとして活躍するが、元々剣道を中心に武道を嗜んでいたため、その屈強な体力や俊敏性を見込まれて、セブンのスーツアクターとして活躍した。
セブンの後は、ウルトラを模倣したピープロ作品『スペクトルマン』(1971年)などで、やはりヒーロー・スペクトルマンのスーツアクターを担当したり、望月三起也原作の子ども向けアクションドラマ『ワイルド7』(1972年)では、ガンアクションなども披露していた。