第一期ウルトラの三作目を飾る『ウルトラセブン』(1967年)は、それまでの怪獣路線とは違って、対宇宙人との兵器戦争の様相を持つ作品であった為、第1話もあえて巨大な敵との格闘は無く、ビジュアルでも前作とは明確な違いを打ち出す形となった。
そのため『光の国から愛をこめて』の名場面再現でも、いきなり苦労させられることになったのだ(汗)
放映作品に準じて特撮再現も、ウルトラ警備隊のメカの活躍が中心になるが、それ以上に本話の再現特撮が苦心させられた要因の一つが、本話で事実上の敵キャラ主役となる、クール星人円盤アイテムの問題だった。
セブンはもちろん、宇宙人侵略物として成り立っている娯楽作品であり、そうなると、時には敵の宇宙人・怪獣以上に、宇宙人が乗ってやってくる円盤そのものが、特撮シーンで重要な役割を占める作品も少なくなく、上でも本編解説でも述べたとおり、本作は前作とコンセプトを変えようとした感が強く、第一話に当たる本話も、クール星人そのものの出番は極僅かに過ぎず、むしろ本編ではクール星人円盤群と、ウルトラ警備隊・ウィンダムの戦いがメインであった。
昨今のフィギュアブームは、既に金の鉱脈を掘り尽くして、落ち葉拾いになってる部分も強く、ウルトラでも、第一期に限るなら、そこで登場した殆どの怪獣や宇宙人が、なんらかの形でフィギュア化されているといっても過言ではないが、敵キャラ側のサブメカに関しては、まだまだ立体化に恵まれているとは言いがたい。
宇宙人と、円盤による侵略がメインとなる、セブン世界のアイテムで考えても、円盤まで立体化されている宇宙人はそれほど多くはなく、ウルトラ怪獣名鑑などの、食玩の台座や、フィギュアのオマケまで含めても、その多くはアイテム化されていないのが現状である。
セブン第一話を飾った、クール星人の円盤もその例に漏れず、筆者がブログを発足させた2006年頃から現在に至るまでも、少なくともマスプロメーカーから発売されている枠では商品化されていない。
では、アイテムがない場合はどうするか?
簡単に結論だけ述べれば、そのシーンをカットして構成するか、自分でそのアイテムを造形するかしか、選択肢はない。
ブログ発足時は、まだまだ再現画像の枚数が10枚前後を想定していたこともあり、円盤の登場するシーンをばっさりカットする構成で対応したわけであるが、それをリベンジするとなると、同じ逃げ方は通用しないことは、サイト企画当初から自覚はしていた。
また、繰り返すようだが、前作と方向性を変えようとした円谷スタッフが、新シリーズの第一話で目指したものは、巨大な宇宙人と怪獣のプロレスではなく、地球と異星の科学が生み出した、メカニック同士の攻防戦であったので、本話をしっかりとリベンジするのであれば、クール星人円盤とウルトラホークの空中戦の再現は不可欠と判断、ならばなおさらのこと、クール星人円盤のアイテムは用意しなければいけないと、覚悟を持って企画に当たることになった。
しかし、やはり、クール星人の円盤はどこを探してもアイテムが見当たらない。
ならば自分で、制作するしかないという結論に至ったのだが、では、はたしてどうやって、成田亨デザインの円盤を自作するかが次の難関だった。
クール星人円盤は、大型母船と小型戦闘円盤の二種が存在しており、それら二つを用意しなければ、全体の構成がいびつになってしまう。
まず悩んだのが大型母船だった。
ドーム型の中央部分から、傾斜のついた羽根が三枚広がっているというデザイン。
これを立体で再現するときに、最初に思いついたのが、扇風機のプラモデルの羽根だった。
クール星人の母船は、上から見下ろすとその中央部と羽根の構成が、扇風機の羽根部分のようにも見えるデザインになっている。
そしてまた、かつてプラモデル文化華やかしりころ、扇風機はオーディオコンポやギターなどと共に、卓上を飾るアイテムとして、プラモデル化されていた時代があったのである。
ヤフオクで探せば、手ごろな値段で、いくつかの扇風機プラモデルが検索ヒットする。
しかし、いざ実際のプラモデル写真を見てみると、中央部の造形や、羽根の枚数(ほとんどの扇風機は、羽根が4枚である)など、クール星人の円盤との差が激しすぎて、ちょっと「見立て」としては使えないという、残念な結論をもたらすしかなかったのである。
さて、ではどうするべきか。再び暗礁に乗り上げて悩むこと数ヶ月。
実は、クール星人の母船に、きわめて近いシルエットを持つプラモデルパーツを、既に所有していたことに、ある日突然気がついた。
それは、アオシマから発売されていた1/450戦艦大和のスクリューのパーツだった。
(大和・スクリュー)
パーツのサイズそのものは、HGガシャポンのオマケよりも小さい極小サイズだが、その形状・シルエットはクール星人の母船に非常に近い。
当然クール星人母船にあった、螺旋状のディティールなどはあるはずもないのであるが、羽根の枚数もちょうど三枚であり、他のブログ特撮と平行して制作することを考えると、これをこのまま赤く塗装すれば、充分クール星人母船の「見立て」としては、通用するのではないかとの結論に至ったのである。
実際、赤く塗装してみると、細かいディティールは再現できなかったものの、劇中の円盤の雰囲気には、かなり近づいたと思えたので、メインとなる母船円盤は、これを使用することに決めた。
(クール星人・円盤母船紹介)
一方、小型円盤の方であるが、こちらは最初から「見立て」が通用するデザインではなかったので、拙いながらも、自作で再現する方向で手を動かした。
コトブキヤの丸型パーツを、大小三個用意して、プラ板で底面をそれぞれ作り、それらを1mm真鍮線で繋ぎ合わせた程度の簡易スクラッチだが、それなりに劇中ミニチュアの感じは出せたのではないかと思っている。
(クール星人・円盤紹介)
本話でメインになる、大型母船と小型円盤の二種類が、一応とはいえ揃ったことにより、他アイテムと共に、本話を再現する準備が整った。
オープニングは、地球防衛軍のパラボラアンテナ。(国立天文台野辺山宇宙電波観測所にある45m電波望遠鏡の写真を使用)
続いて冒頭で描写された、発進サイロの中のウルトラホーク2号を、食玩「ウルトラ怪獣名鑑 ウルトラメカニックス 出動スタンバイ編」で撮影。
続いて、道路を疾走するポインターの新作カットを経て、そのポインターが、クール星人円盤の攻撃をバリアで跳ね返すカット。
このカットは、素材自体はリメイク前のカットを使用しているが、今回はそれにフォトショップで、クール星人円盤の光線とポインターのバリアを描画した。バリアは新規レイヤーにテキストで描いた▲を、複製して配列することで表現。
続いては、ウルトラ警備隊作戦室モニターに現れたクール星人。
前回は、ケント紙で組んだ箱の中にHGガシャポンクール星人を入れて、ドライアイスの煙を流し込んでそれを撮影したが、今回はモニター枠と煙を直接フォトショップで描画した。
ブログ時代からの蓄積は、セットも充実させた。
ブログ発足時には、まだまだ無理であったコンビナートセットも、『タッコング大逆襲』『オイルSOS』などを経たことで充実し、それはフィードバックさせることで、本話の中盤を盛り上げた「クール星人の透明円盤によるコンビナート地帯襲撃」を再現させた。
続いてもう一度、最後の警告に現れたクール星人が描写される。
ようやく、ここからウルトラ警備隊の反撃。
ホーク2号同様に、食玩ウルトラメカニックス版のホーク1号を使って、出撃するホーク1号を演出し、そのまま食玩HDMウルトラホーク1号の勇姿へと繋がる。
フォトショで描かれた、特殊噴霧装置の、赤い霧の中から姿を現すクール星人母艦円盤。
ホーク1号は三機に分離して、山岳地帯に円盤を追い詰める。
ダンが手にしたカプセルは、食玩ウルトラマン変身アイテムコレクションで、ウルトラアイとセットで販売されたカプセルの一つを使用して撮影した。
このときのダンは、まだウルトラ警備隊に入隊していない設定なので、カプセルを持つ手には、白い手袋は着用していない。
ウィンダム登場。クール星人の小型円盤を相手に戦うシーン。
第一話独特のセット感を再現するために、岩山を多めに配置したセットで撮影。
ウィンダムの額から発射されるビームや、クール星人円盤の光線もフォトショップ描画。
ウィンダムが敗退して、セブンが登場。
ここからクール星人を倒すまでは、15年前に制作したブログ版の画像をほぼそのまま使用しているが、セブンがクール星人の円盤へ向かう俯瞰カットと、円盤内の1カットだけ追加制作。
ラストは、セブンが母艦円盤を宇宙空間へ運び去り、ウルトラビームで破壊して終了する。