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OVA版『ワイルド7』歴史を黒く塗りつぶせ!【前編】

『ワイルド7』に関する、いくつかの雑学

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古今東西、オタクという存在は「作品」と共にか、それ以上に「世界観」や「設定」をこよなく愛する生き物である。
それは、それら全てが連結して存在性を構成しているからでもあるが、その設定の中には、作品内で明記されていないケースも少なくない。
しかし、作者の逸話や作品の端から、ファンはそこに流れている設定を嗅ぎ取り汲み取り、作品の存在する世界そのものを愛する、それがオタクというものである。

筆者は1966年生まれで、『ワイルド7』連載では最終章がぎりぎり間に合った程度で、70年代最後半に、慌てて少年画報社の単行本を集め追いついた「少し遅れた『ワイルド7』ファン」であったのだ。
なので、思春期の頃はワイルドマニアの先輩諸兄に、様々な「ワイルドに関する雑学」を教授して頂いては、なるほどなぁと勉強させてもらった記憶がある。

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まず、この飛葉ちゃんのバイクは決してHONDA CB750ではない……

先に述べておけば、望月三起也氏はいい感じで「いい加減」な漫画家である。
作品の謎の根幹を示す伏線を張っても、作劇が転がればそれは捨て去るし(飛葉ちゃんが少年院時代に週に一回脱走を繰り返していた理由はなんだったのか? ワイルドメンバーを恐怖で拘束できるほどの『罰』である「アキレスの踵」とは何か?)銃やバイクの設定なども、時期単位でコロコロ変わるし、下手すれば同じ回の同じページの中でも、コマ単位でバイクの車種が違ったりする(『新ワイルド7』初期では、飛葉の乗るバイクがコマごとに、YAMAHA V-MAXだったりYAMAHAビラーゴだったりした。一時期以降の望月先生が、YAMAHAバイク党だったのは間違いないようである)。

そこでいちいち設定に拘ったり、細部の違いをアレコレ言うのも野暮の極みではあるのだが、「それでも」原作の『ワイルド7』全編を愛するファンの間では、阿吽の呼吸で了解しあう(非公式)設定が、いくつか存在していた。
しかし『ワイルド7』は、ファンによる同人誌や雑誌での紹介以外では、原作者自らが責任を持つ形での設定公式認定は、アニメ化以前はされていなかった。
だからこそ、そんな「いい加減な先生の作品だからこそ」ファンは、原作の細部から読み取れる、細かいディティールを抽出して情報化して共有したのだ。

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例えば解りやすい例を言えば「飛葉の持つ拳銃」「コルトウッズマンスポーツの、バレルを切り詰めたカスタマイズ品」であることは明白だが、ファンならそこで必ず「しかし38口径にパワーアップされている」一節を付属させる。
「この解釈」が間違っていなかったことは、やがて『新ワイルド7』で改めて、飛葉がコルトウッズマンカスタムをメインウェポンで所有するのだが。その銃が38口径であることに、作中で言及されていることからも明らかだ。

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ワイルドマニアなら、ABSキットのウッズマンのバレルを切り詰めたことがあるはず!

また、そこを踏まえた上で「ワイルド7のメンバーに持たされる拳銃は、オヤブンのパイソン以外は基本的に小口径の拳銃が多い。これは全員が射撃の名手であり、対犯罪という目的を考えた時に、周囲に無駄な被害を齎すことなく、確実に敵の動きや命を奪えるレベルの、取り回しの良い拳銃が与えられているからだ」と、ファンは長年(勝手に)解釈してきたのである。
そう考えると、八百がいつも使っている(これもコマごとに違ってる)拳銃は、南部大型自動拳銃なのか、ベビーナンブなのか、そこが論点になることであるとか、世界の装備一式はテルに、チャーシューの装備一式はデカに託されたのだろうとか、「濃いファン同士ならでは」の解釈遊びが面白かったのは事実である。

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パパ南部かベビー南部か。コマによって違うのが味ってものさ!

しかし、作家が一人で原稿用紙に向き合ってアシスタントを使って描く漫画と違い、アニメは何十人という作画スタッフが、統一して設定を共有することがまず大前提だ。なので、アニメ化されるに当たって、それまではあやふやだった設定が、きっちり統一されて整理整頓される事それ自体は、歓迎すべきことだろう。
例えば八百の拳銃が原作ではコマごとに違う件に関して、OVA化に当たっての設定では、はっきりと「南部大型自動拳銃である」と明記された。

こういった設定の公式化は、ファンであれば嬉しく迎えるものである。
だが、この「公式設定化」はとある弊害も生んだ。
その弊害が「ミス」や「誤認識」ゆえの弊害であるのなら、そもそも原作者自身がミスが多く誤認識を招きやすい漫画を描く方なので仕方がないが、それが「アニメを作るスタッフ側の『勝手な都合』で改変された設定」だとしたら?

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