チャーシューバイクBMWR50S説 その1・装備受け継ぎ解釈

一つは、上でも書いたが原作漫画ではチャーシューと世界は早くに殉職して、その後釜として、テルとデカというコンビが加わることになる。漫画の画的にも、拳銃とバイク双方ともに、テルが世界の、デカがチャーシューの装備を、それぞれ受け継ぐことになっているのだが、公式資料ではデカのバイクの方だけは、はっきりR50Sの後継のBMW60/5と明記されているのだ。

つまり(註・もちろんデカもテルもOVA版には登場していない)デカの場合は、漫画版のみをソースに設定が決められたため、素直に画にされているBMWR60/5とされたが、そもそも劇中で「デカがチャーシューの装備を受け継いだ」とは明言されていない為、デカとチャーシューの公式バイク設定に、違いが生じているのだ。

チャーシューバイクBMWR50S説 その2 アオシマプラモデル根拠説

二つ目は、これは(またしても)Wikipediaの誤った記載に関して言及しなければならないが、かつて1972年に模型会社のアオシマが『ワイルド7』のプラモデルを発売展開した。

実際の商品ラインナップとしては、1/12サイズで飛葉のバイクと両国のバイクを、ミニサイズで全員のバイクとセブンレーラーを発売展開して人気を博したのだが、実はアオシマのこのプラモデル展開は、Wikipediaに記載されているような「(テレビドラマ化で)商品化として」企画されたものではない。
『ワイルド7』の商品化は、あくまで「漫画に出てくるバイクの模型化」企画として、ドラマ化とは全く関係なく原形制作等がスタートしたのだ。
それがたまたま偶然、国際放映のドラマ化と時期が重なっただけなのである(それだけ、70年代初頭の『ワイルド7』漫画人気が凄かったことの証明でもある)。
それを証明するのが、模型化されたバイクの車種なのだ。
ドラマ版『ワイルド7』(1972年)は、バイクに関してはSUZUKIとタイアップし、ハンドル形状やリヤカー式スペアタイヤ(笑)等、シルエットはそれぞれ変えつつも、全員のバイクがSUZUKI GT750(シーンによってはGT380)で統一されているが、ドラマとは別個に商品化企画が進んだプラモデル版の方では、全ての車種が原作準拠で、飛葉のバイクは精密なHONDA CB750Kとして、他のメンバーのバイクのミニプラモデルも、それぞれ漫画で登場したバイクの実物車種を、あの時代としては驚くべき技術力で、それぞれ立体化しているのであるが、そこでのチャーシューのバイクのプラモデルは、ちゃんとBMWR50Sだったのである。

アオシマプラモの箱絵。チャーシューのバイクのエンジンがBMWなのがはっきりわかる

(完全に余談だが、この時の1/12サイズの飛葉のバイクプラモデルの出来は当然素晴らしく、キャラクタープラモデル以前に「1/12サイズのCB750K」としての完成度も高かったため見栄えが良く、その為、後年アオシマが版権を得て発売したプラモデルの『鉄人タイガーセブン』(1973年)のスパーク号や、『光の戦士 ダイヤモンド・アイ』(1973年)のサンダー号にも金型が流用されている)

代替テキスト

チャーシューバイクBMWR50S説 その3 SUZUKI GT380存在不可能説

三つ目は「そもそもSUZUKI GT380は『ワイルド7』連載開始時には存在してないだ。
SUZUKI GT380のリリース年は『ワイルド7』のドラマ化や模型化と同じ1972年。
何度も繰り返しているように原作漫画『ワイルド7』の雑誌連載開始は1969年からであり、しかもチャーシューは初回から登場しつつも、上記したように比較的初期に殉職してしまうので、1969年の初登場時にGT380に乗っているという設定は時空を歪めていることになる。
むしろGT380が市場に出回る頃には、既にチャーシューは原作漫画中では殉職してしまっていたという矛盾。

代替テキスト

これら三つの要素をもってして、現在の「チャーシューのバイク設定」に対しては、異議を申し立てるか、遺憾の意を表すしかない。
要するに「旧車クラブの誰もBMWR50Sを保有しておらず、たまたまそこにあったGT380が、チャーシューのバイクとして公式認定されてしまった」そう解釈するしかないし、実際にそうらしい。
仮に望月三起也先生ご自身が、生前そのアニメ公式設定に納得して(いたはず)いたのだとしても、アニメ化の些末な制作事情で、ファンが20年以上も温めてきた設定を、蔑にされた口惜しさは、これはやはり語り尽くし難いものがある。

(ちなみに現在では原作のチャーシューのバイク設定は、BMWR50Sに訂正されているようである。しかしWikiでのチャーシューのバイクの記述はGT380のままである)

代替テキスト
『ワイルド7』公式のバイク紹介ページでは、BMWになっている

オヤブンのハスラー問題

また「さすがにここは無理だよな」で諦めるしかなかった「当時のマニア間設定」では、オヤブンの乗るSUZUKIハスラー250(TS250)に関しても一家言があった。
当時のマニア達は当然のように「ワイルドのメンバーが、何もTS250のような2スト250の『オフロードには便利だけど、パワーもスピードも出ない車種』をそのまま使う訳がない」そう信じ、原作にある幾つかのコマから「オヤブンのバイクは一見ただのTS250に見えるが、アレは250ccのエンジンを直列で二つ繋げてあるから実質は500ccの馬力がある」と解析し、トンデモな説を流し、それが当たり前になってしまっていた時期があったのだ。
まぁ(ここは少し弱気)実際原作の『緑の墓』編ではオヤブンのバイクが、少なくともカスタムされた仕様であることにははっきり言及されているし、そもそも八百のバイクのイモリシステムや、ヘボピーのバイクの後輪の接続方式など、「最初からトンデモなカスタム」が施されていることは『ワイルド7』のバイクではさほど珍しい事でもなかったりするので、この「オヤブンTS250直列説」も、原作終了直後くらいまでの当時では、一応まかり通ったのである。
だが、ことアニメ化において「実際の旧車の音をサンプリングして再現」に関しては、TS250を用意できる旧車クラブでも「それを二つ直列させて出る音」までは面倒が見れる訳もなく、結果チャーシューのバイクと同じく「音がこれしかないんだから」という理由からだろうか、オヤブンのバイクの公式設定は、ドノーマルのTS250ということで落ち着いてしまったらしい。

代替テキスト
仰る通りですオヤブン。トンデモ説は引っ込めます

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