そこでもちろん「君ら東映は、うち(テレビ朝日)の親戚筋なんやから、他局(日本テレビ)を儲けさせるんやったら、ちゃんと筋通して、うちも儲けさせなけりゃあきまへんやないかい」と、口を挟んでくるのがテレ朝流であることは、既に書いておいたはずであるが(笑)
 またもや「その理屈」で、東映がテレビ朝日で製作したのが『ベイシティ刑事』(1987年)

藤竜也のバディ刑事物だけで、ドラマの1ジャンルになっている

 こちらは(ある意味またもや)藤竜也が主役であり、相棒は世良公則が勤める。
 脚本は、まずはテレ朝の『西部警察』(1979年)でローテーションに入っていた日暮裕一を軸にしつつ、柏原寛司、永原秀一、大川俊道トリオもしっかり配置する辺りがなんともまぁ、政治的には理にかなった東映流人事(笑)
 演出も、テレビ畑はこれが初陣になった黒沢直輔をメインで立てつつも、脇でこっそり、村川透を呼んでおくあたり、抜け目がないというべきか(笑)


 「じゃあじゃあ、こっちにも作ってよ!」との、TBSの要請にも東映はしっかり応えます、興行屋だもの。
 こちらは、仲村トオルが出世して、先輩刑事役として抑え役に回り、萩原聖人などの若手を主役に「日本版『ポリスアカデミー』」を狙った(あくまで「狙った」だけ)の『俺たちルーキーコップ』(1992年)なる企画。

日本のドラマで群像劇で刑事ものはさすがに難しかったか

 一応、丸山昇一も脚本参加したり、主題歌がわざわざ「仲村トオルがカバーした松田優作の生前の名曲『ブラザーズ・ソング』」だったりと、「ポスト・あぶない刑事」も狙いつつ、多少あざといレベルで「追悼・松田優作企画」も兼ねてみせるなどなど、東映はのってる時(だけ)は小技を効かせてくるのでありますよ。

 挙句の果てにはフジテレビ
 そもそも『翔んだカップル』(1979年 丸山昇一 相米慎二『うる星やつら』(1981年)『みゆき』(1983年)等のラブコメ漫画原作の映画やアニメを製作してきたはずの、キティフィルムまで参入してきての企画(基本表向きは、キティフィルムに軒先を貸した、フジの局ドラ扱いにはなっている)。
 『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』(1985年)でブレイクした南野陽子と、デビューしたての織田裕二をライバルコンビ物として配置し、ラブコメブーム要素もしっかりとりこんだバディ刑事ドラマ『あいつがトラブル』(1989年)をフジテレビで製作放映した。

当初の企画と、結果的な展開がかけ離れた「企画倒れのドラマあるある」

 このドラマは、一時代を築いた『オレたちひょうきん族』(1981年~1989年)終了の跡を継ぐ形で放映されることになったため、期待も大きかった。
 フジテレビのリサーチ的には、10代に人気が出てきているバディ刑事ドラマを、もっと若いコンビにすることで親近感を沸かせた上で、そこでの主人公コンビを男女にすることで、トレンディドラマ全盛の時代の流れを持ち込んで、そういう視聴者層も取り込もうという、そういう意気込みがあったのだが、まぁ世間はそんなに甘くは無かった(笑)

 『太陽にほえろ!』でいうところのボス・石原裕次郎の役どころにはなんと、萩原健一(アラおひさしぶり)が、どどんと構えてみせて、マカロニから10余年で、立派に成長してみせたところを(いろんな意味で)見せ付けた(むしろ、見せ付けすぎて中盤からはらだの『心臓に病気を持った中年刑事課長・萩原健一が主役の刑事ドラマ』と化していた)。


 文芸陣に関しては、この時期のバディ刑事ドラマのツートップともいうべき実力と経歴を兼ね備えた大川俊道・柏原寛司がメインライターを務めるものの、肝心の演出陣は、『あぶない刑事』で監督デビューしたばかりの一倉治雄や、まだまだ若手扱いだった原隆仁など、微妙な立ち位置を迫られた東映ならではの、微妙な人事で、筋を通しつつお茶を濁す形に落ち着いた。

 そもそもが、つい一ヶ月前までは、かつて社会現象を起こしたほどの、お笑いバラエティをやってた時間帯で、『あぶない刑事』ブームに乗っかっただけの、後だしじゃんけん感満載のタダノリ企画で、しかも肝心のハコは変化球タイプ。オマケに舵取り会社が、本職のドラマ屋ではないとくれば、どうしたって結果がついてくる道理もない。南野陽子など、自慢のロングヘアーをばっさり切って、イメチェン・役作りに挑んだが、結果は惨敗。
 この番組でフジが得た物があったとするならば、「織田裕二に、刑事役の経験値がついたので、以降刑事が演じられるようになった」的な、「あっても無くてもどうでもいい目蒲線(by目蒲線物語)」のような代物。
 まぁ「それ」が、やがて「某・大ブーム刑事ドラマ」の「アレのソレ」に繋がるのだから、世の中っていうものは、分からないものであります(無難なしめ方)

 こうして、結果的に全民放各局のゴールデンタイムに「ポスト『あぶない刑事』のバディ刑事ドラマ」つまり「自社製品のバッタ物ドラマ」を、威風堂々と送り込んだ東映であったのだが。

次回は『犯罪・刑事ドラマの40年を一気に駆け抜ける!(70年代をナメるなよ)』Part11

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