前回は『犯罪・刑事ドラマの40年を一気に駆け抜ける!(70年代をナメるなよ)』Part9

 「他人(主に東宝)が広げた風呂敷で勝負する」で、いつものように東映で企画が成り立った『あぶない刑事』(1986年)だが、松田優作主演や相米慎二監督作品で(いやがおうにも)鍛え上げられ続けた丸山昇一脚本は、ここでものっけから「いちいち説明ぶった台詞回しや、べたべたしたトークで関係性を描写しない」を発揮。後年、コントのネタになるレベルの「ユージ&タカ」の息の合ったコンビぶりを描き、第一話『暴走』は、にっかつロマンポルノのクィーンだった寺島まゆみをゲストに迎え、タカとユージの「犯罪者を逮捕することだけを考える猟犬ぶり」を、必要最低限の台詞と、即断即決の行動力でインモラルに描きつつも、それをオシャレで粋なプロのスタイルと被らせるという「新しい概念としてのあぶなさ」を確立。
 その脚本を活かしきった長谷部安春監督の、相も変らぬシャープな演出で、第一話は視聴率も14.4%と好スタート。
 その後も、脚本は柏原寛司、大川俊道、峯尾基三、永原秀一、演出陣は、村川透、西村潔、手銭弘喜といった、いつもの面子のいつもの調子であったが、なぜかなかなか、視聴率は好調20%前後をキープして、結果として、『あぶない刑事』は大ヒット社会現象ドラマの仲間入りを果たした。

「売れたら、とにかくガンガン畳み掛けて、一気にドカンと稼いじゃおうぜ!」
 『仁義なき戦い』シリーズ(1973年~)で、実録ヤクザ・任侠映画が流行れば、何十本でもヤクザ映画を小屋にかけ続け、『仮面ライダー』(1971年)が流行れば、民放全局のゴールデンタイムの30分を変身ヒーロードラマで埋め尽くす、それが東映流であるのは、もはや興行屋の伝統(笑)
 そんな東映がこの好機を逃すはずもなく、また、今まで語ってきた歴史的にも、この「ちょっと小粋(笑)でオシャレ(笑)なバディ刑事ドラマ路線」で東映に追従・対抗できる他社がいるわけでもないので、ここで東映さん、一気に有頂天に上り詰めます!(笑)

さすがに21世紀まで続くとは思わなかった伝説になってしまった『あぶデカ』

 まずは本家「通称・あぶでかシリーズ」は文芸も演出陣もそのままに、主役刑事コンビを、時任三郎永島敏行に入れ替え、基本コンセプトを「潜入捜査」という、変化球的な設定で二打席目のヒットを狙った『あきれた刑事』(1987年)を挟みつつ「どうやらやっぱり、こっち(柴田&館コンビ)でないと視聴者には受けないらしい」という目分量で後戻りして、『もっとあぶない刑事』(1988年)『またまたあぶない刑事』(1988年)『もっともあぶない刑事』(1989年)『あぶない刑事リターンズ 』(1996年)『あぶない刑事フォーエヴァー』(1998年)等々、金沢の金箔職人のように伸ばせるだけ伸ばしながら「売れてるうちはとことん売る」を、延々と続けることになるのである(一応最終作は、柏原寛治脚本・村川透監督の黄金コンビの映画『さらば あぶない刑事』(2016年)か)。

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