――本当の意味での映像派というのは、一見全てがセオリーどおりにしか見えないけれど、大事なのはそこで、なぜセオリーなのかという部分へのエクスキューズだと思うんです。映像のセオリーというのは、人の生理と直結していますから、そこから外れるというのは、ともすると人の生理と乖離してしまうことなんですよね。

安藤 そのとおりなんですよ。だから僕のファンに言わせると、僕は実相寺とも円谷映像とも違うよと。違って当たり前なんだよね?そんなのさあ。僕はだって、どっちも認めてないわけだからさ。

――例えば『あなたはだぁれ?』では、それまでのエピソードとは違って、照明のコントラストが物凄く強調されて、光と影の演出が印象的でしたが、実際の撮影は、ほとんどが団地の野外ロケだったわけですが、照明設計は、各カットごとに安藤監督の側で設計指示されたんですか?

安藤 あれはちゃんとカメラを覗かせてもらってたね。撮ったシャシン(カット)の中に、陰影がなかったら駄目なわけじゃないですか。ある意味では嘘だらけになるんだけど、映像の流れの中では、それ(カットごとの光源設定)はやらなきゃいけないことで、陰影を表現するんだったら、各カットごとに、アップだろうがヒキ(ロング)だろうが、そりゃちゃんとやらなきゃいけないわけで。僕はどっちかっていったら、映像にうるさい方の監督なもんで(笑)

――わかります(笑) 先ほども申し上げましたが、パンニング(主観)とドリー(客観)の使い分けが、コンテ段階から非常に細かく設定されていて、観客の主観の誘導が緻密な作品でした。

『ウルトラセブン』『あなたはだぁれ?』より

安藤 うんうん、カット割りの基本設計なんだけどさ。どこまでが主観で行って、どこから客観に切り替わるか、要は見ている人には、それが分からなきゃいけないわけだよね。映像のモンタージュって、いつでもその問題があるんですけど、それごちゃごちゃにしちゃったら、何撮ってるのか分かんなくなっちゃうよね。

江戸っ子口調とべらんめぇ節が、もはや止まらない安藤達己談話! 他や今では絶対に聞けない「円谷プロの実態」がどんどん繰り出されます。そんな安藤監督を、円谷プロに引き留めた力とは? 次回「安藤達己と『ファイヤーマン』と円谷粲と」さぁみんなで読もう!

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