一方、話題をパゴスに戻すのであれば。
パゴスは上記したように、Q時代は人気メジャー怪獣だった痕跡が伺えるが、その着ぐるみ自体が、ネロンガ・ガボラ・マグラーへと次々改修されたのは、これはファンなら誰もが知っている事実だろう。
パゴスについて、もう一つ解っている面白い事実がある。
『ウルトラマン』終了から半年を経て製作された『ウルトラセブン』(1967年)であるが、こちらも(今までの評論解説にも書いたように)企画が紆余曲折した作品である。
『ウルトラアイ』『ウルトラマンジュニア』と経過した企画の中では、その初期からカプセル怪獣の存在が明記されていた。そのカプセル怪獣、もちろん放映されたセブンでは、ミクラス、ウィンダム、アギラの3怪獣が登場するのであるが、企画初期においては、このカプセル怪獣は、前作までに登場した人気地球怪獣を、主人公が自在に操って、宇宙人や宇宙怪獣と戦わせるという設定になっていた。
実はその「前作までの人気怪獣」として、カプセル怪獣の案には、レッドキングやゴモラと並んでパゴスの名前も挙がっていたのである。
実際、真偽は定かではないが、セブン32話『散歩する惑星』で登場するカプセル怪獣は、アギラではなくパゴスだったとするシノプシスもあったと伝え聞く。
『ウルトラQ』終了後2年経ってなお、円谷はパゴスを人気怪獣として扱っていた。
それは、現代の平成に生きる筆者達にとっては意外に思うしかないが、それが当時の子ども達による人気支持が実際に強かったからにせよ、円谷自身の思い込みゆえであったにせよ、時の流れを強く感じさせてくれるエピソードである。
送り出す側の思惑やマーケティングでは、決して時代を超えたキャラクターは生まれるわけではないのだという、このパゴスに関する一連のエピソードは、今一度、閉塞しつつある現代の子ども文化のキャラクター産業にとっても、学ぶところが多いのではないのだろうか。