出渕 アレ激しいですよね。そもそも『怪奇大作戦』(1968年)だって(アタリとハズレの)落差が激しいですからね。
(ほぼ二人同時に)『ジャガーの眼は赤い』とかね(笑)
出渕 もう『ジャガーの眼は赤い』は、見ていてどうしてくれようかと思いましたよ(笑) ウルトラセブンのサンドイッチマンが出る、ってネタくらいしか語るとこがなあ(笑)
――でも『ジャガーの眼は赤い』は、今の時代に、VR技術とかを取り入れてリメイクしたら、結構良い作品に化けるかもしれませんね。
出渕 (『怪奇大作戦』は)『ゆきおんな』が最終回でいいのかよとかね(笑) ストレートな怪談をやりたかったんだなとは理解できるんだけど。
――『怪奇大作戦』が『怪奇大作戦』たるアイデンティティって、ある意味社会派的なテーマを必ず内包していたというところがあったと思うんですけど、近年のリメイクは、そういった社会派要素を排しちゃったんで、『怪奇大作戦 セカンド・ファイル』(2007年)も『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』(2013年)も、ただの『世にも奇妙な~』みたいな作りになっちゃってる気がするんです。僕がやはり親しくしてもらっている映画評論家に、三留まゆみさんという女性がいらっしゃって、僕も彼女も反安倍政権的(インタビュー収録時は、安倍晋三氏が首相の政権時であった)な、リベラルな立ち位置で発言や発信を行っているんですけれども、出渕さんも思想的には同じような立ち位置とお見受けしているんです。そうした僕たちの側から見た時に不思議だなと思うのは、ネトウヨと呼ばれる「自称・保守」といった人たちは、いったい何を保ち何を守ろうとしているのか、全く理解不能なんですよね。
出渕 思想的心情は各個人にあるので、それに対してどうこう言うべきじゃないんですが。ただ(ネトウヨ的な)あの人たちは本当の意味での保守じゃないのではと思ってます。僕はどちらかといえばリベラル寄りですけど、保守は保守で立派な人もいると思います。
――僕は文化保守で、政治左翼なんですよね。
出渕 僕は、中道左派って感じかな。
――なぜこんな話になったかというと、先ほど話題に出てきた『怪奇大作戦』って、そもそも社会派的な、それも左派的なメッセージ色が濃い作品だからゆえに、名作になったドラマであると思うわけです。『24年目の復讐』(脚本・上原正三)とか。それがリメイクになると、そうしたテーマ性が喪失されたものしか出てこないというのは、今の右傾化の時代では、作れないのか、受け入れられないのかという。
出渕 (今のリメイク版では)『かまいたち』(脚本・上原正三)に勝てませんよ(笑) (『かまいたち』は)いやアレすごい。今観てもすごいですよね。
――『怪奇大作戦』って、上原正三さんが、ものすごい速度で才能を開花させた作品ですよね。
出渕 上原さんも東映に行きはじめて、後半とか、そういうアプローチは控えてる感じになっちゃったけど(笑) やっぱ『イナズマンF』(1974年)とかはよかったんですけどねぇ。デスパーシティの話とかね。
――それまで伊上勝さん一人で文芸を回していた東映ヒーロー物ジャンルに、「テーマ性」という物を持ち込んだのは、『イナズマン』(1973年)後半からの上原さんと、『人造人間キカイダー』(1972年)後半の長坂秀佳さんだと思うんですよね。
出渕 『キカイダー』の、終盤になっていく過程というのはね。主人公が指名手配になったり、面白かったですね。でも長坂秀佳さん、市川森一さんもそうだけど、もうちょっとこっちの、子ども番組というか特撮ものとかをやってほしかったけど、一般大人向けの方に行かれてしまいましたね。それはそれで楽しませてもらってるけど、残念といえば残念。戻ってきてほしかったなあ。
次回は「出渕裕ロングインタビュー14 出渕裕とネトウヨ跋扈とミリオタサヨクと」