アギラ バトル版 2009年

バトル版アギラの商品状態
猫背や肩のたるみ等は着ぐるみのとおりのサイドビュー
バトル版着ぐるみに忠実なリアビュー

最後に紹介するのは、発売も着ぐるみ造形も最後の、2009年バトル版のアギラソフビ。
平成アギラは、面白いように、着ぐるみの新規造形の方向性が、ウィンダムとミクラスの中間を狙って完成している。
ミクラスほど、ゆるキャラ系にリファインはされていないが、セブン版よりは造形がかっちりしていて、その代わりデザインが今風に整理されてアニメ調とでもいうべきか「キャラが起って」強調して出来上がっている。
セブン版の特徴であった「眠たそう」「どこかやる気のなさげな表情」が的確にスポイルされて、まとまった画と造形で構築されたのである。

映画劇中、カプセル怪獣三大揃い踏みシーンより。暗すぎて何がなんだか分からない。

実際は、映画内でのアギラの出番は多いとまでは言えず、とりあえず「往年のカプセル怪獣が三匹揃いました」イベントのアリバイのような立ち位置で出演したため、くっきりと着ぐるみが確認できる映像資料が、宣伝用のスチルぐらいしか存在せず、劇中では豪雪と吹雪と暗い画面での出番に終始している。

映画のスチルより。この写真ぐらいしか資料がない。

それでも一応、スチル等を観ると、あのアギラが目元がキリっと強気な目つきになって、ハンサムになっていることがよくわかる。
塗装の方は、劇中だと割とセブン版に近い色使いであるのだが、バトル版ソフビだと、かなり濃い茶色系へと色味が替えられているので、そこで違和感を覚えるか納得するかはユーザー次第だろう。

舌まで造形されているのはさすがである。


この造形は着ぐるみを忠実に再現しているので、そういう意味で「平成アギラのソフビ版」としては及第点の出来だろう。
実はバンダイのウルトラ怪獣シリーズは、既にこの時期、中国生産工場体制の、中国人件費高騰によってピーク時のクオリティ(特に塗装)が維持できなくなっており、僅か数年前の『ウルトラマンメビウス』辺りの怪獣ソフビの再販でも、単なるバージョン違いではなく、気付かれない箇所でコストを落とした仕様にグレードダウンしていた。
そういう意味で、シリーズはシリーズ自体が利益を維持できなくなって、2013年に終了し、入れ替わるかのように、サイズと塗装が、ミニフィギュアバブル時代の『ソフビ道』レベルになってしまった「ウルトラ怪獣500」シリーズが始動するのであるが、その「歴史の結果」を踏まえると、この時期ウルトラヒーローシリーズでも、映画ボス怪獣や映画オリジナル怪獣ではない枠で、この映画からアギラとグビラが、そして何故か(シリーズ担当の最後の意地を見せたか)『帰ってきたウルトラマン』(1971年)枠からアーストロンが選ばれたということは、シリーズを尻すぼみの印象にせずに、有終の美を飾ったと言い切って良い完成度に仕上がっている。

新旧のアギラ。体色の濃さよりも、眼の造形の違いがはっきりしている。

上でも書いたが、バトル版のアギラは劇中と違う体色をしており、しかしクリーム色から赤茶色に基本色が変わっただけで、塗り分け等は手を抜いていない。そういう意味で色数が少ないからこそ商品化の機会に恵まれた、アギラとアーストロンは説得力も納得もあるのだが、ここへきて、歴代昭和ウルトラ怪獣の中でも、色の塗り訳難易度がかなり高い筈のグビラが選ばれたことは、バンダイのウルトラ怪獣シリーズ30年の歴史を閉じるにあたっては、本当に伝説的なシリーズとして名を残したと言えるだろう。

今も書いたが、バトル版アギラのソフビは、パーツ数も可動範囲も、造形の再現性も、セブン版と双璧を成しており、元の着ぐるみが異なっている前提を受け入れれば、ちょっと商品独自テイストが入ったセブン版としても見えないことはない程度には完成度は高い。

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