――若い子は『巨人の星』の、タイトルは知っていても、読んではいないでしょうね。
平松 一つに、喩え話がすごく難しくなってきていて。いろんなことを自分の言葉で言っても伝わらないことは、彼らがわかる言葉で言わなきゃいけないって思うから、いろんな喩えをするんですけど、それでも、やっぱりね。自分の中にある「昭和のもの」が出そうになって、仕方がないんですね(笑)。で、彼らに合わせたつもりで、『ドラゴンボール』(1984年~1995年)だったり『NARUTO -ナルト-』(1994年~2014年)だったり『ONE PIECE』(1997年~)とかの話をするんですけど、やっぱりそれでも、通用しない時があるんですよね。『ドラゴンボール』とか『NARUTO -ナルト-』とかでも分からないって言われると、もう僕なんかだとお手上げになってしまう(笑)。僕がよく使っているのは「言葉というのは、何か投げかければいいわけじゃなくて、相手の心の中に,ねじ込んでいくぐらいじゃないとダメだ」っていうのがあるんです。だから、喩えはあまり良くないかもしれないんだけど、『ドラゴンボール』のかめはめ波のように、打ちっ放しじゃだめなんだ。『NARUTO -ナルト-』の螺旋丸のように、まず相手にゴンと渡して、そこから相手の胸の中にねじ込んでいくぐらいのエネルギーを持って、届けようよって言うと(聞いていた)半分ぐらいがポカンとするんです。
――『NARUTO -ナルト-』の喩えでも、ポカンとされてしまいますか……。
平松 はい、だから、そうすると、じゃあどうしようかなと、最新作とか、結構アンテナを張るんですけど、同じようなものがいっぱいあるなって印象にしかならないんです。昔ってめちゃくちゃバラエティに飛んでいて、どれを観ても面白かったんですけど。今の時代になってきて、僕がついていけないっていうのもあるんでしょうけど。だから(新作アニメが)十本あったら二本観ればもうそれでいいなっていうのはありますよ。そんなことばかりなので、そんな見方をしてたら、喩え話ができなくなるけど、いいのかな……って不安はありつつ教えてますね。
――そこは、本当平松さんから。そういう言葉が聞けて、僕は、すごく嬉しいんですよね。今平松さんは、ガジェットリンクという一国一城の主として、現代の声優ビジネスを全否定するわけにはいかないお立場な上で、僕も若い時に接するチャンスを頂いた、今も大御所の声優さん達と、凄く近い価値観でこの時代も生きてらっしゃる。声優は俳優の一部であり、それは舞台やカメラの前の俳優さん達への、ある種のコンプレックスが素敵なエネルギーになって、ご自身を築いていた声優さん達は多かったんですよね。
平松 そうですね。
――ちょうど平松さんが、思春期を迎える頃に観ていたアニメとかで言えば、愛川欽也さんとか大平透さんとか。顔出しの俳優さんでもあり、声優さんでもあるって方が大勢いらっしゃって、そういう中で、声がいいから、お前ちょっとアテレコやってよ、で声優業もこなしてたっていう俳優さんが多かった時代があって。あの頃、顔出し俳優さんと声優さんとの間のボーダレスって、映像界全体の良い励みになったじゃないかなって思うんですよね。
平松 そうですね、今のボーダレスとちょっと意味合いがちょっとちがいますよね。楽なんですよね。
次回は、ようやく『重戦機エルガイム』と『らき☆すた』の、平松氏二大代表作の話になります! 平松氏を知る方は、いえ、知らない方でも必読です!
SEE YOU AGAIN!「平松広和インタビュー・4『エルガイム』と『らき☆すた』と」
『声優・平松広和の私道 Mk-2』(Voicy)
『平松広和の私道』(YouTube)
取材協力 (株)ガジェットリンク