ウルトラが初めて描いてみせた「戦争」

千束北男

飯島敏宏

的場 徹

「平和な夜だった。気温も快適湿度も快適。さすが夜更かしの東京も、すやすやと眠っている夜だった」

「防衛基地から連絡があった。東京上空に強烈な電波を発する物体が飛来したので警戒中、突如電波を感じなくなったというんだ。パトロール中のハヤタ君に、ただちに防衛基地に急行してもらったんだが……」

「キャップ、こちらハヤタ。電波の止まった位置は北緯35度43分、東経139度38分」

「やや! 東京のど真ん中じゃないですか!」

「御殿山です、科学センターのある御殿山が、怪電波の消えた地点です」

「東京の街をアラシ隊員が科学センターへ急ぐ間に、羽田を飛び立ったジェット機が、マッハ5の驚くべき速度で走る火の玉を見たという報告が入っていた」

「ホシノ君、科学センターに異変が起こっていると、本部へ連絡してくれたまえ」

「奇怪な奴……いったい何者だろう? ホシノ君、手ごわい相手だ。いったん退却した方がよさそうだな……」

「防衛会議が招集され、宇宙人らしい者の正体、攻撃の方法に論議が集中したが、宇宙船の所在もつかめない現状では、どうにも結論が出なかった」

「ムラマツ君、それでは科特隊として何か策はあるのかね?」

「彼等と話し合ってみたらどうかと考えています。真面目にそう思っているんです」

「宇宙船の在り場所さえ確認できれば、ただちに核ミサイルはげたかを打ち込むんだが……」

「はげたかで破壊できるという確信がおありですか? もし、最新兵器のはげたかが通用しなかったら、そんときはどうするんです!? だからこそ、まず連中の欲しい物を知り、もし与えられるもんであれば与えて、そして帰ってもらうんです」

「会議はさらに夕刻まで続けられたが、結局これといって確実な方法は見当たらず、ムラマツ隊長の意見が一応採用された……。宇宙人と話し合うという重要任務を与えられたイデ隊員が、科学センターに向かう一方、万一に備えて最新兵器はげたかの発射準備が進められていた」

「あの……話がこじれたら頼みますよ?」

「こじれるほど通じりゃたいしたもんだ」

「ごもっとも……いよいよ一人か……ウン男の子だ、がんばろう! キ……キエテ……コシキレテ……あっ!」

「囮だな? 二人目が本物だ! え? あ!」

「ちくしょう! どれが本物だ!」

「キミノ宇宙語ハ、ワカリニクイ。ダカラ我々ハ、コノ男ノ脳髄ヲ借リテ君達ノ言葉ヲ使ウ」

「君たちが地球にやってきた目的はなにか」

「我々ガ、君達ガ地球ト呼ブ、M240惑星ニ来タ目的ハ……」

「彼らの星バルタンは、ある発狂した科学者の核実験が元で爆発してしまったのである。宇宙旅行中だった彼らは帰る場所を失い、仕方なく彼らの生存できる天体を求めて、地球の近くまできたのだ。あいにく宇宙船の重力バランスが狂い、修理をするために立ち寄ったというのであった」

「私の友人や、警備員や防衛隊の人々の生命を奪ったのは?」

「生命……分ラナイ、生命トハ何カ」

「君たちはこれから、なにをするつもりなのか」

「我々ノ旅ハコレデ終ワッタノダ。地球ハ我々ニトッテ住ミ良イ所ニナルダロウ。我々ハ地球ニ住ムコトニスル」

「いいでしょう。君たちがこの地球の風俗習慣に馴染み、地球の法律を守るのなら、それも不可能なことではない」

「話ハ終ワリダ。我々ハ地球ヲモラウ」

「ああ!」

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事