――以前樋口さんが語られた記録や資料などを調べますと、そもそも『イデオン』のメカニックデザインは「戦車に乗る自衛隊員と、タンクローリーの運転手と、幼稚園バスの運転手の、三人の若者が、地球がピンチになると出動し、それぞれの車両が変形して合体して、ロボットになって戦う」がベースにあったとお聞きしています。
樋口 それは僕が考えた設定です。プレゼンをするのに“何か”ないと描けないじゃないですか。だから最低限シノプシスは作るわけですよ。それに合わせて画を描いて、トミーにプレゼンするんですが、その前に山浦さんとトミーの高橋靖さんに事前プレゼンをして通って、じゃあ次はちゃんとしたプレゼンをしようとした時に、サンライズは富野(由悠季)さんを連れてきて、こちらは、トミーの社長さんや専務さんを揃えるわけですよ。そうして全員揃ったところで僕がプレゼンしたわけです。で、終わって帰る時に山浦さんから「樋口さん、それちょっと、一回預かっていいかな?」と言われて、その時に富野さんが「ちょっとコレ、僕、弄っていいですかね」って言われて、「あ、どうぞ」って言って渡した覚えがあります。その後一ヶ月ぐらいして、サンライズから(『イデオン』の)設定書が送られてくるわけですよ。その時、僕はちょっと頭に入ってこなかったんですよ。「なんだろう? これ」と思って。それが最初の印象ですね。
――私も当時まだ中学生で、とても難解な印象を、放映された『イデオン』からは受け取りました。
樋口 だって僕はあの当時、せいぜい小学校一年生ぐらいの子どもが観て解る話のつもりで、あのシノプシス作って絵を描いてますから、そこに急にあの話が入ってきても、「あれ?」となってしまいましたね(笑)
――突然の質問ですが、『イデオン』放映当時、樋口さんはイデオンの内部透視図なども描かれていらっしゃいましたか?
樋口 はい、描きました。でも、それは最初にデザインした時よりだいぶ後でした。アニメがスタートするころに、富野さんから「これ、頭の中の広さはどれくらいかな」と聞かれたんで「四畳半ぐらいかな?」というようなやり取りがありました。