そしてまた、本話を再現するときに苦慮したのがアボラスの泡の表現。
色々素材や方法論を変えてためしてみた結果、100均ショップで購入したムースボトルに、ボディシャンプーを水で薄めた液体を入れて噴射した泡が一番それらしいと判断したので、演出ではそれを使用することにした。
スタジアムとアボラスの泡。
本話を再現する上で懸案だった問題が(一応の)解決を見たことで、再現特撮の撮影に取り掛かった。
まず最初のカットは、疾走する科特隊専用車。
後述するが、本話から科特隊専用車に関しては、ポピニカビーグル5版を使用していくことになる。
今回はこれを実景に合成してカットを作成した。
続いては出現するバニラ。
本話での特撮夜景は、本編を見る限りでは青空ホリゾントを使用した、擬似夜景的な表現であったので、筆者の再現特撮もそれを踏襲して、青空背景のまま、露出と照明で夜間シーンを再現することにした。
バニラが暴れるセットは、手持ちのミニチュアの中から、なるべく郊外をイメージさせる建物を選択して配置。
小型ビートルの攻撃が描写されて、シーンは昼間に移る。
アボラスが現れたセットは、都心のビル街をイメージして構築。
初期ウルトラでは、怪獣がビル街に現れたシーンでは、怪獣の手前にビルが配置されることも多かったため、意識的にアボラスとカメラの間にもビルを配置して撮影した。
アボラスの泡は、口から吐かれる物はフォトショップでの描画で、ビルを包み込む泡は、前述のムースボトルの泡を使用している。
やがて、競技場で引き寄せあうように向き合うアボラスとバニラ。
照明塔をカットごとに位置ずらしをすることで、カットごとに競技場の面が変っているように演出している。
バニラとアボラスが、くんずほぐれつで倒れこむカットでは、実際にセットを破壊して撮影しているが、セットは最初から一面しか作っていなかったために、コンテ段階であらかじめ「背景の観客席が壊れているカット」と、「壊れていないカット」をより分けて、先に壊れていないカットを撮影し、全てが終わってから、セットを破壊して、それが背景になるカットを撮影した。
(ちなみに、この撮影でセットが破壊されることは事前にわかっていたため、『残酷!光怪獣プリズ魔』や『ウルトラ五つの誓い』は、本話よりも先に撮影されることになった)
その結果、背景には二種類の観客席が存在することとなり、競技場でのコンティニュティにおいて、背景の多様性が増す効果を生み出した。
競技場でのアボラスとバニラの対決。
アボラスの泡、バニラの炎は共にフォトショップの描画。
バニラにとどめを刺したアボラスの泡は、これはやはりムースボトルの泡。
そしてウルトラマン登場。
肉弾戦による激しい戦いの末に、スペシウム三連発でようやくとどめを刺す。
筆者にしてみると、なんとかようやく切り抜けた感が強いが、皆さんには期待通りの出来を提供できただろうか?