ケムラー

ケムラーはバンダイの旧ウルトラ怪獣シリーズのソフビを二体用意して、片方はカスタムしたもので撮影に使用した。

このケムラーは、シリーズ第二期の1987年に発売されたのだが、実は歴代バンダイ怪獣ソフビの中では、原型が最古参だったりする。

というのも、このケムラーのソフビは、原型は70年代後半にポピーが商品展開していた怪獣ソフビシリーズの「キングザウルスシリーズ」でのケムラーの原型を、そのまま流用して使っているからだ。

だからバンダイ怪獣ソフビとしては1987年製ではあるが、原型で言うとどのバンダイ怪獣ソフビよりも、一番古い商品ということになる。

キングザウルスの原型を流用したバンダイ怪獣ソフビというと、他には『ウルトラマン80』(1980年)の怪獣・ギコギラーが挙げられていた時期があったが、実はそれは全くの虚偽情報であり、両者のソフビを並べると、尻尾の向きやらいろいろ違った原型で作られていることが、今ではソフビマニアには常識になっている。

さて、そんな古株原型のケムラーであるが、なかなかどうしてかっちりとした出来具合。

背中の甲羅は閉じた状態なので、派手さこそないものの、高山怪獣独特のアンニュイな表情といい、立体把握が難しい頭部の形状といい、しっかりした歯のモールドと共に、今の目で見ても、充分評価に値する出来。

実際のケムラーの歯は、実はこのソフビのような、四角い上下の歯ではなく、トゲ状の歯が、下あごに散見されるだけなので、この造形は間違いなのだが、このソフビの歯はこれはこれで、ケムラーらしさの演出に一役買っている。

というか、このキングザウルスシリーズ。

テレスドンやぺスターやキングジョーは、見方によっては現行のバンダイ商品よりも出来が良いし、バンダイシリーズで未発売のテロチルスやリッガーやゴルドン、ムルチやガランなどは、当時の原型をそのままで(2013年までの)旧バンダイウルトラ怪獣シリーズに加えていたとしても、きっと遜色のない出来だっただろう。

ケムラー通常

そんな良い出来のケムラーであるが、一応、撮影に使用するにあたっては、一つ難点があった。

劇中でケムラーは、背中の甲羅を頻繁に開け閉じするのだが、ソフビは閉じた状態でしかないのだ。

確かにケムラー自体、甲羅を閉じた状態と開いた状態は両方スタンダードであり、そこからソフビという商品の性質やコストを考えると、わざわざ開いた状態で造形せずとも、閉じた状態を選択するのが自然なのは理解できる。

だからだろう、歴代のマスプロソフビにおいてケムラーは、ブルマァク版も、キングザウルス=バンダイ版も、全て甲羅は閉じた状態で造形されている。

しかし、逆を言えば、ケムラーを描写するのに甲羅が開いた状態もまた必須であり、それになにより、ケムラーという怪獣のビジュアル的な魅力が、かぱっと開いた甲羅の内側を彩った、極彩色のパターン模様であることも明確な事実。

というか、クライマックスのマッドバズーカに至るシーンでは、甲羅が開いた状態でないと、演出が成立しないという問題は見逃せない。

ならば、ないものは作るのが市川大賀流(笑)

というわけで、同じバンダイのケムラーソフビを二体用意して、片方を甲羅開きVerへとカスタムすることになった。

作業自体は、述べるほどでもない工程でカスタムされている。

通常ソフビのケムラーの、甲羅だけを丁寧にアートナイフで切り取って、ボディ背面にぽっかり空いた大きな穴をエポキシパテで埋める。

硬化したら、さらにそこにエポキシパテで、背中の心臓部を造形して、後は甲羅の裏にカラーパターンを塗装して、ボディ背面を通常ボディと同じ色で塗装するだけ。

このケースだと、ソフビのボディ塗装色を忠実に再現しなくてはいけないが、どうしても同じ色が調色出来ない場合は、いっそのことイメージ優先で色を作って、その塗料で、通常版も含めてくるみ塗装をしてしまえばいいのである。

だがまぁ今回は、割とソフビ版のボディの色に、そこそこ近い色が調色出来たので、それで甲羅開きVerケムラーの背中だけ塗装している。

また、甲羅の内側のカラーパターンは、スチルを参考にして、セールカラー、イタリアンレッド、キャラクターブルーの三色を、グレー系の色で彩度を落としつつ、パターンを考慮して塗装している。

ケムラー甲羅開き

その他では、通常Verと甲羅開きVerの両方に、共通した追加塗装を施した。 目を再塗装して、体表各部に墨入れを施した上で、後は全体に、つや消しスプレーを吹いてある。

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