前回は「『シン・機動戦士ガンダム論!』第13回『ガンプラを語り尽くせ!・5』」
インフレを起こすガンプラ
MGとHGUCのコンセプトの違いは、MGが「ガンダムとザク」から始まったのに対して、HGUCは「ガンキャノンとギャン」から始まったことでも象徴的であろう。HGUCは当初からコレクション性を売りにすることに決めていて、この“コレクション性をあえて打ち出す”商品カテゴリの場合、バンダイが“シリーズ初動から、あえてマイナーキャラをラインナップする”というのは、他のフィギュアシリーズの「S.H.Figuarts」や「ULTRA-ACT」や食玩フィギュアシリーズなどでも定番であった。
MGシリーズは、なまじ「究極のガンプラ」と謳って始めてしまったからか(それでも、さらに大スケール高密度のパーフェクトグレード・PGが1998年に始まったから、少し肩の荷が下りて商品開発ペースが上がったというのはあるだろうが)、価格も初期の頃は2000円代だったものが、徐々に大型MSなどで、4000円、そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(以下『逆襲のシャア』)』(1988年)のMG版サザビー(2000年発売)では8000円と高騰してきて、2000年代中盤には4000円代がディフォルトになるばかりか、2010年に発売された『機動戦士Zガンダム(以下『Zガンダム』)』(1986年)のラスボス、ジ・Oに至っては、とうとう大台にのって12000円という価格をはじき出してしまった。
そうなると、いや、既にHGUCという廉価版のコレクションタイプが主流になり、クオリティも「1/144サイズのMG」に近づいた状況では、ガンプラユーザーのMGへの評価も厳しくならざるを得ない。
現代の基準で見ると確かに、初期MGのガンダムやザクは、劇中のイメージと違うだけではなく、関節の保持力に問題があったり、可動範囲が(当時はそれでも、驚愕のポージング範囲だったが)まだまだ詰めが甘いなど至らぬ点もあり、一方で高額大型のサザビーやジ・Oなどは、パーツ分割が大味であったり、細部の出来が甘かったりするのも事実。
しかし、ガンプラでは2000年代からは「MGで果敢に挑戦した新技術や新機軸が、HGUCにフィードバックされる」テンプレートが出来上がっていたのも事実なので、MGは今でもガンプラのフラッグシップとして、存在価値を誇り続けている。