例えば、現在まだ感染爆発の最中にある新型コロナウィルス問題。
これが、この先も延々と「感染爆発とまんえん防止のいたちごっこ」が続くのか、どこかで決定的なワクチンや治療薬が出来上がり、人類が勝利するのか、それとも人類の文明と科学が押し負けるのか。それはせめて見届けておきたいという思いは強いのですが、この戦い、当初なめてかかった人類の予測よりは、かなり長い戦いになるかもしれません。最悪、私の生きている間に、決着がつかないかもしれない。そう思うぐらいには、私も還暦が近づき、残念な思いをするようになってきました。
また、ロシア対ウクライナの戦争もそうですし、愛国者が詭弁に走って狼狽している、統一教会というカルト宗教と自民党の癒着の疑惑もそうですが、それらは筆者が生きている間に解決するのか。そこでは常に「もしも、今まだ筑紫哲也氏が存命だったら、何を述べただろうか」というifへの傾倒も併せて、人の一生というものは、起承転結に収まるとは限らないというものなんですよね。

それが、あらかじめ作劇上の必然や、キャラを起てる前提の枠組みなどがあれば、事件や騒動の発端から解決までをしっかり描き、その顛末の最期を主人公は見届け、読者の中にある謎も全て解けて溜飲も下がり、カタルシスがある終わり方をするのでしょうけれども。

筆者の場合、この歳になりますと、「今〇〇氏が存命だったら何を送り出していただろうか」「どうリアクションしていただろうか」を考える機会が多くなり、数多くの敬愛する偉人たちが、鬼籍に入られた状態で今を過ごしているのです。
そうなると、自身のことととらえても、今後の残り人生で結末まで見届けられる謎や問題の数も限られてくるわけです。
敬愛する市川森一氏も仰っていました。

「視聴者に対して『こう生きよう』と語るドラマは害悪だと思うんです。それよりも、人間にはわからないことがたくさんある。判断のつかないことのほうが多いんだ、そういうことを早いうちに知っておく。たくさんの謎を生きることが普通の人には大事だと思います」

市川森一 談

それは子どもへのメッセージだけでなく、我々大人や、壮年を迎えた還暦近くの筆者にとっても、人類や国や世界の大きな流れの歴史の中においては、人生はとても短い時間の切り取りであり、そこで分かる、解決する謎などというものは、本当に一握りなのだという、そこは本当にこの年齢になると痛感することが多く、今回始めた「折口くんシリーズ」の、今後の大きなテーマにもなりつつあります。

そんなちっぽけな人間が、果てしなく長く深い歴史の産んだ「闇」に向き合ったとき、せめてそこで、どう立ち居振る舞い、どうするべきか。それは本作品の本筋にもなります。

「折口くんシリーズ」には、柱となる大きなテーマが先にありました。
それは「私たちが生きた社会には、表と裏と『もう一つの面』で構成されている」です。
詳細は、実際の作品でお読みいただきたいですが、この場合「表」とは、要するに表層的に表側で語られる、歴史や世界観、うわべの判断などですが、かといって「その裏」が必ずしも正しいとも限らず、安い陰謀論やトンデモな歴史解釈もあれば、実は「本当のこと」を徹底的に隠すため、わざと歴史のはざまに配置された、ミスリードの可能性もあるわけです。
いつだって「本当のこと」は、わざわざ大きな声でアジテーションしなくても、ひっそりといじましく、歴史の中に佇み、「動かない事実」と共に「探せば見つかる」ところにあるのではないか、がこのシリーズのメインテーマです。

だからこそ、「動かない事実」は、もう見える世界にない状態で、私たちは「本当のこと」を探し求めて、人生が終わるまで彷徨わなければならないのでしょう。

本作は、そういった普遍的な作者の想いを込めた、連作シリーズになります。
だから、題材は実はなんでもいいのです。
たとえば、時として小説のジャンルがミステリーになってもよいと思いますし、ただの寓話のような落とし方で終わる話があってもいいと思います。
このたび筆者は、せっかく日本SF作家クラブの一員になれたのです。
一回ぐらいはドカンと本格SFっぽい作劇もしてみたいものです。
さてはてどうなるでしょう?

書籍の方は、PODによる紙書籍が初動ではそれだけになりますが、電子書籍も今回はご用意しております。
電子書籍のDRMの解除ぐらい、私のアンチには簡単でしょう(旗振りをしているのが、自称はともかく本業はIT技術者)。
だからアンチ群は電子書籍版を一冊購入し、DRMを解除して仲間内で配布するのでしょう。
その先で、何をするのかも既にこちらは想定済みです。事実が判明次第法的措置をとります。


まぁ、最後は不穏な話題にもなりましたが、拙作『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』は、8月1日よりAmazonで販売開始です。

どうかよろしくお願いいたします。

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