ちなみに余談になるが上西氏は、前作『ウルトラマン』でスーツアクターを担当した、スマートでシャープな体型の古谷敏氏と違って、若い頃から身体を鍛えていたうえに、典型的な当時の日本人体型(愛を込めて言うのであれば、頭が大きく胴長短足)であったため、デザイナーの成田亨氏が頭を悩ませた結果、ディティールを頭部から胸部に集中させた上で、下半身は赤の単色に、流れるような銀のラインが走る、デザインを考案したとも言われている。

上記のように、デザイン・アクターの体型、そして演出が一体となっていた、ウルトラセブンというヒーローであるが、実は本前後編は、セブン全49話中で唯一、セブンの中に上西氏が入っていないエピソードなのである。

その理由は筆者は疎く伺い知れないが、当の上西氏は、その後もしっかり最終話までセブンの役目を果たしたわけなので、スキャンダラスなトラブルが原因ではないとは予想がつくが、スケジュールになんらかの問題が発生したのか、今回の前後編ではセブンの中には、後に『帰ってきたウルトラマン』(1971年)で、ウルトラマンの中に入ることになる菊池英一(現・きくち英一)氏が入っていたことは、ファンの間では有名である。

新マンの演技は、慎重で優雅だった初代ウルトラマンや、スピーディで無骨で、力強かったセブンと比べて、どこか柔らかい動きのイメージがあるが、本話においてもセブンの動きは柔らかく、そこで演出された「無敵のスーパーロボットに圧倒されるセブン」という方向性の演技もあってか、本話でのセブンの印象はどこか弱々しい。

上西セブンと菊池セブンの見分け方はいくつかあるが、ひとつはスーツによる見分け方。

ウルトラヒーローは、基本的にウェットスーツで生地を作っていて、ボディラインがぴったりと浮かび上がるので、スーツアクターごとに、その人の体型に合わせて新調されるケースが多い。

本話でも、菊池氏用に改めてセブンのスーツが新調されたのであるが、実際に着込んだときの生地の伸び縮みまでは計算できなかったらしく、菊池セブンは、背部、お尻の部分の銀ラインが、左右に向かって引っ張られているように伸びているのが特徴である。

また、先述したように、上西セブンと菊池セブンは、細かくその演技が違っているのだが、大きな違いは、敵を前にしたときの腕の構え方であろう。

上西氏のセブンには、独特の構え方のポーズがあって、両腕を拳にした状態で前に向けて構えるという、セブンを子どもの頃から見ていた人なら、すぐにピンとくるあのポーズである。

平成セブンシリーズ以降の、新規映像に登場するウルトラセブンでは再現されるようになったこのポーズは、実は上西氏が若い頃から嗜んできた剣道の構えから来ているポーズであり、なるほど、その突き出し構えた両方の拳に竹刀を握らせれば、それはそのまま、すり足状の足の位置とあわせて、相手と間合いを計ろうとする、剣道の姿勢そのままなのである。

それが演出で決まったポーズではなく、上西氏の自然な挙動から生まれたものであるゆえ、本話でことさら改めて演出で再現する発想がスタッフになかったのであろう、本話の菊池セブンは、終始左手の手刀と右手の拳を構える、オリジナルのポーズでキングジョーと向き合っている。

これらの違いは、演出したスタッフや、子どもに付き合わされて観ている大人には、わからなかったり、気にならなかったりするポイントであったけども、実は子どものほうが敏感にその違いを感じ取り、違和感を覚えていたりしたものである。

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