三留 自分がどの年代の時にどの映画に出会ったかというのはすごく大きくて。私、そんな長い期間じゃないんだけど、映画の学校(日活芸術学院)で教えてた時によく言ってて、去年、一昨年だったのかな、日本映画学校ってところで講義を頼まれて「映画の話をして欲しい」って言われた時も話したんだけれども。「一本でいいから、自分の好きな映画。一晩でも二晩でも語り続けられるような映画を、自分で見つけよう」っていう。今すぐじゃなくてもいいし、「そういう映画」に出会えるように、出会えるといいねっていう話をしたんです。

大賀 学生時代の僕が今の三留さんの講義を聞いていたら、即座に立ち上がって「『戦国自衛隊』(1979年 監督:斎藤光正だぁ!」って叫んでたかもしれませんね。

戦国自衛隊

三留 そう! そう! それが大事なの! ウルフマン(市川大賀)だったらそうやって、反射的に出てくるものがあるでしょう? だからそこでももう「そういう映画に出会ってる子たち」もたくさんいたかもしれないし、「これから出会う子」もいると思う。だけど、ウルフマンの『戦国自衛隊』だってさ、二日前に観た時と、今日観た時では全然違うと思うのね。

大賀 違う、違う。全然違う。

三留 素敵な映画との出会いっていうのは、その時のたまたまの自分のメンタルとかバイオリズムとかの波長があったりする中で、すごくいいタイミングで出会って、なんでもないシーンで泣いちゃったりするんだよね。これ昔、大林宣彦)さんが教えてくれた言葉で「映画っていうのはね、結局『自分の物語』を観るんですよ。百人の人が観れば、百通りの物語がある。映画というのは一秒間に24コマの静止画の連続で写されているのだけれども、つまりそこで観客は、フィルムを観る以上の暗闇を観ているんです。それは自分の物語なんですよね」って教えてくださったのね。「自分の物語」を観ているのであればなおさらのこと、その時の自分の心理状態であったりとか、誰と観たのかと一人で観たのかでも全然違うし、つまり「最高のタイミングで出会った、最高の映画」みたいな。そういうものがあるかないかで全然違うと思うのね

大賀 これは初回の冒頭でも言ったんだけど。僕は中学時代、先輩の薬師丸ひろ子さんの後ろにひっついて、角川書店『月刊バラエティ』の編集部に出入りしていたじゃないですか。そしたらね。「今度薬師丸が特別出演する映画があるんだけど」って『戦国自衛隊』を紹介されて。『バラエティ』の取材同伴ってことでロケにも行ったんだけれども、だから僕はそこで現場で「足軽の衣装が一つあるけど、死体で出て(出演)してみる?」って聞かれて、即OKしたんで、あのシーンで僕は背景で、死体で転がってるんですよ(笑)

三留 死体(笑)

戦国自衛隊 転がる死体のどれかが大賀さん(笑)

大賀 で、その時はそのシーンしか把握できなかったんだけれども、角川のツテで鑑賞券を10枚ぐらいもらって、「(一人で)10回は観ないだろ、さすがに」と思って、クラスメイト4人ぐらいにチケット渡して、封切初日かなんかに観に行って、それがもう、中二病ジャストの馬鹿男子5名でそれを観たものだから、劇場の中でそこだけ「おい! 戦車! 止まってないで動けよ!」とか「ヘリコプター! 侍がぶら下がってるのに気づかないのかよ! ホラ堕ちたぁああ!」とか、『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年 監督: Jim Sharman 原題: The Rocky Horror Picture Show)の上映状況みたいになったんですよ(笑)

三留 わはははは。

大賀 それですっかりハマって、残りのチケット独り占めして、さらに自腹で通い詰めて、合計でロードショー期間だけで12回は観ましたね、『戦国自衛隊』は。

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