前回は「出渕裕ロングインタビュー10 出渕裕と安彦良和と『機動戦士ガンダムORIGIN』と」
――ここで少し、出渕さんの「これから」に関して伺いたいのですが。アニメ、特にメカは、現代は最新技術のCGで描写されるようになってきました。CG時代、メカデザインという概念はどう変わっていかれると感じてらっしゃいますか。
出渕 昔は作画でやるから「こういう細かいのは困る」って言われていたディテールが、入れられるようになりますよね。……といって無駄な入れ方をするだけと「ダメなデザイン」になるんですけど、まぁカトキ君たちの方が向いてると思うんですよ、そっちの方はね。で、(メカの)作画が出来る人(アニメーター)が減ってきてるっていうか、新しい「メカ作画をやりたい人」があまり出てこない。(原画の)単価が(簡単な作画と)だいたい同じくらいだからっていうのはあると思います。メカを描くのってかなり好きじゃないと出来ないんですけど、どんどん観る側の要求度が高くなって、ディテールなんかも情報量が多いわけじゃないですか。それをやっていくと、作画の手間は掛かるけどでも、実質的な原画単価は上がらない。そうすると人は入ってこないし、若手だって最初からそれ(メカ作画)が出来るスキルがあるわけじゃない。メカを動かしたい、これを描きたいって入ってきた板野(一郎)さんのような人もね、CGの方に可能性を見出して行っちゃいましたから。メカ作画ってコストの割に費用対効果が悪いんですよ。
――まさか『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006年)で、CG特撮で板野サーカスが観れるとは夢にも思いませんでした。
出渕 でも3Dである実写特撮と、2Dのアニメーションはメカアクションの気持ちよさに差異がある気がするんですよ。リアルさとハッタリズムっていうか。F-15のミサイルが板野サーカスして飛んでるっていう、これがまだバルキリーのミサイルだったら分かるんだけど、F-15イーグルのミサイル(の軌道)は実機を知ってたりすると、こういう動きじゃないよなあ、って思っちゃう(笑) まぁそれはいいとして……今、メカを作画でやってるのは、いまはボンズとサンライズぐらいですよ。とはいえどちらのスタジオも、いまは全部(作画で)やってるわけじゃなくって大なり小なりのCGも併用した上で。なんていうかメカ作画は、これはメカデザインにも言えるんだけど「進化の袋小路」に入っちゃってる気がするんですよ。超絶メカ作画の人たちもどんどん歳をとっていって、後が続かずにその人たちで終ってしまうんじゃないかという危機感がしててね、滅びゆく伝統芸能的な哀しさっていうか。
――僕はアニメは外野なのですが、確か『ゾイド -ZOIDS-』(1999年)で、初めてCGメカのアニメという物を見て、すごい技術革新だ。アニメの新時代がまたステージが上がると期待したのですが、それから20年経って、結局CGってコストダウンに便利な技術ってところに落ち着いちゃったという印象がありますね。
出渕 いや、コストダウンにはなってないですよ。やはりまだお高い感はある。純粋に描ける人が限られてるからそちら(CG)の方に流れていくって話。いつもメカシーンのある作品ばかりじゃないからメカ作画のアニメーターも仕事的に不安定なんだと。とはいえアレ(『ゾイド -ZOIDS-』のCG)は、メカシーン多いからメカ作画のコストダウンを目指して、試したのかもしれないですが。あれはメーカーの玩具を(ディテールデザインそのままに)動かすっていうテストだった気もするんで、メーカー、玩具会社としてはその方が(映像そのままの)商品としてはありがたいっていうのはあったかもしれないです。