私、市川大河がお送りする『光の国より愛をこめて』記念すべき第一回は、もちろん『ウルトラマン』第一回の再現をお送りする。
思えばこのエピソードの特撮を制作したのは2007年の初頭。
その頃は、自分の特撮画像などでエピソードを俯瞰することなど考えてもおらず、また出来るわけもないと自覚していたので、付属する画像は13枚と少なかった。
それでも「異空間の謎の宇宙人との邂逅」や「湖底のベムラー」、ビートルの有志や肉弾戦、スペシウム光線など、最低限本話をイメージさせる画像は、一通り作ってみたものであった。
そういった試行錯誤が試金石となって、現在があるのは紛れもない事実で、それゆえに、ウルトラマンシリーズの歴史の第一歩になったこのエピソードに対して、敬意を持って再び挑戦することへの必要性は、かねてから強く感じていた。
それから一年半。あれよあれよという間に、毎回の再現特撮画像の枚数は、『ウルトラ警備隊西へ』前後編辺りからインフレを重ね、いまや30枚、40枚は当たり前で、特撮の比重によっては、50枚を超えるエピソードも少なくなくなってしまった。
そういった勢いと流れの中で、今一度ウルトラの礎となった作品群にもう一度向き合いたいと思ったのが、今回の公式サイト版なのである。
そういった経緯ゆえ、公式サイト版では、あくまで過去に制作した画像を尊重しつつ、そこに、さらに物語性を加えて、観てくださる皆さんに楽しんでいただけるようにと、改めてコンテを切って、新撮影をもって制作に取り掛かることになった。
まずは冒頭。
旧作では三角ビートルの飛翔だけで表現していた、このウルトラの開幕シーンだが、今回は、セロファンを巻いたピンポン玉を使って、ウルトラマンの赤い玉と、ベムラーの青い玉を表現した。
ブログをはじめてから今までの年月は、アイテム充実の時間にもなった。
ブログ開設当初はまだ所有していなかった、ウルトラバトルゾーンの科特隊基地から、ビートルが発進していくカットも追加した。
ウルトラマンとハヤタの邂逅。
まだまだ「謎の宇宙人」の趣が強いウルトラマン初登場のカットは、旧作で作成したカットをそのまま使用。
ハヤタは、いつも変身シーンで使用しているハイパーウルトラマン版を、フォトショで寝ているように加工して(右腕を下げさせ、瞼を閉じさせた)撮影。
ウルトラマンから与えられるベータカプセルも、変身カットで使っている、バンダイの食玩・ウルトラマン変身アイテムコレクションを使うなど、ブログ版から今までの、アイテムの充実を作品に反映させてみた。
やがて竜ヶ森湖に到着するビートル。
竜ヶ森湖のセットは、今回が初お目見えになるが、本来は『帰ってきたウルトラマン』(1971年)の『呪いの骨神オクスター』や、『許されざるいのち』などの撮影を目的として制作した、新規のプールセットである。
発泡スチロールで、湖のくぼみとほとりを大まかに組んで、セメントや紙粘土でディティールを付けて塗装した、単独セットとしては、『光の国から愛をこめて』特撮では最大級を誇る大型セットになった。
ブログ版からのブラッシュアップを思いつき、実行した要因は様々にあるが、せっかく湖のほとりセットを作ったのだから、『ウルトラ作戦第一号』と『湖の秘密』をリメイクできるじゃないかと、思い立ったのも大きなきっかけであった。
ビートルが運搬してきた特殊潜航艇S号は、バンダイのHGガシャポンで発売されたS号。
これはナンバリングがS-25号となっていたのだが、登場カットでは、全てフォトショップで16に描き変えている。
湖底を進むS号のカットは、実はいずれUPする『海底科学基地』のカットの、S号のナンバーだけを描き変えたカットである。水中特撮に関しては、またいずれ詳しく解説するが、当時一年半かかってようやく水中特撮のノウハウを会得したこともあり、ブログ時にUPした水中シーンと見比べていただけば、市川大河流特撮技術の進歩を実感してもらえるのではないだろうか?
そして、科特隊によって展開される、ウルトラ作戦第一号。
実は旧作では、このタイトルにもなっていた作戦が、全く描写されていなかった。
なので今回のリメイクでは、絶対にそこを描かなくてはという想いは特に強かった。
空中からと海中からの、科特隊の両面作戦が展開される。
ビートルの攻撃は、この時期の作中ではまだ、ビートル翼端のミサイル部分がそのまま射出される描写だったので、我が再現特撮でも、フォトショップ処理でそれを再現。
ベムラーがS号をくわえて浮上するカットでは、ソフビのベムラーの口に、S号を合成して表現している。
ウルトラシリーズ初の変身シーン。
樹木を使ったセットを撮影した画像に、HGガシャポンのS号と食玩のハヤタを合成。
変身アイテムコレクションのベータカプセルの輝きを経て、ウルトラマン登場。
筆者にしてみると、久々のAタイプウルトラマンフィギュアでの演出。
ウルトラマンとベムラーの戦いは、新規セットを舞台にして、炎や土煙を合成しながら、旧作では3カットしかなかったバトルを、12カットに増やして、その流れを再現してみた。
湖に投げ込まれたベムラーが、青い玉に変化して逃げようとするところを、スペシウム光線でとどめを刺す辺りは旧作版のカットを使用。
初心に帰る意味を持って制作した、ウルトラマンシリーズの開幕劇であったが、筆者の技術の進歩を見ていただけたら幸いである。
ウルトラマン Aタイプ
俗に「Aタイプ」と呼ばれる最初期のウルトラマンの再現は、バンダイから発売された「ウルトラアクションヒーロー」シリーズのカスタムで表現した。
アクションヒーローは、『ウルトラマンメビウス』(2006年)の劇場映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』の関連玩具として、2006年の秋に発売された、ゾフィからタロウまでの歴代ウルトラ兄弟とメビウスの、可動アクションフィギアのシリーズである。
そしてまた、ウルトラアクションヒーローは、先行開発販売されていた、ウルトラ超合金シリーズの廉価版とも言える商品。
そのサイズは、バンダイウルトラヒーローシリーズソフビフィギュアと同じなので、アクションヒーローで発売されてないウルトラマンは、ソフビと組み合わせてカスタムすることで再現することも可能なアイテムとして、当時からアクションヒーローはファンの間では認知されていた。
アクションヒーローで発売されている初代ウルトラマンは、番組後期に活躍した「Cタイプ」と呼ばれるバージョン。
今回は、Aタイプウルトラマンの再現カスタムを行うわけだが、「Aタイプウルトラマンのアクションフィギュア」という意味では、今でこそS.H.Figuartsブランドから、2017年9月に5500円で発売されて、金さえあるマニアであれば簡単に手に入る時代になっているが、ブログ時代は、ソフビとアクションフィギュアのニコイチで自作するしかなかったのだ。
当時のカスタムの手順としては、ボディはウルトラマンのウルトラアクションヒーローをそのまま使うとして、今回、Aタイプウルトラマンの顔と手首は、バンダイが2001年に限定発売したウルトラヒーローシリーズソフビの、初代ウルトラマンAタイプを使用しているが、これをそのままアクションヒーローの初代ウルトラマンに着けてしまうと、ボディの赤ラインの模様が細かく異なるので、どうしても、顔と体に違和感が出てきてしまう。
過去にもガレージキットメーカーなどの商品で、ボディが一つ、マスクが三種類ある、マスク挿げ替えで3種のウルトラマンを再現できる商品などが出ていたが、そういったアイディアは評価するものの、ウルトラマンのバリエーションは、マスクの違いだけでは再現できないため、違和感の残る商品になっていた。
なので、ボディの赤ラインを、Aタイプ模様にリペイントした、ウルトラアクションヒーローのボディに、ソフビのAタイプマスクと手首を移植する。
これだけで、筆者が30年間(2006年当時)待ち望んでいた、「可動するAタイプウルトラマン」の出来上がりである。
商品版のAタイプソフビは、何故か目が鮮やかなイエローだったので、そこもリペイントした上で、黒目を描き足しておいた。
ベムラー
ベムラーはバンダイがリリースしている、ウルトラ怪獣シリーズソフビを使用した。
(『光の国から愛をこめて』インターミッションでは、今後特に「2013年以降の現行サイズの」という但し書きがない場合は、「ウルトラ怪獣シリーズ」と書いた場合は、2006年当時の旧840円ソフビシリーズを指す)
ウルトラ怪獣のソフビ人形というカテゴリアイテムは、古くは『ウルトラQ』(1966年)放映開始当初に、おもちゃ会社マルサンから発売されてから、その後大手会社からだけでも、ブルマァク、ポピー(現バンダイ)、バンダイと、各会社からリリースが続き、40年も男子玩具のスタンダードとして愛され続けている。
その昔は、原型作成技術も低く、また幼児対象の玩具という認識も高かったため、実際の怪獣よりも、可愛らしくまた遊びやすくアレンジされていたが、ここ近年の風潮は、幼児層だけではなく、良い年をした大人のマニア(筆者みたいな奴だ(笑))をも購買層に取り込むため、想像以上にリアルな出来になっている。
840円シリーズ時代のバンダイ怪獣ソフビの持つクオリティは、80年代全盛期のガレージキットをも凌駕する出来であり、本シリーズも、基本的にはこのバンダイのウルトラ怪獣ソフビシリーズを中心に展開していきたいと思っている。
さて、栄光あるウルトラマンシリーズ第一号怪獣のベムラーだが、ウルトラマンの最初の敵というだけあって、過去にもブルマァク・ポピーのキングザウルスシリーズなどでも商品化されている。
余談だが、70年代後半に、ポピーによって商品展開されたキングザウルスシリーズは、販売前に(当時のマニア少年には思い出深い)ケイブンシャのウルトラ怪獣大百科という図鑑の裏表紙でお披露目されたのだが、当時その裏表紙に載っていた、アメコミチックな造形のベムラーは、その頃の筆者には、何の怪獣だか判別できなかった。
当時はそれだけ造形方針が、対米輸出に向かっていたというのも真理だが、他のキングザウルスにはそれほどの違和感は感じられず、何故かベムラーだけが、アメコミ的アレンジで造形されていたのだ。
さて、そんな悲しい過去(笑)を持つベムラーではあるが、バンダイのウルトラ怪獣ソフビシリーズでは
まず1983年のシリーズ展開開始と同時に、ラインナップに加わった。
キングザウルスに比べれば、それはもう十二分にベムラーと判別できたが、それでもさすがに、今から見れば20年以上前の商品。それなりの出来でしかなかった。
バンダイの怪獣ソフビシリーズは、先述したように、大人を購買層に取り込むために、90年代半ばに、意欲的なリニューアル化が行われた。
このリニューアルで、人気怪獣のいくつかが、新規造形で発売されたわけだが、このベムラーもまた、新規造形の恩恵にあずかった。
その出来は、過去のソフビ怪獣の造形概念を覆すクオリティで、ガレージキットと同等の仕上がりを見せている。
もっとも、そのリアル造形のせいでおもちゃとしてのプレイバリューが減り、固定ポーズで飾らなければいけないという、ディスプレイスタチュー商品になりつつあるのが現状ではあるが、ベムラーに限って言うのであれば、元々両手は生えているだけ。特に両手が表情を持つ必要もなく、結果、今回の撮影では商品を無改造で使用している。
ハヤタ隊員
ウルトラマンに変身する、科特隊のハヤタ隊員は、バンダイの食玩「ハイパーウルトラマン」のPart5にラインナップされた、ハヤタ隊員のフィギアを使用した。
ハイパーウルトラマンは、PVC成型ながら、その精密なディティールとプロポーションで、その後HDウルトラマン、アルティメットソリッドなどといった後継シリーズに引き継がれた傑作食玩シリーズである。
このシリーズで人間キャラは、他に『ウルトラセブン』のダンとアンヌが発売されているが、ハヤタの秀逸なポイントは、ベータカプセルと一体になっている手首が、別パーツゆえに交換が可能で、しかもその交換用手首には「あの」エピソードを再現するべくスプーンが握られているという点。
顔立ちは、ダンやアンヌと同じく、リアルとアニメディフォルメの中間。
ヘルメットのバイザーはクリアパーツで、メットや服の質感も申し分ない。
今後も変身シーンなどで、活躍してもらう予定のアイテムである。
ジェットビートル
科学特捜隊主力メカのジェットビートルは、バンダイの食玩「ハイパーウルトラメカ」と、HGメタルメカコレクションのジェットビートルを、主に使用している。
食玩ハイパーウルトラメカは、一般流通の安価食玩でありながら、ガレージキット並みのディティールを誇るお化けアイテム。
後部ジェットノズルなどはしっかり別パーツ。科特隊マークまで丁寧なタンポ印刷。
シルエットも当時のミニチュアに忠実で、発売数年前に一桁上の価格帯で展開していた、超メカギャラリーや、HGメタルメカコレクション等とほぼ同等のクオリティを誇る。
今回は、両翼端のロケット部分だけ、白でリペイントして撮影に使用している。
一方、HGメタルメカコレクションは、バンダイが展開していたハイクオリティのメカトイ。こちらはキャノピーもクリアパーツで構成されていて、宇宙ビートルにも換装できる。
アイテムの完成度としては、当然HGメタルメカの方が高いのだが、HGが「メタル」である分だけアイテムの重量が増えていて、撮影時の操演の取り回しなどの都合で、食玩のビートルを使用することが多いかもしれない。
ビートルに関しては、他の回のシーンでは、「出撃!ウルトラメカセレクション」のジェットビートルを使用している場合もある。
小型ビートル
科特隊の補助的戦闘機・小型ビートルは、バンダイ「出撃!ウルトラメカセレクション」の小型ビートルを使用している。
この商品は、基本的にガシャポンと同じ材質・サイズで、シリーズはⅢまで展開されたが、全部揃えれば、初代ウルトラマンからウルトラマンティガまでの、ほぼ全ての特殊メカ(車両除く)を揃えられるという好アイテム。
サイズの割にはリアルな出来で、そのままのサイズで(一部例外を除けば)ソフビの怪獣やウルトラマンとサイズも合うということで、今回は各防衛隊のメカのブロップとして、シリーズを通して頼りにさせてもらっている。
唯一の不満点は、各防衛隊のマークが印刷されていないことだろうか。
ちょうどこの商品の展開が終わった90年代後半ごろから、急激にガシャポンや食玩の印刷技術が上がってきた歴史を振り返ると、もうちょっと数年遅い商品展開であれば、きっと防衛隊マークまでも印刷されていたろうにと、それは期待できるだけに残念でならない。
しかしシリーズを全部揃えれば、今回の小型ビートルや、MACのマッキー号シリーズまで、全て揃うのは、結構な魅力である。
特殊潜航艇S号
科特隊の水中戦力である特殊潜航艇S号は、バンダイのHGガシャポンで「HGウルトラマン13 新たなる光編」で、科特隊専用車と共にラインナップされた特殊潜航艇S号を、撮影に使用している。
サイズでいうとメカセレ版には劣ってしまうHGガシャ版ではあるが、PVCの食玩やガシャポンは、ちょうど90年代末期から、驚く進歩を日進月歩で遂げていた時代であり、その恩恵を受ける形で、HGガシャ版はディティールや塗装などの点で、大きくメカセレ晩を上回るクオリティを得た商品として発売された。
もとより水中潜航艇というデザインなので、細かいディティールがあるわけでもなく、タンポ印刷された科特隊マークやナンバーも精密感を増していて、指先サイズながら、充分アップに耐えられるアイテムに仕上がっている。
今回はこのアイテムを撮影して、フォトショップでナンバーを変えて加工した画像を演出には使用している。