そういった見地からいえば、このHGUC 030 ガンダムMK-Ⅱは、高水準でそれらのバランスを成立させた、HGUC初期の名作であり、およそ「ガンダムMK-Ⅱにハズレなし」の名に恥じず、マッシブなシルエットと安定性のあるプロポーションを両立させた「誰もが知っているガンダムMK-Ⅱ」に仕上がっている。
確かに、ヘルメットや前腕、膝などの正面に合わせ目がきてしまうことは見た目的に損をしているが、逆に上腕や腿等は、スラッシュ金型で一体成型をこの時点で成し遂げており、肩アーマーのジョイントの構造解釈も見事で、肘も膝も曲がり角度では驚愕的とはいかないが、膝などは二重関節を取り入れていて、パーツ分割も塗装派には親切な分割になっている。
パーツの色分割も、イエロー部分はアンテナや襟や胸ダクトはもちろんのこと、脚の外、内側や肩のインテーク等も別パーツ化しており、赤はアンテナの基部、腹部コクピットカバーの他、シールドの覗き穴までしっかりと色分けが成されている。
基本パーツ構成は「黒いガンダム」の通り名に沿って、黒いボディに濃紺の四肢、ミディアムブルーのムーバブルフレームで構成されており、ナンバリングと目のツインカメラや額のメインカメラはシールで補完。
可動に関しては、上記でも書いたが、肘や膝は折り畳むまではいかないが、股関節の開脚は前後、左右共に十分なスパンを保ち、足首の接地性も、つま先が別パーツ化されていて可動する。
スカートのアーマーは、前2枚が連結で、左右が個別、リアスカートが1枚で固定と、この時期の定番の仕様になっている。
付属する武器は、ビーム・サーベル、ビーム・ライフル、バズーカ、バルカンポッド。
バルカンポッドは頭部に装着できて、バズーカはグリップが、ビーム・ライフルはフォアグリップがそれぞれ可動する。
多分、賛否が別れるのがビーム・サーベルで、初期のHGUCには見られがちだったアプローチなのだが、サーベルがクリアパーツではないばかりか、柄と、柄を握る拳と全て一体化していて、塗装で仕上げる独特の仕様。
無塗装派の興を削ぐだけではなく、バンダイの手抜き的な意見も耳にしたが、考え方を変えてみた時、確かにプラモデルのギミックとしては、握り手に柄を差し込み、そこにクリアパーツのビーム部分を刺す方がリアルであるのかもしれないが、いざ完成した時の手首、特に指の表情というものを考えてみた時には、しっかりとサーベルの柄を、構える方に向かって力が入っていた方がリアルなのである。
なので筆者は、意外とこのサーベル再現法が嫌いではない。
小顔、脚長のイマドキスタイルではないが、武骨でマッチョなガンダムMK-Ⅱの魅力は、充分に表現しているガンプラだと言えるのではないだろうか。
なお、ティターンズ版には01 02 03のそれぞれのシールが付いているので、相当のMk-Ⅱマニアの人であれば、3個買って、グリーンノアのテスト実験を再現するのもアリではなかろうか(笑)
スーパーガンダム 1/144 HGUC 035 2002年11月 2000円
さて、ティターンズカラー版発売から約半年。
ガンプラファンが固唾を飲んで見守っていた「どのような手法とタイミングで、ガンダムMK-Ⅱのエゥーゴカラー版は売られるのか」への回答が、バンダイより出された。
Gディフェンサー。
それは、あえて『機動戦士ガンダム』(1979年)っぽくいうのであれば、Gアーマーのような「単独でも、そしてガンダム(MK-Ⅱ)と合体してでも運用可能な兵器」の新型メカである。
本編では、主人公メカがゼータガンダムに移り変わった直後の第22話『シロッコの眼』からガンダムMK-Ⅱ支援メカとして登場するが、このGディフェンサーとガンダムMK-Ⅱが合体した状態が「スーパーガンダム」と呼ばれている。
なんともダサいのかナウいのか理解不能なネーミングだが、一説によると、『Zガンダム』期は、ライバルロボットアニメの『超時空要塞マクロス』(1982年)の影響が色濃く、この時期次々と可変型モビル・スーツが登場するのも、『マクロス』のバルキリーへのライバル心からだとする意見も説得力があり、また『マクロス』では、主役メカのバルキリーが追加装甲を身にまとうことで、昔風のガンダムで言えば「フルアーマー」になった状態を「スーパーバルキリー」とネーミングされていたので、その影響があったのかもしれない。
というわけで、この時期のサンライズ富野アニメのお約束「主人公メカ交代」で、前作の世界観を上手くゼータガンダムにバトンタッチできたガンダムMK-Ⅱを、ただ脇役メカに落ちぶれさせるのではなく、エマ・シーンが乗るサブ主人公機として(富野アニメではしばしば、シリーズ中盤の新主人公メカ登場と共に、それまでの主人公メカに乗ることになる女性が。ヒロインであることがこの時期多かった)活躍させるに当たって、格落ちするのではなく、むしろパワーアップさせようという、演出意図的、ビジネス的な目論見がそこにあっての、Gディフェンサーの登場とスーパーガンダムの誕生であった。
なるほど。
如何にして、先にティターンズ仕様として発売したガンダムMK-Ⅱを、改めて主人公カラーで売りなおすときに、仮にも主人公メカとしてのメンツをつぶす数字に落ち着くことなく、新たなバリューをそこに持ち込むのかという、まるで頓智のようなビジネス命題を前にした時、バンダイが選んだのは「エゥーゴ版ならではの、キット一つ分のバリューを丸々付加すること」であったのだ。
確かにこの戦略は盲点だった。
しかも、この手法を使うことで、番組後半の重要支援メカ、しかしロボット形態ではないので、単独では商品化バリューに欠けるメカを、プレバン送りにせずに、堂々と一般販売することが出来る。
ある意味「Win-Winの抱き合わせ」であるとは言えた。
定価の倍増しも、キット2つ分の価格だと思えばそうそうボッタくりではない。
同梱されているGディフェンサーも、単体での出来も良く、もともとガンダムMK-Ⅱとは、複雑な合体をするタイプのメカではないというのも手伝って、後々、後発で発売された他のガンダムMK-Ⅱにも装着できるという嬉しい誤算もあったりしたのだ……が。
この時はまだ誰もが思った。「面白い試みだが、エゥーゴカラー版を、このままGディフェンサー抱き合わせキットでしか手に入らない状況が永遠に続くこともないだろう。時期を見て単独発売するに違いない」と。
さて、キットの方だが。
ガンダムMK-Ⅱの方は、先に発売されたティターンズ版とほぼ同じ。異なるのはナンバリングシールの代わりに、シールドのイエローの三角形が改めて配色補完としてシールになったことぐらいか。
Gディフェンサーとの合体は、最初からこの仕様を見越してバックパックに仕込んであったポリキャップを使って合体するためストレスは殆どない。
なので、同じポリキャップが仕込んである先行したティターンズ版とも合体は出来るのだが、ティターンズ版にGディフェンサーを合体させた図というのは、ドイツ軍の戦車に米兵が乗り込んでいる図のようで史実的にあり得ないので、まぁそこはあくまでオマケ要素と割り切った方が良い。
もっとも、合体箇所がその、バックパックのポリキャップ一か所のみなので、大型のGディフェンサーを支えるには少し心もとないというのはある。
ちなみに、Gディフェンサーのコクピットの脱着もポリキャップを使用。先ほど上で「後々のガンダムMK-Ⅱとも合体させられる」と書いたが、後のHGUC 193 REVIVE版や、RG版でも、確かに合体は可能なのだが、スーパーガンダムの主兵器、ロングライフルのグリップが、REVIVE版やRG版の手首だと上手く握れなくて保持力に問題が残る。このキットの手首をREVIVE版やRG版に移植するというのが一番無難な対処法だろう。