この話の基本構造に話を戻せば、グリーンモンスとなってしまうミロガンダの出自は、オイリス島という秘境を舞台にした冒険隊の物語を枕にしている。
それは戦前からの講談や紙芝居、絵物語などを思わせる部分が多く、『ゴジラ』(1954年)の原作者・香山滋の冒険小説『オラン・ペンデクの復讐』や、小栗虫太郎の『人外魔境』や、山川惣治『少年ケニヤ』といった、秘境冒険作品にも通ずる部分を思わせてくれる。
だからそこで現れたミロガンダという怪物もまた、それらの作品に登場した、数々の魔物・怪物・未知の生物的な色をもっている。
そういった戦前娯楽の要素を解決していくのが、『月曜日の男』の延長戦上にあるような、現代的で都会的な科学を駆使した科学特捜隊による、科学的・論理的な捜査、推理、作戦などであるというのが、本話の基本構造のまとめなのである。
現代都市構造に襲いきた、秘境怪奇冒険忌憚の怪物を描くサスペンスと、事件を解明していく現代的推理捜査ドラマと、それを中和する「無責任男」の妙味。
それらが一体になった『ミロガンダの秘密』というエピソードは、『ウルトラマン』という作品世界観とスタイルが、それまでの戦前的娯楽にはないパイオニアであるのだということを、はっきり証明してみせた佳作なのである。