『ケムール人二代目』「どうせなら」という、一番「アカン動機」で、手を付けてしまったケムール人二代目の再現。その構造は、上でも書いたように「ダダのボディに、ケムール人の頭部を、少し斜めに接着する」だけで、お手軽に、数分で出来るものだと思っていた。しかし。人生、罠がどこにあるかも分からないもので。少し記憶を辿れば分かっただろうに、いざ、今回改めてダダのソフビを手にしてみた時に、後へは戻れないタイミングで判明してしまった事実があった。
そう。2000年製のダダソフビには、背中に至るまで、全身に白と黒のモノトーンのテクスチュアが貼ってあるのだが。塗装のガイドのためか、その縦横無尽の無数のライン全てが、モールド造形されているのであった。もちろん、ダダとケムール人二代目の体表塗装パターンは全く違う。なので、このボディをケムール人二代目のボディとして扱うのであれば、塗装をする前に、一度ダダのボディのテクスチュアモールドを、全部パテで埋めなければいけない。模型作りで、一番フィニッシュワークが苦手な筆者は、この時点で眩暈に陥ったが、乗り掛かった船なので、ここで引き下がるわけにもいかなくなってしまった。
というわけで、まずはケムール人最後期版のソフビの頭部を、襟胸元まで含めて切り出す(写真・N)。
ゼットン星人の時と同じく、頭部の先端のラッパ部分だけをエポパテで追加造形(ちなみに、ここのラッパ部分は、なぜかケムール人二代目の時だけ、穴が塞がれていたので、それも踏まえて再現)。
一方、ダダのソフビは、頭部を外して(写真・M)、全身くまなくポリパテを塗りたくる。この状態で一度、パテの硬化を待って、その後サンドペーパーで、苦手なヤスリがけを400番から1000番まで繰り返す(写真・O)。
ようやく仕上げが終わったダダのボディ(それでも何度かパテが剥がれ落ちたり、パテ部分を全部削り落としてしまうミスもやらかした)に、ケムール人の頭部を張り付ける。一番重要な作業であり、ケムール人二代目の特徴でもあり、ゼットン星人へと繋がる「頭部の角度の捻り具合」を、劇中写真と見比べて何度も調整。ケムール人二代目は、胸部近くまでも流用しているため、ソフビをただ切り出しただけでは、真正面の角度にしか取り付けられない。なので、左肩部分から背中にあたる部分を、思い切ってカットして、その頭部をダダのボディに、右斜め前方を向かせて接着する。
切り取ってしまった部分は、改めて頭部が接着し終わった段階で、エポパテで追加造形しておく。ここまでが、ケムール人二代目の造形工程。
単純に「ダダの首を引っこ抜いて、そこにケムール人の頭を乗せればいいや」と考えていた筆者が甘かったという、いつもの話(笑)さて、ここからが塗装である。ケムール人二代目の塗装のミッションは、大きく分けて二つ。一つは「ダダのボディを流用して塗り替えた身体」、そしてもう一つが「初代ケムール人の塗装が、退色した頭部」である。まずはボディのカラーリング。資料を見る限り、ボディは黒のウェットスーツに、アドリブで銀のラインを入れていったものらしく(一説には、成田亨氏自身が塗装をおこなったとする向きもあるが、それは初代ケムール人の塗装作業と混同しているだけであろう。違うキャラクターを新たに塗るならいざ知らず、初代と同じ、しかも稀代の芸術家がリペイントを担当しておいて、ここまで初代と違う塗装は施さない)、後は、これも現場合わせか、やっつけ的に白い手袋とブーツを履いているだけ。
なので、まずは全身を艶消し黒で、手袋とブーツを艶消し白で塗る。後は、延々と銀ラインを描きこむ。この銀ライン、よく資料を観察すると、ボディ、両手、両足、それぞれにギザギザの波模様が、6段描かれているので、さすがにギザギザ模様ディティールの完全再現とまではいかなかったが、その6段ルールだけは、なんとか守って描いてみせた。そして、頭部のカラーリング。頭部は、元々のケムール人の色よりは、劣化して退色しているものの、ゼットン星人時までには退色していないという前提を踏まえ、総天然色版のソフビの色を基に、それを褪せさせる方向で、色にアレンジを加えていった。
具体的には、頭部の青を326ブルーS15044に定めて、ソフビの成形色を残す形でざざっと塗っていき、その上を14ネイビーブルーで汚すように塗り重ねていく。特に、退色が明白な胸部部分は、ほぼネイビーブルー。目のレールは、淵を29艦底色で塗装。最後に、彩色の経年劣化を再現するため、全体に汚しシンナーを流し、艶消しスプレーを吹いてある。これで「バンダイソフビフォーマットによる、ケムール人二代目の究極版」は完成した。
試しに『禁じられた言葉』での、ケムール人二代目の出現シーンを再現してみたが(写真・P Q)思っていた以上に、シーンに馴染んでくれていて違和感も少ない。
これで、ケムール人二代目の「バンダイサイズで一番、考証と再現を尽くした究極版フィギュア」は出来あがり。というわけで、ミッションコンプリート!『究極のゼットン星人フルアクションフィギュア』と『究極のケムール人二代目ソフビ』を造る!を、お送りいたしました。