この「旧バンダイウルトラ怪獣シリーズのケムール人と、S.H.Figuartsカメラ男の、首から下のスケールが完全一致する」というポイントが、まず大事だった。その上で、『さらばウルトラマン』劇中で登場したゼットン星人は、首から下は岩本博士のまま。というか、むしろ首の接合部から下は、最終クールの『来たのは誰だ』で登場した、等身大ケロニアの物をそのまま使っているので、それらと同じく、黒のスーツ姿であることが望ましい。あらゆる意味で、このカメラ男は、ゼットン星人のボディベースとしては最適であった(もちろん、カメラ男自体ディフォルメされた体型でもあるので、リアルな固定ポーズフィギュアで、ゼットン星人を、という方には向かないが)。

そして、当然今回のカスタムフィギュアの、もう片方の主役になる、旧バンダイウルトラ怪獣シリーズのケムール人(写真・C)について。

今回は、訳あってケムール人ソフビを複数入手したのだが、そこで面白いことに気が付いた。旧バンダイウルトラ怪獣シリーズでは、ケムール人は2000年に初商品化され、その後三回、塗装仕様を変えて発売されたが、今回入手した二つは、どうやら初期商品と、最後期商品らしい。

初期型は、モノクロのようなカラーリングに、眼のレールだけがクリームイエローという按配で、後期型は、全体が濃紺とミディアムブルーによる彩色で、眼のレールは赤茶系のオレンジっぽい色味である。この違いは何か?怪獣ソフビが、再販時に、ガラッと色味を変えてくる商法自体は、半世紀前から珍しい事ではないが、近年のバンダイソフビは、リアル志向で商品化されているので、全く根拠のない塗装や配色はしないようになっている。初期の、モノクロトーンっぽい配色のケムールには、白黒作品ならではの説得力があるが(実際、『ウルトラQ』に登場した他の怪獣などでは、ホビー雑誌限定販売で、モノクロ彩色仕様の物もある)、濃紺とミディアムブルーのケムール人というのは、どこから出てきた発想なのか?

そこで、ふっと思い立ったのが、2011年に展開された『総天然色 ウルトラQ』BD BOXである。この映像作品は、放映当時白黒だった『ウルトラQ』に、可能な限り調査や探究をして、当時の実物に近い色味を、最新技術で着色したという触れ込みであり、そこでのケムール人も、やはり(殆ど夜間シーンなので、明確な色は判明しないが)青系で映像が着色されていた。

『総天然色 ウルトラQ』BD BOX より
『総天然色 ウルトラQ』BD BOX より

『総天然色 ウルトラQ』BD BOXの色が、どの程度正確なのかを明確に測る資料を持ち合わせてはいないが、バンダイソフビの最後期版は、この映像内でのケムール人のカラーを再現しているのではないかと言える。その「ケムール人・青系説」をある意味で裏付ける状況証拠が三つある。

一つは、ケムール人のデザインと、ボディの造形を行った成田亨氏が、後年に至るまで描き続けたカラーのケムール人絵画が、頭部も黒に近い青系で描画されていること。誰よりも、当時のデザインから造形完成品に至るまでに接した成田氏が(ちなみに、成田氏が少なくともボディを青系で塗った事実は、当時の記録に残っている)絵画でも同じように、頭部を青く塗ったということは、それは単純に考えて、実際のケムール人の頭部が青かったからではないのか?という前提。

成田亨氏の後年の画のケムール人
成田亨氏の後年の画のケムール人

もう一つは、やはりこちらも、実際のケムール人着ぐるみの、頭部造形を担当した高山良策氏が、後年制作したケムール人の彫像の彩色が、頭部も、ボディと同じ色(青系にも見えるグレー)で塗られていること。

高山良策氏造形のケムール人立像

最後の一つは、当時のカラー作品最先端でもあった『ウルトラマン』の『禁じられた言葉』に登場した、ケムール人二代目の頭部カラーリング。

『禁じられた言葉』に登場したケムール人二代目

『禁じられた言葉』に登場するケムール人は、ボディこそダダの着ぐるみの使いまわしだが、頭部は『2020年の挑戦』の時の物を、そのまま使っている。今と違い、怪獣着ぐるみの劣化が激しい当時ゆえか、既にこの時点でケムール人の頭部も劣化が始まっているが、そこでの登場シーンを見ていると、なるほど、確かに頭部は、くすんではいるが濃紺系で、眼のレールは、オレンジだったことが伺える(一部、ネットでの検証系サイトでは、このケムール二代目を根拠にしたように「ケムール人頭部『赤茶系』説」を唱えている人がいるが、ここで赤茶っぽく見えるのは、単純に造形素材の腐食のせいである。また、そもそも夜間シーンが多い『2020年の挑戦』でのケムール人が赤い頭部であれば、白黒フィルムに対して、もっとディティールが潰れてしまうはずである)。

さらに、そこから色味が劣化したのが、最終回に登場するゼットン星人で、最初のソフビの、彩度の低い塗装仕様は、まだ『総天然色ウルトラQ』が展開される前の、一番詳細にカラーで確認できる映像素材としての、ゼットン星人を手本として塗装仕様を決めたからなのかもしれない。つまり、バンダイのケムール人のソフビは、初期の塗装が、最終的に劣化した色味を再現していて、最後期のソフビが、着ぐるみが作られた当初の色味を再現して、順序が逆になっているのかもしれない。

そう考えたとき、ゼットン星人まずありきで、今回ケムール人のソフビを幾つか入手したが、このソフビの塗装仕様の色味の違いを、逆手にとって利用するのは面白いと考えた。もちろん、ソフビの塗装など、元の色と全く違う色にするなど簡単なのだが、「ついで」に面白い余興を考え付いたのだ。

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