岸田森氏は、その『京都買います』でも、怪奇な仏像消失事件の謎を追った先で、犯人の女性とのラブストーリーを演じてみせた名優であり、その後も『曼陀羅(1971年)』『哥(1972年)』『あさき夢見し(1974年)』等の、ATGでの実相寺昭雄監督映画作品の、重鎮常連俳優になっていくのだ。
しかし、岸田森氏は1982年に急逝。

代替テキスト
『怪奇大作戦』牧(岸田森)

その後の実相寺昭雄監督映画では、ポスト岸田森氏の位置で、佐野史郎氏が活躍。
佐野氏の、実質的なメジャーデビューでもある『帝都物語(1988年)』を皮切りに、『悪徳の栄え(1988年)』『ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説(1990年)』と、一時期は実相寺組の一員であった。

また、『ガリレオ』の湯川も、『怪奇大作戦』で岸田森氏が演じた牧という役も、同じ科学者である。
さらに極めつけは、その『怪奇大作戦』での、実質の主役を担う青年科学者のフルネームが、牧「史郎」であったのだ。

ここまで偶然が重なれば、東野氏の『探偵ガリレオ』が、『怪奇大作戦』への、趣味的オマージュで書かれたことは明白だろう。

ドラマ『怪奇大作戦』は、そのカルト的人気から『ケイゾク(1999年)』『科捜研の女(1999年)』『BLACK OUT(1995年)』等のオマージュドラマを、主に90年代後半から次々に生み出し、この『探偵ガリレオシリーズ』の執筆開始時期とも、それは重なるのだが、肝心の円谷系本家によるリメイク『怪奇事件特捜チームS・R・I 嗤う火だるま男(2004年)』『怪奇大作戦 セカンドファイル(2007年)』『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル(2013年)』が、どれもこれも(エピソード単位の例外を除いて)そもそも論としての、『怪奇大作戦』マインドを全く受け継いでいないという時点で、『ガリレオ』や『ケイゾク』などの、オマージュ作品の方に軍配は上がるのである。

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