宇宙の平和を守る、宇宙警備隊のウルトラマンと、宇宙に混沌と悪意を撒き散らす使命を帯びたザラブ星人の戦いは、青空背景と茶土台、紙ビルセットを夜間照明で撮影した。
『ウルトラマン』(1966年)時期の夜間特撮シーンには、二通りの方向性があって、実際の放映作品で言えば『侵略者を撃て』『ミロガンダの秘密』など、深夜漆黒の闇を背景にしたシーン設計の夜間シーンと、本話や『悪魔はふたたび』のように、青空ホリゾントをバックに、往年の映画制作手法における、擬似夜景のような夜間シーンで彩られたケースの、二つに大別されるのである。
『光の国から愛をこめて』の演出でもそれに習い、本話や『悪魔はふたたび』の夜間特撮では、あえて青空ホリゾントを背景に使って、照明効果で夜間シーンを表現した。
また、今回の特徴としては、ニセウルトラマンがソフビそのままで、特にフルアクションカスタムを施していない状態での撮影だったので、ソフビだと、肩から腕を前後に振り回す演技しか出来ないという制約の中で、いかに、放映作品のコンテを再現するかの部分でがんばってみた。
まずは等身大のザラブ星人が現れるシーン。
モニターに写りこんでくるザラブ星人に関しては、撮影した画像に、紗をかけるフィルター処理をして加工。
次に科特隊基地へ現れる、印象的なシーンでは、科特隊基地の壁とドアを、スチレンボードで自作してみた。作ったのは、画面に映っている範囲だけしかないが、印象的なドアを作ったので、科特隊基地内だとわかってもらえると思う。
その次の一枚は、会議室に現れたシーン。
この二枚のカットでは、劇中同様に携帯式電子頭脳を手に持たせている。
やがて、夜の街にニセウルトラマンが登場。
先述したが、このニセウルトラマンはソフビをそのまま使用しているので、肩を振り上げる以外の微妙な演技が出来ない。それでも「なんとなく」ポージングで動きを表現。
カラータイマーと目は、ウルトラマン同様にフォトショップで光らせたが、目の電飾は、ウルトラマンとは全く異なった機電が内蔵されているらしいので、フォトショ処理も、ウルトラマンとは意識的に変えて描画してみた。
ウルトラマン登場。
二体の目を見比べていただければ、電飾の違いが判ってもらえると思う。
数カットの肉弾戦を経て、印象的な「スペシウムゼロ距離発射」カット。
直撃を受けたニセウルトラマンがもがき、ザラブ星人の正体を現すカットでは、劇中を模した、公園のディティールを。瓦礫と共にセット土台に構築してある。
ザラブ星人とウルトラマンの対決。
地上での肉弾戦から空中戦へ、そしてもみ合って地上へ激突までを描写。
最後はスペシウム光線が炸裂して、ザラブ星人も一巻の終わりを遂げる。
ザラブ星人
本話に登場した悪質宇宙人・ザラブ星人は、バンダイが、2000年のウルトラマンフェスティバル2000で限定発売した「ザラブ星人&ニセウルトラマン」セットのザラブ星人を撮影に使用した。
旧バンダイウルトラ怪獣シリーズで、ザラブ星人がソフビ化されたのはこの時が初めてで、その後このザラブ星人のソフビは、ニセウルトラマン共々単体発売されたのだが、単体の場合、このセットに入っていた携帯式電子頭脳が付属していなかったため、結果的に右手の角度が妙な形のまま商品化されてしまっていた。
(余談だが、この商品にかかわらず、ザラブ星人が立体化されるとき、その携帯式電子頭脳も一緒に立体化されるケースは多いが、なぜかその携帯式電子頭脳は、右手に持たされて商品化される場合が多い。しかし、映像作品を観れば判るが、劇中でザラブがそれを持っているときは、実は左手で持っているシーンの方が多い)
2008年以降は、このザラブ星人のソフビは、右手の角度を普通の状態に変更して、EXナンバーで最新版で発売されていたが、筆者が再現特撮用にこのソフビを用意したのは2007年初頭であり、またニセウルトラマンも携帯式電子頭脳も、演出上必要であったので、今はもう絶版になっていた、このウルフェス限定版セットを手に入れて使用した。
ザラブ星人は、実は等身大時と巨大化時で耳の造形が違い、側頭部から張り出している赤い耳のようなものは巨大化時にはないのだが、今回はそこは巨大化時でもそのまま演出に使用している。
造形レベルは、現行のシリーズに通じる、子ども向け商品とは思えない高さ。
海底原人ラゴンをベースにした、ボディのディティールから、頭部被り物部分との質感の差に至るまで、明確に造形で表現しており、全身に吹かれたスプレーのアクセントも含めて、ザラブ星人の立体物としては、発売されてから20年以上が経過した現在においても、このサイズであれば決定版と言えるだろう。
今回はこの傑作ソフビを、無改造・無塗装で使用させていただいた。