本話は本編評論でも書いたように、その特撮部分においては、事実上、特撮の神様・円谷英二監督がメガホンを取った作品である。そのエピソードを再現するのであるから、それはもう緊張もする(笑)
40枚から50枚前後の画像で、本話の魅力を伝えねばならないのだ。まずは準備段階として、本話ならではの要素を構築するところから始まった。
まずなんといっても、クライマックスでアボラスとバニラが、そして勝ち残ったアボラスがウルトラマンと決戦を繰り広げることになる、競技場のセット構築が必須であった。
実はこの競技場セットは、延々数ヶ月も悩み続けた経緯がある。
建築模型などの世界では、競技場やスタジアムなどは一つのジャンルであるらしく、精密かつ高度な模型が作られているのだが、筆者はなにぶん素人ゆえに、スチレンボードで曲線をどうコントロールするかも定まっていない程度のスキルである。
しかしこの競技場・スタジアムという舞台は、本話だけではなく、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)の『残酷!光怪獣プリズ魔』や『ウルトラ五つの誓い』など、他のエピソードでも重要な舞台になることが解っていたので、なんとか構築しなければいけないセットではあった。
しかし、繰り返しになるが、筆者には曲線や曲面で構成された競技場を、そのまま制作する技術も知識も持ち合わせていない。
さてどうするか……悩み続ける日々が延々続いた。そんな中で、そろそろ本話を制作しなければならないリミットが迫ってきた。解決策は思い浮かばないが、一応DVDを観てコンテを切ることにする。
そこでコンテを切ってみると、一つのアイディアが脳裏に浮かんだ。
何も競技場を丸ごと完璧にセット構築する必要などないのだ。
競技場セットは、内部で撮影する限り、必ず背景は観客席になる。ならば、その観客席だけを作ってしまえばいいのではないだろうか?
いや、しかしそうなってしまうと、どのカットも背景が同じで、全く変化がつかなくなってしまうではないか。そう考えた結果、観客席と別個に照明塔を作り、カットごとにその照明塔の配置位置を変えることで、競技場の別の一面を切り取ったと、見せることが可能だということに気がついた。そういう前提であれば、制作すべきは観客席一面と、照明塔一機だけですむことになる。
これだ、これしかない。
技術とスケジュールと予算を考慮した結果、この方法に結論は落ち着き、すぐさまセット制作に取り掛かった。
観客席はオールスチレンボード。
斜面に客席のモールドを入れて、昇降口を一定の間隔で設けて、最前列と最後列にフェンスを張って観客席を作る。
照明塔は、スチレンボードで制作した箱に、100均ショップで購入したビーズを、電球に見立てて並べた物を、プラ棒で支えてそれらしく塗装する。
地面は、ブラウンで着色したケント紙に、鉄道模型用グリーンターフを撒いて、芝生とトラックを表現してみた。
あとは撮影においては、観客席と照明塔の配置を変えることで、競技場の別々の角度であると表現する方法論を選択した。