プロテクターの干渉を巧く逃がしながら肩は水平近くまで。肘もほぼ折り畳める。手首はBJ。

さて、肝心のULTRA-ACTだが。
おそらく、ではあるがこの時期、バンダイはかなり慎重に、おそるおそるシリーズをスタートさせたように「見える」のだ。
商品の流れとしては、ウルトラ超合金は「あの70年代末のウルトラセブンの超合金のインパクトを現代に蘇らせる」ノスタルジックアイテムとしての側面が大きかったと思うし、アクションヒーローは、前時代のαから「幼児の玩具」と割り切っていた節がある。だから、まだこの時期バンダイは「ハイエンドなウルトラヒーローアクションフィギュア」に関しては、『ウルトラの星計画』の失敗と挫折」がトラウマになっていたのではないかと思われるのだ。

胸と腰の二段階で前かがみと上体反らしが可能。

だからだろう。まず、新ブランド立ち上げ第一弾の「初代ウルトラマン」の商品化が、古参ウルトラファンが「試され」るコンセプトでリリースされた。
初代ウルトラマンといえば、A、B、C、三種のマスクとスーツで多様性があるヒーローとして有名だ。記念すべきフラッグシップ商品の第一弾でリリースされるのは、一番メジャーなCタイプか。最初のULTRA-ACTにふさわしく、最初のウルトラマンであるAタイプか。実は最も出番が多かったBタイプという可能性もある。バリエーション商法が得意なバンダイのことだから、どのタイプが商品化されても、残りの二種もプレバン限定等で発売されるだろうと、誰もが予想していた。
しかし、実際に発表されたULTRA-ACT初代ウルトラマンは、その三種のどれでもなく「広く国民が、最大公約数として認知している『ウルトラマン』を立体化」と謡ったのである。

「セブンVer.1は開脚が弱点」と言われたが、ウェットスーツを着た生身の人間ならこんなもの。

これには、ハイエンドを望んでいたファンが一斉にざわついた。
つまりこの時点ではバンダイは、この商品に興味を示す顧客がどんな作風を望んでいるのかを掴みあぐねていたのだ。
はっきり言えば、ウルトラマンヒーローは、昭和ウルトラであればなおさら、全身がシームレスなウェットスーツで造形されていたのが殆どである。だが最新のフィギュアは、『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』等では、キャラの筋肉の積層ラインで部品や関節を分割して、そこに可動軸を仕込むのがセオリーである。

腰の前屈と合わせて、立膝もほぼ可能。膝も折り畳める。足首はボールジョイント。


『ウルトラの星計画』という「好事家が求めるウルトラマンのフィギュア化フォーマット」が挫折したバンダイとしては、「ディテール関節型」では、深いマニアには相手にされず、ウルトラへのこだわりが浅いフィギュアマニアをターゲットにすることで、まずは様子を見ようとしたのではないかと思われるのである。
ウルトラマンタイプのシームレスなデザインでは、徹底的な考証で着ぐるみに正確にフィギュア造形をしつつ、そこに関節や可動を仕込むという両立が、当初は不可能と判断されていたのだろう。S.H.Figuartsなどでは、仮面ライダーシリーズやアニメキャラなどでも、原作映像に忠実にを念頭に造形されていたが、ウルトラマンではそうもいかなかったという流れがあったのだろうか。

しかし、ULTRA-ACTが抱えた問題点は、ただ「着ぐるみに似ていない」だけではなかった。ULTRA-ACTでは「着ぐるみに全く似ていない、アメトイのようなマッチョなアレンジ」「シルエットから細部に至るまで、着ぐるみに似せて造形したタイプ」が混同して存在するのだ。しかも、後者においても「昭和の主役時のスーツに似せた造形」と「現代の最新映画等に登場するスーツに似せた造形」が入り乱れ、さらにそこに「可動範囲やアクションフィギュアとしてのポージング性能の高低さ」が入り組んできて、バンダイ史上空前の混沌としたシリーズになったのである。

具体的には、シリーズ開始当初の2011年までは「無難な出来」かつ「可動範囲や素立ちの格好良さは、まだまだこの先の開発次第」という出来の商品が多かったが、2012年春のゾフィと初代ウルトラマンVer.2がマッチョな造形となって、2012年のウルトラマンエースは着ぐるみ準拠だが、翌年の帰ってきたウルトラマンはバリバリのマッチョ造形。ウルトラマンとウルトラマンレオは、可動がまだまだのVer.1の方が着ぐるみに似ていて、アクション能力がアップしたVer.2の方がマッチョ造形で平成着ぐるみ準拠。ウルトラの父にいたっては、まるでアメトイのマーベルヒーローのように極マッチョで造形され、昭和ウルトラ最後期のウルトラマン80は、ガレージキットレベルの着ぐるみ準拠と、最後まで作風が落ち着かずに、新作がリリースされるたびに、ファンは一喜一憂振り回された。

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