MSVから『機動戦士Zガンダム』へ
結局、富野氏が新作『ガンダム』の総監督を引き受けることで、正式に続編新作アニメ版『ガンダム』が制作されることが決まり、新展開の必要がなくなったMS-Xシリーズプラモデル化は見送られた。
「続編新作のガンダム」は、1984年11月に、バンダイ模型情報で『ニューガンダム』として発表された後、翌1985年、テレビアニメ放映と同時に『機動戦士Zガンダム(以下『Zガンダム』)』(1985年)として正式タイトルで、アニメテレビ放映と同時に、新作登場モビルスーツの商品化が始まる。
『Zガンダム』の主役メカ、Zガンダムの発売は1985年11月、『Zガンダム』1/144シリーズでは27番目になるが、バンダイは『Zガンダム』設計からCADを導入。
MSVから取り入れられていた「関節の軸受けにポリキャップを使い、可動と摩耗のヘタレのバランスをとる」も、この時期でスタンダードに確立した。
『Zガンダム』では、モビルスーツメカファンには、第11話『大気圏突入』で、MSVメカだったザクキャノンが登場したことも話題になったが、ことオリジナルデザインの豪華さで言えば、『ガンダム』といえば、の大河原邦男氏はもちろんのこと、サンライズ前作『重戦記エルガイム』の永野護氏や、藤田一己氏、羽原信義氏、小林誠氏、果てはスポンサーバンダイの「天皇」こと氏(村上氏が「これを主役のガンダムにしなさい」と、提出した自筆のガンダムデザインは、劇中でサイコガンダムとして登場した)に至るまで、まるで80年代メカデザイナー全員集合コンペのように賑わったが、仮想敵が『超時空要塞マクロス』(1982年)とも、タカラ(現・タカラトミー)のトランスフォーマーとも言われていたからか、作中では可変MS(戦闘機形態からロボット形態に変形するモビルスーツ)が続々登場。
さすがに当時のテクノロジーのガンプラで、頻出する可変MSの変形を全て再現できていたものは少ないが(がんばっていたのは、1/144 ギャプラン、メタス、ハンブラビ辺りか)、1984年11月には、高橋技師による設計で、『Zガンダム』1/100では6番目に当たるナンバーで、完全変形可能なZガンダムが発売。
このZガンダムは、モビルスーツ時の胸のパーツの大きさや角度で酷評が多いが、それはデザイン上での「二次元の嘘」からきている問題であり、その後「ウェイブライダーからモビルスーツに変形するZガンダム」というコンセプトのガンプラは何度も出されて、この当時キット以上にカッコいいZガンダムは、現代では山のようにあるが、実はシールドのスライドも含めた「アニメ当時の変形設定」を、全て忠実に「完全再現」しているガンプラは、この、アニメ当時の1/100 Zガンダムだけなのである。