悲劇の怪獣・ジャミラとウルトラマンの悲しき死闘。
今回の特撮再現は、ウルトラシリーズ屈指の名作ということもあって、普段よりもプレッシャー5割増で再現に挑んだ(こればっか(笑))
今回の特撮シーンを描く前に、事前にコンテを練るにあたりポイントとしたのは以下の三点。
・序盤、ジャミラの乗る「見えないロケット」をどう表現するか。
・クライマックス、ジャミラが目標とする世界平和会議場をどうするか。
・ジャミラの断末魔、ウルトラ水流で濡れて泥まみれ描写をどうするか。
ある意味、この三点が本話の特撮シーンの見所でもあり鍵でもある。
まずはジャミラの円盤について。
これは結論から言うと見送ることになった。
まず、大前提である立体物が手に入らなかったこと。ブログ再現当時は、怪獣フィギュアメーカーのエクスプラスから発売されている、大怪獣シリーズのジャミラの、少年リック限定版にその円盤はおまけとして付属していたが、少年リック限定版は高価であるし、ジャミラ本体はバンダイソフビを使用する予定であったので、どのみち選定外だった。
ではスクラッチで作るかというと、案外ジャミラ円盤は(成田デザインというのもあって)、ゼロから素人が作るには、ちょっと難しいこともあるし、そこまで労力をかけて作っても、出番はほとんどないのが現実。
その前提でコンテを切っていったとき、本話が特撮表現においても描写しようと腐心していた、ジャミラの心情や悲哀を再現することを主眼におくと、科特隊によるジャミラ円盤撃墜に避ける枚数が、ほとんどないことも判明した。
なので、ここは思い切ってばっさりと、ジャミラ円盤追撃のシーンはカットして、ビートル編隊による最低限のカットのみで描写しようという結論に至った。
ジャミラの断末魔に関しては後述するが、その前に懸念したのは世界平和会議場であった。
この建物の存在に関しても、実はずっと悩みどころであった。
劇中ではこの会議場は、複雑怪奇な形状をしていて、ストーリーの鍵になるにも関わらず、特撮シーンでは、あまりメインで写り込むカットは少ない。
つまり、実際の作品映像のキャプチュアでコンテを切っている筆者にしてみれば、そこで恣意的に、会議場が写りこまないカットを上手く選択して並べれば、会議場を作らなくてもよいという計算が成り立つわけだ。
いや、実際それをする誘惑に何度かられたことか(笑)
なにせ会議場に設定された、実際の国立代々木競技場は、戦後日本の高度経済成長のピークを象徴する、東京オリンピックの為に建造されただけあって、「建設・総合意匠」丹下健三氏、「構造」坪井善勝氏、「設備」井上宇市氏の、日本建築界を代表者する三名によって、設計がなされたという折り紙つき。
しかもこの代々木競技場は、そのトップクラスの建築家三名が、もてる芸術性を最大限に注ぎ込んでデザインされているわけで、一言で言うなら建築アート。
似たような事例は、『ウルトラセブン』(1967年)『ウルトラ警備隊西へ』再現で登場した、京都国際会館にもいえるのだけど(余談だが、かように初期ウルトラは、その近未来イメージを画的に成立させるファクターとして、当時の日本近代建築が、前衛デザインを取り入れた建築物を舞台にすることで、本編シーンにも近未感を取り入れたのである)その京都国際会館はそれでもまだ、複雑怪奇なデザインだとはいえ、日本中世の校倉造を基調にした構築論で成立していたため、写真をよく眺めた上で、スチレンボードを正確に切り出して組み上げていけば、いちおうなんとか「それらしい」立体に、でっちあげることは不可能ではなかった。
ところが今回の代々木競技場は、日本建築界の最高峰・丹下氏が、その基本デザイン・シルエットに、高張力による吊り屋根方式を取り入れて、全ての面が曲面で構成され、それらが有機的に絡み合って、一つの形を作り上げているという、いわば「日本の建築物で、唯一にして最難易度を誇るオブジェアート」という次第。
一言でいうなら、筆者には作るのは無理(笑)