ジャミラ
ジャミラは定番の、バンダイ旧ウルトラ怪獣シリーズソフビを撮影に使用した。
このソフビは、ハイパーホビーというマニア向け玩具雑誌の、ソフビリクエスト読者投票で1位に輝き、2001年にEXナンバーで生産販売された。
解らない人に説明すると、バンダイウルトラ怪獣シリーズのEXナンバーというのは、バンダイソフビにおいては特別枠生産商品のことを指す。
バンダイの怪獣ソフビは商品管理上の必要性から、各アイテムごとに通しナンバーがわりふられており、各商品はその通しナンバーによって、何年にも渡って管理されているが、EXナンバーとは、そのナンバーに属さない特殊な商品に、割り振られるナンバーである。
それらは例えば、映画公開期間前後だけ販売される、映画登場怪獣の商品だったり、特殊なイベントやプロジェクトでしか販売されない、カスタム・リペイント商品だったりするのだが、ときとしてはこのジャミラやゴメス、ペギラのように、一般流通の新規造形商品に割り振られるケースもある。
それらEXナンバー商品に唯一共通している特徴は、その販売期間が、通常商品と比べてきわめて短いということだ。
このジャミラも2001年生産商品でありながら、既2006年時点で、既に絶版となっていた。
これが何を意味するのかというと、それはジャミラが登場した実相寺昭雄監督作品の、ファン全体からの評価を、象徴しているようで面白い。
80年代前後からのウルトラブーム以降、実相寺監督作品は、その上品なテーマ性と映像美からファンに親しまれ愛され、名作の名を受けてきていた。
筆者はもちろんそれに異論はないのだが、実相寺ウルトラマンの魅力は、あくまで「子ども番組を脇から観る大人の視点」で観たときの「名作」なのであって、本来の視聴者層・商品購買層である幼児層にとっては、やはり「悪くて強くて暴れる怪獣を、さらに強くて格好良いウルトラマンが、スペシウム光線でやっつける」という、そういった展開を好むのは当たり前である。
つまり、実相寺作品に登場するジャミラやシーボーズといった怪獣達は、「名作日本映画の名脇役」ではあっても、「子ども番組で子ども達が心酔する悪役」ではないということなのだ。
ジャミラは、悲哀を秘めた大人好きする「悲劇の存在」であっても、子どもが手にとって「ガオー!」と、声真似して遊ぶ対象ではないのだ。
それゆえにジャミラは「子ども対象の商品」たる、バンダイ怪獣ソフビシリーズでは長年商品化されずに、「大人のマニアが読むホビー雑誌」での人気投票で1位に輝いたため「期間限定のEXナンバー」で商品化されたのだ。
さて、そのEXナンバー・ジャミラの出来であるが、マニア雑誌で要望を受けて作り上げられただけあって、これがまたすこぶる出来が良い。
フリーキーなシルエットから、全身のひび割れディティール、印象的な表情やスーツのしわ、果ては胸の覗き穴に至るまで、劇中のジャミラを余すところなく再現している。
今回は、特に改造箇所は無しで、全身のひび割れに墨入れをしたのみで使用している。