前回は「『シン・機動戦士ガンダム論!』第20回 スーパーロボットアニメとしてのガンダム・1

ガンダムの必殺技と、スーパー過ぎる性能

一方、ガンダムは2話では「ガンダムの2大必殺技」のもう一つのメイン、ビームライフルをここで登場させる。プロの軍人でエースのシャアには、軽くかわされあしらわれるが、部下の一般ザク相手であれば、当てさえすれば一撃で粉砕できるというパワーバランスは、まさにガンダムがスーパーロボットだからならではの代物。

(カットされた台詞)
シャア「れ、連邦軍め……恐るべきモビルスーツを開発したものだ」

日本サンライズ『機動戦士ガンダム 記録全集 台本全記録』

なので、『機動戦士ガンダム』(以下『ガンダム』)序盤宇宙では、シャアのザクは常に、操縦技量と戦略ではアムロとガンダムを圧倒しつつも「何度ザクからの攻撃を当てても、ガンダムはかすり傷もつかない」「ガンダムの兵器で一撃でも当てられるとザクは瞬殺」というハンデキャップが主人公メカ補正で存在するため、シャアの名台詞「連邦のモビルスーツは化物か!」に繋がるのだ。

パイロットの経験値VS機体の性能という図式は、これもシャアの名台詞「モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを……。教えてやる!」に繋がるのだ。
一方で第2話ラスト。冒頭では初陣の勝利を「ガンダムの性能のおかげです」と、優等生的に謙虚な発言をしていたはずのアムロが、シャアを退けて凱旋してきたホワイトベースでブライトから忠告を受ける。

ブライト「……ガンダムの性能を当てにしすぎる。斗いは、もっと有効に行うべきだ」
アムロ「……!? な……なに?」

日本サンライズ『機動戦士ガンダム 記録全集 台本全記録』

というやり取りに繋がる。このアムロの実体験と他者認知の乖離からくる増長は、やがて第2クールのホワイトベース脱走と、そこから発するランバ・ラルという“父なる存在を乗り越えようとする成長のドラマ”へと結びつくのだが、「自身が平凡な民間人だと自覚していた主人公が、ある日突然ヒーローとなる力を与えられてしまって、ついついヒーローの力を自分の力だと錯覚してしまい、慢心から増長する」は、これまででもまさに『帰ってきたウルトラマン』(1971年)第2話『タッコング大逆襲(脚本・上原正三 監督・本多猪四郎でも描かれていて、奇しくも同じ第2話という一致をみると、このドラマ構造が決して奇をてらったわけでもないとは理解できよう。

隠れて描かれる「スーパーロボットまんがの主人公は、やはりスーパーだ」

そういった“まっとうなドラマ”の脇で、第2話ではガンダムの合体戦闘機のコア・ファイターが、第3話では早くも「バズーカ」「ガンタンク」が画面に登場する。
まだ、この時点でのコア・ファイターの役割は、あくまでガンダムのサポート戦闘機扱いであり、変形合体はしないが、この辺りは富野由悠季ロボットアニメ感覚で言うなら、『勇者ライディーン』(1974年)のブルーガー的な立ち位置とでもいうべきか。ロボットアニメの定石の範囲内である。

ガンタンクは、シャアのザクとは逆のアングルから、アムロがガンダムの性能だけで増長する能力ではないことを証明するために「モビルスーツで戦争に参加するには、素人ではここまで無理があるのだ」を、カイとハヤトの二人がかりで描写させて、その上でこの描写が、後にカイもハヤトもガンキャノンのエースパイロットになっていくという伏線としても機能させているのだ。

物語的には、登場人物の整理整頓が徐々に始まって、ヒステリーなリーダー、ニヒルな皮肉屋、味方内のライバル、頼りになる軍人の先輩、凛とした女性、幼馴染的な少女、マスコットの子ども達など、キャラクターデザインと多少座標を異ならせながらも、個々のドラマを経てそれぞれが与えられた役割へ向かい始める。

その上で、第5話『大気圏突入』では、ドラマとは関係ない要素として、あまりにもトンデモな兵器・ガンダムハンマーが登場して、これでガンダムはたった5話の初動で5つ目の武器を使ったことになり、長浜監督作品の主役ロボほどの「武器のデパート」状態ではないが、充分に「スーパー」な「ロボット」であることが伺える。

さらにこの話で登場する「耐熱フィルム」。
劇場版『機動戦士ガンダム』(1981年)では、富野監督曰くの「科学的でしょ」の一言で、耐熱フィールドに置き換えられてしまったビックリドッキリアイテムだが、この大気圏突入時の描写で、視聴者(の、特に子ども)は、ガンダムはなんでもできるスーパーロボットなんだ、という印象を自然に得るのである。
さらに、そこでの戦闘で、独り言で呟かれる、アムロとシャアの、それぞれの台詞。

アムロ「今度こそ、シャアの動きにおいついてみせる。これで、何度目なんだ!? アムロ!」

シャア「ええーい! 腕が上がってきたようだな! このパイロットは!」

日本サンライズ『機動戦士ガンダム 記録全集 台本全記録』

この会話ではない交錯は、アムロが第1話、ただの素人なのにガンダムを乗りこなせたことを、間接的に「ただの素人の資質だけではなかった」ことを、後のニュータイプという設定の伏線として機能しているのだ。
多くのガンダムファンは、第9話『翔べ! ガンダム』のマチルダの「あなたはエスパーかもしれない」を、ニュータイプテーマの伏線の発露と捉えているが、実は富野構想的には、「ただの阿呆で内向的なだけの少年が、ロボットで勝ち続けられるわけがないじゃないか」を、まっとうに向き合って作劇していたのだ。“その原動力”が、他ならぬ「僕はシャアに勝ちたい」「僕はあの人(ランバ・ラル)に勝ちたい」という、その時々の自己目標への葛藤であったり、マチルダ、ハモン、ララァという異性に対する虚勢の自己嫌悪からくる帳尻合わせへの必死さであったりする。
それが“成長”そのものであり、そのドラマ展開は、スーパーロボットまんがとしては非常に有効なストラクチュアであるのだ。

ハヤト「だ、だめです! 敵が多すぎます」
ミライ「ガンダム、ガンタンクのパーツを射出します! メカニックマンに連絡して!」
セイラ「ミライ! 戦斗中にガンペリーも使わずにこのまま空中換装をさせるつもりなの!」
ミライ「いけないかしら!? コアファイターで発進させたのが間違いなら、すぐに正しい方へ」
セイラ「ミライ! アムロはできるかも知れない」

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事